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秋雨  作者: 桜田環奈
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痛い手首


それからすぐにお手洗いに立った。


息苦しかった。


涙が、溢れそうだった。


苦しくて、耐えられなかった。


でも、動揺しているのは私だけで、


きっとヒラケイの中では、


とっくに過去の事になっているんだと思った。


ううん、私の中でも過去の事だ。


そう、過去の事なんだから、


今さらどうしたって仕方がない。忘れよう。



「わっ、ちょっと、やだ、」



そう思って、結構自分なりには覚悟を決めて、


お手洗いから出た所で、不意に腕を掴まれ、


そのまま店内からは見えない場所へと


力強く引っ張られる。


強く、強く、掴まれた手首に痛みを感じる。



「痛い…ね、本当に、痛い…」



「あ、ごめん、悪い…」



お願いだから、忘れさせて。


ううん、忘れてた事を、思い出させないで。



「会いたくなんて、なかったのにね。」



精一杯冷たく言い放ったら目の前が滲んだから、


さっさと踵を返して店内へと急いだ。


せっかく精一杯冷たく言い放ったのに、


声が震えて、台無しだった。



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