表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

最終話 隣のト○ロ


子どもたちが家を出てから、家の中は妙に静かになった。

食器は減り、洗濯物も減った。

夫婦二人だけの生活にも、いつの間にか慣れていた。


休日の昼。

妖怪は今日もソファーに転がっている。

灰色の部屋着。

ぼよんとした腹。

テレビを見ながら、ぼりぼり煎餅を食べていた。


「ねえ」


「おう」

返事だけは昔から良い。


私は棚を整理していて、古いアルバムを見つけた。

若い頃の写真。

海辺、ミントグリーンのシャツ、白い短パン。

細くて、よく笑う男がそこにいた。


「あー、若い」

思わず笑う。

夫はソファーからちらりと写真を見る。


「……おう」

少しだけ照れ臭そうだった。


昔の私は、この人と結婚したら毎日キラキラした生活が待っていると思っていた。


現実は違った…。


ソファーの番人、床へ脱ぎ捨てられる仕事着。

裏返った靴下、イビキ、屁、既読スルー。

気づけば会話は「おう」ばかり…。

完全に妖怪である。


でも…。

雨の日は迎えに来る。

重たい荷物は黙って持つ。

私が風邪を引けば、いつの間にかスポーツドリンクが置かれている。


言葉は減った。

完全に妖怪である。いや、灰色のスウェット姿はリアルト○ロか…。


夫が立ち上がる。

「プリンある?」

「日本語喋れたんだ、あるよ。」


「おう!」

私は吹き出した。


結婚三十年。


これはこれで悪くない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