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怠惰な魔本使いの見聞  作者: 炬燵天秤
第2章 白髪緋眼の魔本使いと呪いの狂宴
18/64

18話目 永い夜の幕開

短いです。普段の三分の一程度しかないです。


代わりに、物語は第2章の終わりへと徐々に加速していく事になります。執筆速度は加速しませんけど……。


では、どうぞ。

__________________



五年前までのオレは、冒険者稼業によって妹であるリリィと暮らす為の日々の生活費を稼いでいた。


冒険者として名を馳せていた両親は十数年前、ベイレーンの街に魔物の群れが襲来した際、最前線で勇敢に戦い、魔物の統率個体と相討ちでその命を散らしたと聞かされている。


残されたオレ達は親交のあったオウビ婆さんに引き取られた。そして十分に戦えるくらいにまで成長したオレは冒険者ギルドへと加入し、偶然知り合ったオーガルストのパーティーの斥候としてその腕を磨いてき、そこそこ名が知れるくらいには活躍していた。


料理などの家事が壊滅的にダメだったオレだが、それを補うかのようにリリィが支えてくれた。


彼女の作る手料理は美味かったし、あの子の笑顔があったからこそ冒険者として戦い続けることが出来たとも言えるくらい、オレにとっての心の支えになっていたのだ。


しかし、あの日に起きた事件は、オレから全てを奪い去った。


小雨の降っていたあの日、オレはオーガルスト達とともに街からかなり離れた森に遠征し、コボルト集団の殲滅に当たっていた。


多少時間は掛かったものの、誰も負傷することなく殲滅を終え、意気揚々とベイレーンの街へと帰って来たオレ達を出迎えたのは、リリィが貴族の娘と共に誘拐されたという報せ。


その少女の事をリリィが直接紹介してくれることはなかったが、守衛上がりの騎士で、準男爵に叙勲されたばかりだという少女の父親とは顔を合わせた事もあったし、大通りで仲良く買い物をしている姿も何度も見かけている。


そしてその娘の護衛が貴族街の一角で殺され、二人の行方が分からなくなったと準男爵の小間使い経由で聞いたオレは街中を探し回った。


オーガルストや冒険者ギルドの仲間達も捜索を手伝ってくれたし、基本的に平民が立ち入る事を禁止されている貴族街についても娘を溺愛する準男爵の手勢が駆けずり回っているのを何度も見かけた。


しかし一向に見つかる事なく数日が無為に過ぎた頃、貴族街の一角で火事が起きた。



あの準男爵の屋敷だった。



盗賊ギルドのトップに学び、冒険者として鍛え上げた斥候としての能力を活かして屋敷の中にまで忍び込んだオレが目にしたのは、使用人や屋敷の警備兵を問答無用で殺して回る領軍の騎士達と、


剣を抜く暇すら与えずに準男爵を蒼い槍(・・・)で刺し貫いた、ベイレーン領主の姿だった。



結局あの騒動は反逆を企てた準男爵を領主自らが討伐したという噂が流され、準男爵に仕えていた家人も全員が処刑されることで誘拐騒動はなかった事にされた。


部外者としてその粛清を免れたオレは当然彼女達を探し出す為に領城に忍び込もうと計画を幾つも立てたが、冒険者ギルドだけでなく盗賊ギルドからも制止の警告を再三に言い渡された。


冒険者ギルドを辞め、死罪も覚悟して領城に忍び込もうと家を出たオレが見たのは、扉にいつの間にか掛けられた萌葱色のリボンと一房の白髪。



どちらも、リリィのものだった。



それからは良く覚えていない。冒険者を引退したオーガルストが近くに建っている娼館を買い取り、そこで働いているシャイナが良く家に訪れていたのは覚えている。


日が経つにつれ薄れていく痛みに恐怖しながらも、生きる為に何でも屋として日銭を稼ぐ日々。そしてようやく心の一段落がついたある日、あの少女は現れた。


アーデフェルトと名乗った、リリィと瓜二つの少女。


明朗快活で明るい色が好みだったリリィとは違い、アーデは表情があまり変わらず暗色系のローブを好んで着ていたりと対照的な少女だ。


リリィはアーデのような大の男を軽々と蹴り飛ばせる怪力は持っていなかったし、アーデはリリィと違って包容力を持ち合わせているようには見えない。まったくの別人。


しかし、アーデの些細な仕草は、何故かリリィと重なって見えてしまう。まるで二人が双子の姉妹であるかのように。


神か精霊の悪戯か。オレは何をすればいいーーー



__________________



「……イ、……イッ。ケイっ! 起きてってば!!」


「……あ、シャイナか。何の用だよ」


目を開くと、隣の『オーガルスト娼館』で働いている顔馴染みの少女、シャイナの顔が目の前に映った。彼女は昔から距離に頓着しない性格だったが、心臓に悪いので止めて欲しい。


シャイナを退かして体を起こそうとして背中の痛みに思わず呻く。オウビ婆さんに叩きつけられた背中の痛みは1日寝た程度では治らなかったらしい。


「今は……もう昼なのか?」


窓の外を見ると、既に陽は西に沈みかけている。まさかオレは丸一日寝ていたのか?


「もう日が暮れる時間だよ……って、そんなことより! た、大変なの。アーデちゃんが、アーデちゃんが……」


オレの寝ぼけたセリフに一瞬だけ呆れたシャイナだが、すぐに我に返ってオレの肩を涙目になって揺する。


「……何があった」


その必死な表情と口に出された名前に、嫌な予感がよぎる。まるでリリィが攫われた時のような、心がざわつく不快な予感に。


「アーデちゃんが……、私を庇って貴族の人に連れてかれちゃったの!!」



アーデ「あれっ、囚われ役のお姫様だったの⁉︎」


(●ω●)「まさか(失笑)」


ア「………………」


(●ω|「始まったら、存分に暴れてどうぞ」



次話はちょっと時間を遡る事になります。

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