表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/847

生まれ変わるので。⑤

「もしもだけど」

俺は白薔薇を集めて話し出した。


……ラムアルは最前線で指揮を執っている。


「ドリアドが魔物化して、まだ身体に慣れてないとするなら。もしくは、元々の黒龍の身体が弱っていて、力が出せないとするなら。……早い段階で叩く必要があるよな」

「そうだな。それと、災厄の黒龍アドラノードの文献はねぇのか」

グランが髭を擦る。

……さすがに、切り揃っていた髭は所々長さが変わってきていた。

「それなら、ガルフにお願いしたわ。ラナンクロスト城の文献を当たってくれるはずよ」

「……どうやってあんな龍、埋めたんでしょう……魔法都市があるような昔の話でも、物語くらい残っていそうですよね」

ディティアは気持ちを取り戻したようだ。

目の前でドリアドが飲み込まれたんだ、ショックだったはずなのに。

俺は手を伸ばして、ぽんぽんと彼女の頭を撫でた。


彼女の顔に走った血は、さっきファルーアが拭ってあげていて、すっかり落ちている。


「うぇ、えぇ!?ハルト君!??」

「いや、無理してないかなと」

「そ、それは、正直かなり衝撃的……だったんだけど……!!」

ディティアは頭をどうにか引っ込めようとして紅くなるけど、俺は容赦なく撫で続ける。


「まあ、今回は……ティアに背負わせすぎたわね」

ファルーアはそう言って、彼女の頬をつんつんと突いた。

今回はどうやら援護してもらえるらしい。

「ふぁ、ファルーア!?」

「そうだな。悪かったな…でもお前はエースだから、胸張れよ」

「グランさんまで……」

ディティアは驚いた顔をして、首を竦める。


そんな彼女を見て、ボーザックが笑った。

「ティア。次は俺も一緒に最前線はってあげるからね」

「…ボーザック~………うん、お願いします」

ディティアもとうとう折れて、恥ずかしそうに微笑んだ。


よかった、この仲間に出会えて。

そう思ってもらえるように、もっと精進しなきゃな、と。


その笑顔を見ながら思うのだった。


「そうと決まればだ。ちと昔話を集める必要があるか?」

「古代都市と魔法都市、それが両立していた頃かしらね」

「しかもゆっくりはしてられなさそうだから、駆け足だねー」


俺達は頷いて、帝都を目指した。


******


帝都まで来る途中でシャルアルが率いてきた馬車達と合流。

そこからは早かった。

驚いたのは、その馬車を御する人々の中に、なんとイルヴァリエと、武勲皇帝を刺した息子ジャスティが交ざっていたことだ。


「ジャスティ!」

ラムアルが眼を見開くと、ジャスティは視線を逸らして、口をへの字に曲げた。


「早く乗ってよ、帝都まで行くから…」

「………そ、そうね」

ラムアルは伸ばしかけた手を引っ込めて、頷いた。


…………

……


さすがに帝都まで来ると災厄の黒龍アドラノードは見えなかったけど、大きな揺れは頻度を下げて続いていた。


結局、全身が出てくる前に見えなくなったしな。

揺れが続いてるって事は、まだ埋まってるんだろうと思うけど。


帝都ではかなり不安が広がっているようで、天変地異だ何だと囁く声が彼方此方から聞こえてくる。

俺達はその中を、極力堂々と、笑い飛ばすように闊歩しなければならなかった。


「大丈夫よ!」


ラムアルの堂々とした姿は、帝都民達の励ましになるかもしれないな、と思うけど、本当に楽観視しているように見えなくもないのはどうなんだろう?



疑問は、とりあえず呑み込んでおくことにした。



山脈からここまでは馬で1週間程度の距離だけど、半分を徒歩で来たため10日ほど掛かったはずだ。

すると驚いたことに、翌日に伝達龍が帝都の城にやってきた。


「ファルーア、爆炎から手紙よ」

ラムアルが投げて寄越したそれを、ファルーアではなくグランがキャッチして、ファルーアに渡す。


「とりあえずあたしから読むわ」

ラムアルはそう言って、別の書状をくるくると開いた。


「…………ふむ、うんうん。ラナンクロストでは山脈近くの街と村の避難を実施してるらしいわ。…あとは、早めに黒龍を叩こうって内容ね。それと、ノクティアにも伝達龍を飛ばしたって。あそこの王様、女よね?面倒くさそうだわ!」


いやいや、お前も女だろ。

思ったけど、口には出さないでおく。


「やっぱり、グロリアスも同じ見解になったのかな」

ラムアルのひと言はスルーしてディティアが唸ると、シャルアルが同意した。

「そうだと思う。……すぐに準備をしたほうがいい」

「そうだね。ラムアル、ヴァイス帝国はどうするの?」

「え?もちろん手伝うわ!……ただ、帝国民を危険には晒せない。……どこかに避難させることも考えないと。それにダルアーク達も何とか住む場所を……」

珍しく真剣な表情で、ラムアルが首を捻る。

うーん、と悩ましげな声をこぼしてから、彼女はぱっと顔を上げた。


「あ、そうか。ダルアークの根城があるわね」

「そりゃいいな。結構広かったろう?」

グランがようやく切り揃えられたのであろう髭を擦る。

「ええ。帝都が駄目になったらあそこと、宿場町カタルーペに避難するわ」


出来ればそんなことにならないことを願うばかりだけど。


とりあえず俺達は、作戦を練るべく、ギルドへと行くことにしたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