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無口すぎる追放騎士、ドラゴンの呪われた黒剣を背負って街に現る  作者: 雑煮餅
第3章 観測領域

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第21話 侵入

開かれた通路の奥は、暗かった。


ただの暗さではない。


空気が重い。


足を踏み入れた瞬間、それまでの場所とは明確に違うと分かる。


試すための空間ではない。


ここは――管理されている。


ロックが顔をしかめた。


「……なんか、嫌な感じだな」


誰も否定しない。


ガルドは何も言わず、前へ進む。


セリナも続くが、その足はわずかに鈍い。


数歩進んだところで、彼女は足を止めた。


「……待って」


ロックが振り返る。


「どうした?」


セリナは少しだけ迷い、そして口を開いた。


「……話しておくべきね」


静かに、息を整える。


視線は前に向けたまま。


「さっきの子……あの子は、私の妹よ」


ロックの表情が固まる。


「……妹?」


セリナは小さく頷いた。


「名前はリゼ。村を出てから、ずっと探してた」


その声は落ち着いている。


だが、わずかに揺れている。


「優しい子なの。争いなんて嫌うし、あんな風に魔法を振るう子じゃない」


一瞬だけ、言葉が詰まる。


思い出すのは、さっきの光景。


「……でも、あれは違う」


「誰かに操られてるか、壊されてるか……少なくとも、あの子の意思じゃない」


ロックが腕を組む。


「なるほどな……だから、あそこまで必死だったわけか」


セリナは答えない。


ただ、一歩踏み出す。


そして――


振り返った。


ガルドとロックを見る。


まっすぐに。


「……お願いがあるの」


短く、しかしはっきりと。


「力を貸してほしい」


「リゼを……助けたい」


言葉はそれだけだった。


だが、それで十分だった。


沈黙が落ちる。


ロックが息を吐く。


「……最初からそのつもりだろ、俺たち」


軽く肩をすくめる。


「ここまで来て見捨てるほど、薄情じゃねえよ」


それから、ガルドを見る。


「な?」


ガルドは答えない。


ただ、セリナを一度だけ見た。


ほんの一瞬。


それから前を向く。


歩き出す。


それが答えだった。


セリナの目が、わずかに細くなる。


「……ありがとう」


小さく、呟いた。


三人は再び歩き出す。


通路の奥へ。


今度は、迷いなく。


やがて、セリナが足を止めた。


視線は床。


「……ある」


擦れた跡。


引きずられた線。


微かに残る魔力の残滓。


「運ばれてる……この先に」


ロックが低く言う。


「間違いねえな」


分岐に出る。


左右、同じように見える通路。


だがセリナは迷わない。


「こっち」


左へ進む。


理由は言わない。


だが、その足取りに迷いはなかった。


数歩進んだところで、空気が揺らぐ。


セリナの目が鋭くなる。


「……罠」


次の瞬間、床に魔法陣が浮かび上がる。


ロックが即座に跳ぶ。


「ちっ……!」


光弾が走る。


ガルドが前に出る。


剣を振る。


受け、流し、逸らす。


セリナが矢を放つ。


魔法陣の核を射抜く。


一つ、消える。


だが、背後にもう一つ。


ロックが振り返る。


間に合わない。


その瞬間――


ガルドの剣が、光に触れる。


消えた。


弾けたのではない。


砕けたのでもない。


最初から、なかったかのように。


ロックが息を呑む。


「……は?」


セリナの目が細くなる。


(今の……)


魔力が、消えている。


斬ったのではない。


断ったのでもない。


存在そのものが、削り取られている。


ガルドは何も言わない。


もう一つの魔法陣へ踏み込む。


発動した光を、同じように消す。


静かに。


確実に。


戦いは、あっけなく終わった。


ロックが頭を掻く。


「……助かったけどよ」


苦笑混じりに呟く。


「なんか、気味悪ぃな」


セリナは答えない。


ただ、ガルドの背を見る。


(……あの剣)


理解できない。


だが、確実に異質だ。


ガルドは剣を一度だけ見て、鞘に納めた。


何も言わない。


三人は再び歩き出す。


静かな通路の奥へ。


助けるために。


そして――


まだ知らない“何か”へ、近づいていく。

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