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ややこしい話し合い

ややこしい話、そして私の文章構成力が皆無だとわかる回です。

あと、今回は長めです。なので次の更新は…大目に見てください。

「リリアン様!その女は悪なんです!!離れてください!!」

そう目の前に出てきたのは黒髪ストレートのスレンダー美人。

リリアンの知り合いだろうかと横顔を見ると「ナターシャ?」と言っているので知り合いのようだ。


「リリアン様!その女はただの女狐なのですよ!頭がおかしいと承知で申し上げますがこの女はこの先王子を誑かし、リリアン様を焚き付け…」

こんなことを言えるのは転生者しかいないと瞬時に確信した。

それにさっきの私を悪人扱いした態度、理由は知らないがヒロイン・ロゼリは彼女に恨まれている。

大方恨みのある彼女が私の噂を流したのだろうと察することができた。

リリアンの信奉者(?)ならリリアンに噂を流れないようにしたのも頷ける。


「あのねぇ、」と私が口を開いた時にはもうリリアンはナターシャの胸倉を掴みながら壁際へ寄せていた。


「お前だったのかナターシャ、ロゼリの良からぬ噂流したのは…」

リリアンはナターシャとロゼリにしか聞こえないくらいの声で言った。


ひょえー、その素顔私以外の人の前で見せても平気なやつですか?私はそれが心配。


「そうです!わたくしが流しました!ですがそれは“わたくし”の為ですわ!!王子を誑かす女狐、そこに居るロゼリから“わたくし”を遠ざけるために!!ロゼリを孤立させるために!!」


ナターシャは興奮したように大声でそう叫ぶ。


「…変なことを“わたくし”に言うようですが、“リリアン様”は昔わたくしでした。…わたくしにはその時の記憶があるといったほうがいいかもしれません。わたくしは“わたくし”だった頃そこの女狐に王子を盗られました。ですから、現世の“わたくし”には是非とも王子と結ばれて欲しいのです…完璧な“わたくし”ならわたくしの言っていることをお分かりいただけるのではないかしら?」


周りを見るといつの間にかギャラリーが出来ている。そのギャラリーの全員が「ナターシャの頭はいかれている」というような目で見ている。しかし、ナターシャとは違うが同じ転生者である私とリリアンは冷静に今の状況把握に努めた。


「…ナターシャ、一旦落ち着いて話せるところに行きましょう?」

そう持ち掛けたリリアンの肩に何処からともなく現れたジョシュア王子が「その通りだね。」と言いながら手を置く。

「王子…」

「リリアン、中庭のテラスを使うといいよ、人払いを済ませておくから安心して話してね。それと、リリアンとロゼリさんは、話し合いが終わったら僕たちからも話があるから。その場で今度こそは待っててね。」

王子は目の笑っていない恐ろしい笑みを浮かべており、私とリリアンは小さく「は~い…」と返事をすることしかできなかった。さて、テラスに着くと3人無言の時が続いた。


その静寂を切り裂いたのはもちろん私。空気が読めないんじゃないあえて読まなかったのだ。


「ねえ、ナターシャさん。」

「何よこの女狐!!前世では関わっても来なかったのにどういうつもりです!どうせ前世で“わたくし”が何かとつっかかってきたから現世の“わたくし”とは上辺だけ仲良くして、裏で王子を落とすのでしょうけどわたくしには全部わかっているんですから!!ま、まさか…貴方自身が動くってことは…貴方も前世の記憶があるのですね!!その上わたくしと違って前世と全く同じ人物に生まれ変わったのでしょう!!どうなのですか!!そうなのでしょう!!」

キッとこちらを睨みつけながらキツイ口調で言ってきているのを私はなんて返答しようかと悩んでした。

多分リリアンと自分自身の事を“わたくし”と呼んでいるあたり本当に前世ではリリアンだったのだろうと思う。今、頭に血が上っているナターシャは私が何を言っても信じてくれそうにない。

なんと説明しようかと私が頭をひねっていると口を開いたのはリリアンだった。


「ナターシャ、貴方に言っていただかなくてもわたくし、ロゼリが王子の事好きだって知っていましたわよ。」

冷静に顔には薄く笑みを浮かべながら言うリリアンに驚いたのはナターシャだ。

目を見開き口をポカンと開けている。

「正確にいいますとロゼリは王子の事が前々から好きだったのを諦めてくれるといってくださいました。ええ、勿論わたくしが『諦めて』とは言いましたがロゼリはわたくしを見て王子に相応しいと思ってくれたのでしょう。わたくしは完全に諦めてくれたと思っています。その話は二週間ほど前のお茶会の際に話してくれましたの。」

今思えばその入学式からお茶会までのわずかな期間だけは恋敵だったのだと思った。

しかし、私は性格までも完璧超人と化したリリアンにあっけなく敗北宣言。少しカッコ悪いぞヒロイン

「な、え、ろ、ロゼリ貴方なんでそんな…最初から諦めるみたいな…そうでなくとも“わたくし”に有利になるような宣言を…前世とはまるでちがう…どういうつもりなの!?」

ありえないというように目が泳いでいる。


私たちは、ナターシャがこんなにも‶ロゼリ”という人物が信じられず、毛嫌いするのも仕方がないことを知っている。

前世のリリアンは大方ゲーム“スイスク”のしかも私たちが大好きな『ジョシュア王子ルート』を‶リリアン”で生きていたのだろう。確か“リリアン”はゲームでスチルにもあった上履きに生ごみを入れたり筆箱を燃やしたり机の上に酷い言葉をマーカーで書いたりする“悪役令嬢リリアンからヒロイン・ロゼリ”への虐めや“リリアン”自身が重ねた王子への虚言やなんやらで家は実質的没落に王子とは婚約解消。エピローグか何かで王子が語ってくれたのだが、特に虐めよりも王子への虚言が重く、その為爵位までとはいかないが財産没収になったらしい。

