理性
だけど、その理性だって、どれだけのものか、
試されてる気がして、怖かった。
京太はそれからも何かと3人でと提案したけど、
理由を付けては2人になるようにした。
映画が観たいから、とか、買い物をしたいから、
とか、たまには2人っきりがいいから、とか。
京太は優しい。
私がそう言うとあっさり快諾してくれる。
この人を裏切るなんて、あってはならない。
そんなの、私、最低だ。
「ごめん、郁。
どうしても仕事が終わらなくて、
今日の所は俺ん家でもいいかな?
せっかく明日は休みなんだし、
慶太が帰ってると思うから、
久々に郁、何かメシ作ってよ!」
「うん、分かった。
じゃぁ、買い物して、お邪魔してるね。」
試されてる、そんな気がした。怖い。
京太の事が好きだった、いや、大好きだ。
優しく、暖かく、大事にしてくれる。
彼との将来も、もちろん考えてる。
だけど違う。好きだとか、大事だとか、
言葉では言い表せ無い、感覚。
ヒラケイに触れられると一気に体温が上がる。
息苦しくなる、
喉の奥をギュッと掴まれたようで、
ツンと鼻が痛くて、涙が溢れそうになる。
だから怖かった。
自分が自分じゃなくなりそうで、
コントロールできないのが何より怖かった。
「お邪魔します。」




