ただの元担任
それから京太は、何かと3人で会いたがった。
可愛くて仕方ない弟と、その弟の元担任の彼女。
そりゃ確かに、こんな凄い偶然、
私が京太でも興奮して、
つい、じゃぁ、3人でって、なるだろう。
京太の前で、ヒラケイとは思っている以上に、
普通に話せたし、
京太の前ではちゃんと慶太くんと呼べた。
だけど、京太が席を外している時は、
つい、うっかり、ヒラケイと呼んじゃうし、
ヒラケイも京太の前では郁さんと呼ぶものの、
意識していない時はもっぱら先生だった。
何度、こうして3人で時を過ごしたか分からない。
私たちは、ただの元担任と生徒だった。
「郁、後輩でいい人なんていないのかな?
慶太、随分彼女もいないみたいでさ。
誰か居たら紹介してやってくれないか?」
京太がそう私に言ったのは、
2人が暮らす家で3人で飲んでいる時だった。
ワイングラスを傾ける京太は、
結構、お酒が回ってて、上機嫌だ。
「いい、いらない、別に。
彼女欲しいと思ってないし、
いそがしくてそれどころじゃないよ。」
そうかー?と寂しそうな表情を浮かべてみせ、
すぐにヘラヘラ笑うと、
グラスの中のワインを一気に飲み干す。
「京太、飲み過ぎじゃない?
明日やすみだからいいけど、
もうそろそろ私帰るよ?」
聞いてか、聞かぬか、京太はそのまま、
ゴロンとソファに寝転がり、
すぐに寝息を立ててしまった。
このところプロジェクトが忙しいとは聞いていた。
恐らく疲れも、ストレスも、あるんだろう。
眠ってしまった京太を脇目にグラスに残る
赤ワインを飲み干して立ち上がった。




