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不信感
京太には落ち着くのが夏頃だから、
その頃に一緒に住まないかと話してみた。
京太は、春が過ぎたら一緒に家を探そうと、
笑って頷いてくれた。
それからも京太とは声を荒げる事も、
疑う事も、不安に感じる事もなく、
気が付けば寒い冬は終わりを迎えようとしていた。
忙しかった、というと、それはただの言い訳。
思えば春を迎えようという頃から、
毎週末、菜々子が来る時や、仕事の時以外は、
京太と過ごしていたのが2週に1度になっていた。
京太は忙しいからとしか言わなかったし、
私もそれを疑わなかった。
ゴールデンウィークが過ぎ、
梅雨が明けようとする頃、
いつまでたっても変わらない毎日。
家を探そうと言っていたのは何だったのか、
京太からその話しが出る事はなかった。
それは疑いから、不信感に変わり始める。
「郁、一緒に住まないかと言った話しだけど、
もう少し先になりそうなんだ。」
そんな時だった。
京太は3杯目のビールを飲み終え、そう言った。
「忙しいの?」
嫌な感じがした。
胸の奥がザワザワとする感じ。




