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危険なデートを私は本心では待ちわびていたの

土曜日。今日は隆盛りゅうせいとのデート。

でも、朝出かけるときにママに「高校生のドレスコードに抵触している」と厳しい口調で指摘されて、大きく肌を露出させるキャミソールとホットパンツを着替える羽目になる。

「うう~~っ。これで隆盛を誘惑してやろうと思ったのにぃ~~。」と、私は愚痴を言いながら、ママが言うカットソーの上にレースのスリーブが覆い隠すシャツに膝丈のフレアスカートを履く。

「うんっ!! そのほうがずっと、可愛いわよっ! あかりっ!」

と、ママは絶賛してくれた。

鏡に映った私を私が見ても確かに可愛い。というか、これは本来、私の好みの服装。

そもそも、そう簡単に私の美ボディで男の子を誘惑したいとか、以前の私なら絶対にしたいとは思わなかった。それが無意識のうちにいたずら心半分、本心半分で露出の多い服装を選んでいた。

この気持ちの変化の転機は、露出の親玉と言ってもいい水着姿を披露した時だろうとおもう。半裸に近いビキニ姿を私は、男の子たちの前で披露した。

その時、私は気恥ずかしさ半分。自分の姿で欲情してくれる男の子たちを見た嬉しさ半分で結構気持ちよくもなっていた。

それに・・・・。私が隙を見せると、男の子たちも大胆にスキンシップして来てくれることは間違いなかったから・・・・。

特に隆盛ね。

スキンシップでの誘惑は、やはり隆盛が際立っている。あの大きくて逞しい肉体がふれるだけで、私の体の芯から熱くしてくれる。

自分は女の子だって嫌でも自覚させられちゃう・・・・・。

デートの時、初めてバックハグをされた時、あの時の興奮と高揚は、凄かった。

背中を男性に預けるという行為は自然界なら、自分の体を・・・・・女を捧げる行為に近いと言ってもいい。

あの瞬間。私は確実に隆盛に自分を捧げたいと思ってしまった。

背後から抱きしめられるという行為に私は高揚し、心も体も蕩かされていた・・・・。

あの高揚をもう一度味わいたい・・・・と、いう思いが影響しているのだろう。最近書き始めたBLには、男性化した私が背後から隆盛に攻めたてられて歓ぶシーンが多い。動物のように背後から責め立てられて「メス犬」と呼ばれながら、隆盛の所有物として躾けられるシチュエーションなどは、まさにお姉様譲りのドМ魂が効いている。

お姉様もそのシーンを描くときは

「おおおおっ!! いいっ!! いいぞっ!!

 お前も女の歓びがわかってきたなっ!」と、興奮気味に話しながら、一人で始める始末だった。

でも、そうなんだ・・・・。私は、そういう事が理解できるようになってきている。

特に隆盛相手には。あの、圧倒的に自分がオスだと主張するかのような肉体美に包まれた時の快楽は、申し訳ないけど他の二人では味わえないもの・・・・。


そういった欲望が水着姿を晒したことにより、タガが外れて表に出てきているのだと、私は自己分析する。

・・・・・駄目駄目。もっとセルフコントロールしないと・・・。

こんなエッチな子だと知られたら、嫌われちゃうかも・・・・・・。

私は、かなり露出を押さえたママがコーディネートしてくれた可愛い服装を見て反省する。

お姉様は、そんな私に助言をくれる。

「隙が多い女は、男を確かに近づきやすくなる。

 その反面、あまり攻めすぎると軽い女だと思われてしまう。そうなると、男は嫌う。

 男は貞淑を貴ぶ。

 時代遅れ? バカをいえ。嘘だと思うなら恋人同士になってからも今みたいに多くの男にその色気を振りまいてみい。嫉妬深い男だったら、自制できずに手を上げてくるぞ。男は女が想像する以上に支配欲が強い。

 それ故にな、あまり軽すぎても男に避けられてしまうものよ。

 物事には分別というものがある。隆盛を誘惑したい気持ちはようわかる。妾もあの筋肉の海に沈められるように抱きしめられて支配されたいという願望はある。あ奴の体を見ていると、かつて闘神に抱かれた時の興奮がフラッシュバックするでな。

 しかし、それでもな。分別というものをわきまえよ。

 肉欲に溺れず、まずは恋愛を重視したいといったお前の清純さは、お前の美点じゃ。

 大切にせよ。」

普段は、エッチな事しか言わないお姉様らしくないアドバイスだったけれど、それだけに真実なのだろうと思う。私は、肉欲に溺れずに清純な交際を目指さないといけない・・・・・。

でもね・・・。こっちが抑えたとしても向こうが迫って来るんですよね、こう、グイグイと・・・・。


そう、それはデートの時に訪れた・・・・。

私達は駅前で待ち合わせ、ビリヤードに行く前にファミレスで食事をとる。そのファミレスに行くまでは、当然、隆盛が私の手を引いてエスコートしてくれる。時折、道行く人と触れ合いそうになると、隆盛は躊躇なく私の肩を抱き寄せる。通行の邪魔にならないようにしているのはわかるけど・・・・。こんな風に抱き寄せられると、私はそれだけでドキドキしてしまう。

