23 教育的指導2-1
俺たちは『拳闘犬部』、そして『レッドトップス学園新聞部』の連合軍を相手に、一方的な勝利を収めた。
となると、あとはいつもの『教育的指導』だな。
まずは新聞部のヤツらからいってみよう。
俺は新聞部のメンバー10人を、部屋の隅っこのほうで正座させた。
そして竹刀がわりとして、へし折れたツルハシの木柄を片手に、ヤツらの前に立つ。
眺め回してみると、みんな泣いていた。
「ううっ……ひっく! うううっ……!」
新聞部のアイデンティティであろうゴーグルは、あばれるちゃんの足技によってすべて破壊され、ガラスの破片が顔じゅうに突き刺さっていた。
ゴーグルごしに血の涙を流し、肩を震わせている。
ヤツらは揃った動きでキッと俺を見上げると、左端から順に口を開いていった。
「うううっ……! この『マキナ・ゴーグル』は1台300万¥もするんだ……!」
「部長であるマスゴミー様から配備していただいた、『レッドトップス新聞部』の貴重な備品……!」
「それを、お前はブッ壊した……! 力ずくで、メチャクチャにしたんだ……!」
「それがどういうことだかわかるか!? 剣を用いて、力づくでペンをへし折ったんだ……!」
「これは、報道の自由に対する冒涜……! 我らは断固として戦うぞ……!」
「明日の新聞で、一面として取り上げてやる……! 野蛮な無宿生が、不都合な真実を知られてしまったので、それをもみ消すために我々に襲いかかってきたと……!」
「そうなったら困るだろう? お前はただでさえ問題児なんだ。ここでさらなる問題が明るみ出れば、また一歩、退学へと近づく……!」
「許してほしければ、ゴーグル10台ぶんの弁償に加えて、慰謝料……あわせて6000万¥を弁償しろっ……!」
「でも無宿生のお前に、そんな大金は無理だってわかってる、だから……!」
……俺は人の話はなるべく聞くほうだ。
コイツらの言い分とやらにも、黙って耳を傾けていたのだが……。
「金のかわりに、シトロンベルの着替えを撮影して、俺たちに……! (バキッ!) ぎゃあああんっ!?」
右端にいる最後のヤツのところで、とうとう我慢できなくなって、ツルハシの柄で頭をブッ叩いてしまった。
そのまま打楽器のように、リズミカルに全員を打ちのめす。
……ドカッ! メキッ! グシャッ! ボキッ! ガンッ! ギンンッ! グンッ! ゲンッ! ゴンッ!
「ぎゃあっ!? いだいいだいいだいっ!?」
「はっ、鼻がっ!? はにゃがぁぁぁぁぁーーーっ!?」
「めっ、目にガラスがっ!? うぎゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!?」
メガネを叩き割られたメガネ君のように、もんどり打って倒れる新聞部員ども。
「まったく……心まで腐りきったヤツらだな。二度とそんなふざけた口が聞けないように、ペンみたいにへし折ってやろうか?」
するとメガネ君たちは「ヒイッ!?」と這い逃げる。
こういった文化系のヤツらは屁理屈が達者で、それにたとえ言い負かしたとしても、『精神的勝利』ってヤツで懲りることもない。
だからこうやって、身体に教え込んでやるのがいちばんなんだ。
拳で納得してもらったあとは、悪い膿を吐き出させる。
「よし、それじゃ俺からの最初の指導だ。いま持ってる写真を出せ」
「そ、そんなこと、承服できるかっ! (ガンッ!) ふぎゃっ!?」
「ジャーナリズムにおいて、撮った写真は自分の息子ようなもの! 力で脅されて、息子を渡す親が……(ドガッ!)……ぎひいっ!?」
「や、やめて、ぶたないで! だだだ、出しますっ! 出しますからっ!」
しかも最初は渋っていて、出したと思ったらまだ隠し持っていたので、俺はモグラ叩きのようにさらにシバく必要があった。
「な……なんだよっ!? 写真は言われたとおり、ちゃんと出しただろう!? (バカンッ!) ぐぎゃあ!?」
「そ、そうだそうだっ! 『全部』とは言わなかっただろう!? なのに殴るだなんて、下衆の極み(ゲスッ!) あぎぃぃ!?」
「我らジャーナリストは言語を正しく理解し、使うんだ! だから悪いのは……(ゴスッ!) ごふうっ!?」
なにがジャーナリストだよ。
さっきまで、悪質な動画配信者みたいに騒いでたクセに……。
ヤツらの頭の形がボコボコになる頃にようやく出揃ったので、俺は写真の山を『発火』の魔法ですべて焼却する。
ふぅ……。
たったこれだけのことだってのに、ずいぶん時間がかかってしまった。
次にカツアゲした金の返金と、奪ったヤツへの謝罪、そして二度とこんなことはしないと誓わせる。
「そ、そんなこと、承服できるかっ! これはこの学園が推奨している、自由競争への冒涜……(ドカ! バキ! グシャ!)」
もう面倒くさかったので、見せしめにメガネ君ひとりを意識がなくなるまで袋叩きにしたら、残りのヤツらは大人しくなった。
そして相撲部の時と同じように、踏破の魔法陣に『魔法遮断の布』がかけてあったので、それも没収。
すると新聞部のヤツらは、屁理屈で説き伏せるのはもう無理だとわかったのか、泣きながらすがりついてきた。
「お、お願いします! それは『マキナ・ゴーグル』以上に大切な、新聞部の備品なんです! 部長のレッドトップス様が生徒会役員になった時にショウ様から授かったものなので、それを持って行かれたら大損害になります! 確実に、ボクらは新聞部にいられなくなります!」
この期に及んでもなお、自分のことしか考えていないとは……。
俺は呆れ果てて、これまた『教育的指導』ではお決まりとなった台詞を浴びせてやった。
「お前らがどうなろうが知ったことか。それに、お前らのボスの都合もな。レッドトップスだがトップレスだか知らんが伝えておけ、この布を返してほしけりゃ、直接俺のところに来いってな」
金色夜叉のように蹴りのけてやると、メガネ軍団はぺたんと座り込んだまま、わぁわぁと号泣しはじめる。
「そんなっ!? そんなそんなそんなっ!? そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!!」
しかし俺は振り返りもせず、ヤツらから離れた。
さて……。
お次は、体育会系のヤツらだな。
実を言うと『拳闘犬部』のヤツらは、人間も犬も全員、部屋の真ん中に寝っ転がらせていた。
解剖されるカエルのように、両手と両足を開いて仰向けに寝かせる、いわゆる『服従のポーズ』というやつでな。
腫れ上がった顔の世紀末ファッションのヤツらと、丸坊主になったかつての猛犬が、川の字になって転がって俺を待っている姿は、なんだかシュールだった。




