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神鳴る世界の転生者 -天壌無窮の英雄譚-  作者: 古葉鍵
第三章 出会いのイト
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第二十五話 合言葉はスタータスオープン!


 俺の暴露話が終わった後、会話の俎上に載ったのは事件の事後処理についてだった。

 それは俺が気絶した後の話から始まった。

 長い話だったので内容を要約すると、次のようになる。


 俺の両足が生えてきて皆が驚愕する。俺が見せた技の事も含め、兵士たちには緘口令を敷いた。

 屋敷に戻って医者に見せるため、俺を連れてレナが帰還。リーンは現場の後始末と船の臨検を担当。

 ザッカークの死体は見つからず、生死不明。俺の例もあるので、生存している可能性も?

 ザッカーク戦の前にリーンと戦った船の用心棒らしき女傭兵が身を晦ましている。現在、指名手配のため傭兵ギルドと協議中。

 奴隷商人イブラノン・エラヒムはザッカークの偽名である事が判明。当然、船は接収した。

 一般船員は全員投獄。事件への関与を調べるため、事情聴取を行っている。なお大半が犯罪奴隷に落とされるとの見込み。

 街中で俺を襲った連中も牢獄へ。調書を取って死刑が規定路線。

 奴隷が多数手に入ったので、その処遇を検討している。犯罪奴隷以外は解放して領民にすべしという意見が出ている(レナから)。

 奴隷の中で一人だけ、特別な扱いを受けている者がいた。念のため丁重な待遇で保護したが、異国人のため言葉が通じず、調査が難航している。


「その異国人ってどんな人なの?」

「んー……年齢はイオと同じくらいかしら。人間族なんだけど、外見が中原の人々とは少し趣が違うわね。あと、女の子よ」


 俺の質問に、レナが少し考え込んでからそう答えた。


「ふーん、女の子なんだ」


 しかも俺と同じ年頃という事は……ロリっ子かぁ。

 興味を引かれた俺に、レナがじとっとした視線を向けてくる。


「なんだか嬉しそうね、イオ?」

「まぁ、うん。どんな子だろうって興味はあるかな」


 思えば転生してこの方、同世代の他人と交流した事がなかった。

 精神年齢が高いせいで、他所の子供と話したいとか遊びたいという欲求や発想がなかったからだ。


「それならぁ、イオも一度会ってみてはどうかしら~」


 胸の前でぽん、と両手を合わせて母さんが言った。


「良いお考えですね。年の近いイオ様にでしたら彼女も少しは心を開いてくれるかもしれません」

「そうね、いいと思うわ。大人が接するよりは警戒しないでしょうし……」

「それじゃあ決まりねぇ。さっそく今日の昼食後にでもどうかしら~?」

「私は構わないわ。イオもそれでいい?」

「アッハイ」


 提案からとんとん拍子に話が進み、午後の予定が確定する。

 つーか、この三人もとから示し合わせてたんじゃないか?

 そう思わせるくらい会話の流れがスムーズだった。

 微妙にハメられた感がなきにしもあらずだが、俺にとっても望むところなので不満はない。


 仕事に関する話はそれで最後だった。

 その後は少々の雑談を経て面談はお開きになった。

 レナはお茶を入れに、母さんとリーンは残務を片付けると言って去り、部屋には俺だけが残った。


「勝手に視る(・・)のは少し気が引けたけど……みんな結構、濃い(・・)なぁ」


 眠ってしまった千鳥を撫でながら、ポツリとひとりごちる。

 去り際に、レナたちを天理浄眼で鑑定してみたのだが。

 彼女たちの個人情報は、能力が高いという意味では想定内だったが……予想を超える、瞠目に値する情報もあった。

 特に祝福と加護。

 聞いた話では数千人に一人くらいらしいのに、三人とも持ってるってどんな偶然やねん。いやリーンが加護持ちなのは知ってたけどさ。


 とりあえず気を落ち着けて、一人ずつ情報を吟味していこう。

 まずはレナから。


 《種族》人種・妖精族 フォレストエルフ

 《名称》レンシエル・エレヴ・ミスティス・フリューゲル

 《性別》♀

 《年齢》二二

 《霊格》四〇六

 《強度》七四

 《祝福》慈庇神ラクシュマリア《献神犠聖(サクリディボーション)

 《加護》縁命神アトロート《紡ぎ結ぶ縁糸(ヤーンコネクト)

 《称号》フリューゲルの琥珀

 《状態》身体部位欠損:精霊核(回復不可)


 気になる点が多数ある。上から順に見ていこう。


 《名称》について。

 レナのフルネームとか初めて知った。実はレンシエルって名前以外、知らされてなかったんだよな。

 エルフは名を大事にするから、血縁などの近しい身内以外に詳細は明かさないとかなんとかで。

 無理に聞くのも悪いかと思って気にしないようにしてたが……無断で知ってしまったのはまずかったな。

 鑑定かけといて今さら何言ってんだ、って話だが。


 《霊格》と《強度》について。

 霊格はかなり高い。一般基準で考えれば驚異的な数値と言えるだろう。エルフだからか?

 構成強度もけっこう高い。見た目は華奢だけど、レナの身体能力は侮れないものがある。なにせ近接戦でうちの兵士二人を同時に相手して、負かすくらいだから。


 《祝福》について。

 《献神犠聖》という、神に捧げる犠牲(いけにえ)とか人柱にされそうな名称はさておき。

 肝心の効能も何と言うべきか……微妙?

 簡単に説明すると、神様に奇跡を起こしてもらえるというもの。ただし奇跡を叶える対象が他人限定で、相応の代償を自身が支払わねばならない。

 つまり利他的な加護であり、本人の役に立つものではない。まあ、使い方次第ではあるだろうが……。


 《加護》について。

 恋愛的な意味を連想させる名称とは裏腹に、かなり実用的な加護だ。使用条件がちょっと特殊だが。

 その効能は、特定の関係の相手から力を借りたり、テレパシー会話ができたり、果てはお互いを召喚(空間転移)できたりと、かなりのトンデモ性能。

 問題は、〝特定の関係〟の具体性が不明な事だ。説明に「相互の精神依存度によって発動可能能力が異なる」とある事から、親密さが条件なのかもしれない。


 話は変わるが、加護を得ているという事は、過去において神に評価される功績や行動があったということだ。

 加護の名称や贈った神格からして、それは他者との関わりにまつわるものだろう。具体的には恋愛とか。

 ぬーん……過去に拘るような器の小さい男にはなりたくないが、やはり気になるなー。


 気を取り直して、次。

 《称号》は……微妙に気になるけど、まあいいか。

 《状態》について。

 身体部位欠損:精霊核(回復不可)、レナがエルフなのに精霊使いじゃない原因はコレか。

 つまり何らかの理由で精霊核を失ったというわけだ。

 (回復不可)とわざわざ記載されているのも意味深に取れる。

 何にせよ、レナにとっては触れて欲しくない部分だろうな、この件は。

 また、実例がある以上、俺も精霊核を失う可能性があると心に留めておくべきだな。


 レナについては以上と。

 彼女への理解は深まったが、謎というか疑問も相応に増えた。

 今後、それを知る機会があるといいなあ。


 とりま次へ行こう。

 今度は母さんの鑑定結果だ。


 《種族》人種・人間族

 《名称》シャルロット・フィン・エトランジェ

 《性別》♀

 《年齢》二三

 《霊格》一五七

 《強度》二五

 《祝福》聖秤神アストロイア《カルマの天秤(カルマスケール)

 《称号》エトラニアの薔薇姫

 《状態》


 母さんも母さんで、振るってるなあ。

 エトラニアの薔薇姫なんて二つ名、初めて知ったぞ。家人の誰も口にしないという事は、不名誉な渾名なのか?

 今度折を見て母さんに聞いてみるか。

 たまたま耳にして~と言えばそう不審がられる事もないだろう。


 さて、他のツッコミどころだが。

 まずは《霊格》。俺やレナに較べれば低く思えるけど、これはかなり高い部類に入るはずだ。

 なぜなら、存在位階に換算するとこれだけで約八十レベル。傭兵平均の倍である。とても普通とは言えない。


 さらに普通でないところは、祝福だ。これがあるだけですでに逸般人である。

 しかも《カルマの天秤》とか名前がカッコイイ。

 効能は、対象の霊格と罪業(カルマ)(善行や悪行で変動)を数値で確認できるというもの。

 地味と言えば地味だが、善人悪人を判定できるのはかなり便利と言える。そのうえ霊格まで判るというのは……んん?

 あれ、てことは母さん、俺の霊格がアホ高い事を前から知ってた? そんな素振り、一度も見せた事はなかったが……。

 ま、まあ、悪い事じゃないし別にいいか。


 母さんについてはこんなところか。

 最後はリーンだ。ステータスオープン!


 《種族》人種・獣人牙族

 《名称》リーン・グッドヘル

 《性別》♀

 《年齢》二七

 《霊格》二〇九

 《強度》一六六

 《祝福》狼冥神ケルベリル《解き放たれし狂狼》

 《称号》ベルンの忠犬

 《状態》


 大体の部分は既知である。

 獣人〝牙〟族という種族内分類と、正確な年齢が判明した事が収穫かな。

 他に目を引くのは霊格と構成強度の高さか。

 特に構成強度。レナの倍以上もあるとか、流石の一言だ。

 俺がこの域に達するまでどれくらい時間がかかるやら……。

 まあ二回ほど戦闘で死にかけて加護で復活すれば、あっさり届きそうな気がしないでもない。好んでやりたくはないけど。


 ……ん、あれ?

 この霊格と構成強度数値から計算すると、存在位階がちょっとおかしいな。

 以前リーンから聞いた自己申告だと、一七九レベルとの事だったが……これだと一八七レベルだ。

 たぶん、前回計測時から今までの間に伸びたんだろう。

 あるいはザッカーク戦を経て成長したのか。

 いずれにせよ、いまだ成長著しいのは頼もしいな。


「チィッ!」


 いつの間に目を覚ましたのか。

 千鳥が自分の存在を主張するかのように小さく鳴いた。


 ……成長といえば、将来的に一番頼もしいのはコイツだな。

 そのうちドラゴンとか餌として狩るようになっても驚かんぞ。

 何年先の話かはわからんが。


 あ、そうだ。

 午後の面会のとき、千鳥も連れてこう。

 幼女であれば、きっとこのもふもふ生物を気に入るはずだ。


「千鳥は幼女の犠牲となったのだ……ぐぇ」


 うっかり思ったままを呟いたら、千鳥に《じごくづき》されて悶絶した。

 ああ無情。


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