・・・・・いや、これは私だけじゃないはず。女の子だったら誰でも一定以上の好意を抱いている男性に抱き寄せられたら、ドキッとしちゃうはず。それが、隆盛のようにパーフェクトな存在ならなおのこと。

ファミレスに着くまでの道中にそんなスキンシップがあって、既に私の心も体も隆盛に傾いていた。

だから、ファミレスでの少し早めのランチは、休憩時間としては、最適だった。

私は火照る体と心を冷静にするべく、お食事と隆盛とのとりとめのない会話に集中する。

それが隆盛にとっても心安らぎシーンだったらしい。

「俺は食うのも好きだけど、あかり、お前がそうやって楽しそうにデザートを食うのを見るのも好きだぜ。」

と、臆面もなく語る。

それは、本心だから気取ることも気後れすることもなく言えるのだろう。

きっと、隆盛は、私がお料理を見て喜ぶ姿に癒されているんだと思う。たとえは悪いけど、ネコの可愛い仕草を見て喜ぶみたいな感じ? 萌えとは、また違った感じの癒され方をしている。

そう悟った私にお姉様が再びアドバイスをくれる。


「こういう時の。男に対して可愛いアピールをしようと繕ってはいかんぞ。

 男は、女の天然の可愛さを好む。さりとて、ドラマも欲しがる。

 程々にせねば、男が白けてしまって、ホームランを狙って大空振りをする羽目になりかねん。

 程々にせい。」

う~ん。でも、私。お料理に喜んだりするのは別に取繕ったわけではないんだけれども・・・。

「それじゃ。それでよい・・・。

 男が喜ぶ仕草が当たり前に出るのはの。普段から妾がお前を淑女になるべく鍛えておるからじゃ。

 言葉遣いから仕草まで妾が厳しく指導したから、こういう時に自然にそういう仕草が出るのじゃ。」

ああ。確かに・・・・。

私の綺麗な言葉遣い、仕草は、女の子になったばかりの頃に早々にお姉様に屈服して服従を誓った時に制約されたこと。あれからずっと、私はお姉様に色々と矯正されて今の私が出来上がっている。

そっかぁ・・・。今の私って、外見を外しても男の子から見て自然に「可愛い女の子」なんだぁ・・・・。

「ふっふっふ。妾に感謝せいっ!

 さて、これでお前は冷静を取り戻し、隆盛の気持ちは盛り上がったぞ。

 ・・・・・これからが大変じゃ。

 あかりよ。ビリヤードが始まったら、気持ちをしっかり持つのじゃぞ?」

・・・?

え、それって、どういう・・・・・・。


それがどういう意味か、私はビリヤードを始めてすぐに悟る。

そのビリヤード場は、飲み物は自由に飲めるけど、食事はビリヤード場内ではできない。下の階のレストランで済ませるしかないという、飲食とビリヤードを同時経営して利益を出している店で、それが理由でランチタイムは、驚くほど人が少ない。

「・・・・。これを狙っていたのね・・・・。」

私は、人気の少ないビリヤード場を見てすぐに隆盛の狙いに気が付いて、軽くむくれる。

隆盛は、苦笑しながらも「俺とのデートで、何の刺激もなく終われると思うなよ?」と、挑発するように語った。

隆盛は受付で一番奥のテーブルを指定して、ドリンクを二人分、注文する。

何もわからない私は、隆盛に言われるがままに場所を移動する。

そして、指定したビリヤードテーブルまで来たときには、私は、隆盛の狙いに気が付いていたので、顔が真っ赤っかになるほど高揚していた。

それは隆盛も同じことのようで、「熱いなエアコンの温度を下げよう」と、言った。

私が無言で頷くと隆盛は、壁に備え付けられたリモコンで温度を下げる。それから、私の方を見て

「もう気が付いているとは思うけど、ビリヤードのボールの突き方から教えてやるよ・・・。」と、怪しく笑う・・・・。

その瞳に見つめられた私は震える思いをできるだけ押し殺して、「は、はい・・・・。」と、小さく返事する。 

隆盛は、私にボールを突くためのキューを手渡すと、自分もキューを手に取って、テーブルに向かってキューを構える。

「こうやって、構えるんだ。 さぁ、やってごらん。」

優しく甘い声に促されて、私はフワフワとした足どりでテーブルに向かって、震える指先でキューを手にとって構える。


「そうじゃない。こうだ・・・。」


耳元で囁く隆盛は、私の体を後ろから覆いかぶさるかのようにまとわりついて、私の姿勢を矯正する。

ああっ・・・・。

私は自分の体が歓喜に震えていることを知る。そして、「ビリヤードが始まったら、気持ちをしっかり持つのじゃぞ?」というお姉様の言葉を思い出していた・・・。

そう、人気のない時間を隆盛が狙ったのは、これが目的。ビリヤードの指導と称して、私に手取り足取り教えるようにスキンシップを測っていたのね。


隆盛の体に包まれて、高揚する心。高鳴る胸の鼓動に・・・・私はこのデートが無事に済まないかもと予感していた・・・・。

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