“今の彼女”自身そのことが一番重い罪だったということに気が付いているかは別として、“彼女”は婚約解消や没落、虚言諸々の前世全てを「ロゼリが居なければこうはならなかった。」「ロゼリのせいだ。」と決めつけて、現世ではリリアンという元自分だった人を幸せにするためにきっとあんな噂を流したのだ。

私自身が今ロゼリだから肩を持つようで悪いが婚約者を盗るという行為は悪いにしても婚約者に付け入る隙を与えた“前のリリアン”も少しは悪いと思う。

おまけに他の余罪は“ロゼリ”のせいではない。自分が自らやった結果だ。


もし、私を虐めていなければ、

もし、王子に虚言を吐かなければ、

もし、人を小ばかにした態度をとり続けなければ、

義理堅く優しい王子に捨てられることはなかっただろう。


__まあ、きっと運命ゲームシナリオの通りだからそうなったんだろうけどね。


シナリオには逆らえない状況だったのだろう。その点に関しては同情する。

「ふぅ…説明しにくいのですが…とりあえず一から説明しますわね。まず結論から申しますとわたくしとロゼリはこの世界の記憶を持っているわ。」

「…え?本当にそうなの?」

「ナターシャ、誤解しないで貴方が前世と全く同じ世界に時間を別人で転生した者とするのならわたくしとロゼリは前世とは全く別の世界に別の時間を別人で転生した者たちなのです。」

「リリアンにはこの学園に居る一部の人物が分かっていたり出来事が未来予知のようにわかっているの。」「別世界から来た人が…どうしてこっちの事情を知っていますの?」

「…そこがややこしいところだよね…説明しずらい。とにかく、今ナターシャに必要な情報はね、『ロゼリはナターシャが生きた前世のロゼリと違って入学前から王子が好きだった。けれどリリアンが転生者だと知ってしかも性格も良いことが分かってロゼリは完全に王子を諦めて学園生活謳歌中、好きな人を絶賛募集中。ロゼリとリリアンはいいお友達だしこれからもずっとお友達』ってこと。」

「そうね、ややこしいところは省くのが賢いわ。ええ、その説明で100%合っています。わたくしもロゼリが王子を諦めた事を知っています。宣言されましたし、それは疑いようのない事実。向かってくるなら回りくどいことはせず真っ向から叩き潰します。そして、ロゼリは私の親友ですわ。」

リリアンの『親友』という言葉に私はヘラッとした笑みを浮かべながら「リリアン…」と呟きリリアンは令嬢らしい笑みを浮かべながら「ロゼリ…」と呟く。

顔を見合わせ、両手を絡める。二人の間だけ少し異質なのほほんとした空気が流れる。


「ぜ、絶対嘘よ!!」とナターシャは机を両手でたたき、立ち上がる。

その声でハッと我に返る2人。危なく2人きりの脳内お花畑ワールドに飛んでいくところだった。

「あ、貴方はこの学園の入学式で王子に一目惚れをして、王子のことが好きな伯爵令嬢ロゼリ・エマーズで、この先わたくしはそれを快く思わず貴方を虐めてわたくしは婚約解消、没落…そう経験したの!!そうなるはずですわ!!そうよ…前世ではそうでしたもの!!」


____ん?入学式で一目惚れ?はて、そんな設定あったかな…。


「うん。私とリリアンは貴方の前世を曖昧だけれど知っている。確かにそういう未来もあるよ。正確にはもう起こらないからあったよ。その見解が間違っていたとは言わない。もし私がナターシャさんだったら同じように自分だったリリアンの未来を救うために行動しただろうしね。だから、噂を流したという行動が完全に間違っていたとは言わない。けど、今は違う未来を生きているってことは分かって?『ロゼリはお茶会でリリアンと意気投合。王子を好きというロゼリにリリアンは「そうなの。」と認めつつも「王子はあげられない。」と釘を刺し、ロゼリは王子を好きでいる事自体やめている。』そういう現実に。仮にこれが嘘で私が諦めずに王子と仲良くなっても今のリリアンは王子に虚言はつかないだろうし私に陰湿な虐めはしない。王子だってリリアンを絶対選ぶよ。」

真っ向から向かうってさっき宣言されたのだからおそらくはリリアンにお話合いか決闘を挑まれる可能性がある。私の知っている目の前に居るリリアン嬢とはそういう人物なのだ。


「いい子だし素直だし話していて面白い。王子だってこんなリリアンをお嫁さんにもらったら嬉しいだろうしね。それに、ナターシャが動いた今回の事だけど“ナターシャがリリアンの友人”で“ナターシャがロゼリの悪い噂を流す”なんてこと前世にないでしょ?」

「そ、それはそうですけれど…それはリリアンの未来を変えたい為で…」

「ほら!未来を変えたくてやったんでしょ?でも、今までの事で…いや、“前のロゼリ”が“今のロゼリ”で“前のリリアン”が“今のリリアン”に変わった時点で未来は変わるんだよ?変わったんだよ?」


リリアンは微笑みながら机に置かれているナターシャの手の甲に手のひらをのせる。

「ナターシャ…貴方は、わたくしに…いえ、リリアンという令嬢に幸せになってもらいたくて必死だったのよね?大丈夫、安心して…わたくし、前世の貴方…“リリアン”のような失敗は…未来はたどらないわ…現世の私、リリアンは…幸せになるから…」


ナターシャは両手で顔を隠して椅子にぺたんと座り泣きだしてしまった。



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