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「チェスター様!?」
慌てて家令がとんできて、チェスター様を支える。
私も駆け寄ろうとして、よろよろと立ち上がったチェスター様に手で制された。
「……それ以上、近づかないでくれ」
……? 女嫌いだものね。やっぱり私のことがお嫌いなのかしら。
私の疑問が伝わったのか、チェスター様はぼそぼそとした声で続けた。
「君みたいに綺麗な女性に見つめられると、私のようなものは蒸発してしまうんだ」
じ、蒸発!?
「ええと、それは物理的に消えてしまうとか、そういう……」
なるべく目線をそらしつつ、尋ねるといや、とチェスター様は耳まで真っ赤にしながら、首をふった。
「私の心が、羞恥で死ぬ」
「……それは大変ですね」
……なるほど。つまり、チェスター様は女嫌いというよりも。仕事はできるそうだから、対女性限定で極度の人見知り、というみたいだった。
「では、なぜ、私との婚約を?」
「君にはとても失礼な話だが。ブラウン家の末娘は、その、不細工だと聞いて。それならば、私も緊張せず、愛を育めるのではと思って」
「……なるほど」
その噂をながしたのは、従姉妹のマリーシアだろう。少し前に彼女と喧嘩をした。彼女は喧嘩をするとすぐに、人の悪評を噂する癖があるのだ。
「だが、噂はやはりあてにならないな。君がこんなに綺麗だなんて、聞いてない! こんな醜い私と婚約したなんて、君が可哀想だ」
そういって、わっと、チェスター様は顔をおおった。
……ん? んんん?
チェスター様が、醜い?




