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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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177/847

生まれ変わるので。③

ず……ゴゴゴゴ……


皆が上り切って多少の安堵の息をついたのも束の間。


大きな揺れが起こった。


ラムアルの誘導で東に移動を開始し、俺はぼうっとしたままのディティアにあれこれと世話をやきながら、直走っている。


「ウォウッ……ガウゥ!」


フェンが後方で激しく吠え立てると、それは始まった。


ズゴオオォォオッ!


激しく揺さぶられる感覚に、咄嗟にディティアを掴んで引き寄せた。

立っていられない程の激しい揺れに、思わず後ろを振り返る。



……地面が、せり上がってきていた。



木々が薙ぎ倒されて埋まっていく。

途端に、激しい音と一緒に土柱が上がった。


ドゴオオオオン!!


恐らく、魔力結晶が爆発したのだろう。


あちこちで悲鳴があがり、皆が頭を伏せて座り込む中で、俺は思わず呟いた。


「山脈が……怒る。大陸が、起きる」


そして、崩れ落ちる土や木、岩をかき分けるように。

黒い、巨大な頭が持ち上がっていく。


想像以上にでかかった。

長い首の先にあるであろう巨躯は、まだ埋まっていて見えない。


これで翼があるとしたら、山1つすっぽりと覆ってしまう大きさだろう。


「……ハルト君」

「ディティア、どうした?」

「私が、ドリアドを逃がしちゃったから…なのかな。だから、あんな……あんなのが」

彼女は眼を見開いて、怯えるように身を縮め、呟いていた。


その間も、ゆっくりと首をもたげていく巨躯は、俺達の誰もが怯え、震えるほどの存在感を放つ。


「……ううん、これは俺達、全員で背負うべき事だよ」


彼女の小さな肩を、しっかりと掴む。

目線を合わせると、彼女はちゃんと俺の視線を受け止めた。


「ディティア。俺達が何もしなくても、こいつは確実に起きてた。それはわかるな?」

「……」

「俺達は、間に合わなかった。追い付きさえしなかった。ディティアだけが、ドリアドに追いついた。それは誇ることだよ、俺は誇ってる」

「ハルト君…」

「それにさ、ディティアが届かなかったの、俺のバフが足りなかったせいだって言ったら……違うって言うだろ?」

笑って見せたら、ディティアは口をへの字に結んだ。

潤む瞳からは、必死に瞬きをこらえているのがわかった。


「……うん…言う、きっと」


「だろ?……大丈夫。何かやれることがある」


絶望するな、と言われたら、たぶん無理だって言いたくなる。


それほどに、災厄の黒龍アドラノードは巨大で、禍々しい気配を放っていた。

まだ煙の臭いも立ち込めた山脈の一画で、俺達は這うようにして東へと逃げる。


「大丈夫よ、援護するわ!山脈をくだって帝都方面へ向かう!」

ラムアルがレイピアを掲げ、指揮を執る。


「……援護、か」

グランが、そう呟いて盾を構えた。


「殿は任せろ」


「なーに恰好付けてんのさ!……そういう時は、言い方が違うでしょグラン」

ボーザックが、その隣に並ぶ。


「そうよね、頼りない仲間になった覚えはないわよ?」

ファルーアが龍眼の結晶を煌めかせながら、反対側に立つ。


「ディティア」

「はい」


俺はディティアを引っ張って立たせると、一緒にグランの所に戻った。


彼女の眼には、しっかりと光が宿っている。


「最高のバッファーの補助もいるだろ、グラン?」

「最強になれるように、頑張ります」


「ウォウッ」

そして、足元には神々しく威厳を漂わせる銀色のフェンリル。


グランは俺達を見回して、髭を擦りながらにやりと笑った。


「……おう。最強のパーティー……俺達白薔薇で、時間稼ぎでもしてやるか!」


『おお!』


「……お前ら、ヒーラーがいないくせによくも言えたもんだな」

アイザックが笑って、どかっと杖を地面に突き立てる。


「老いぼれたつもりはないしの、滾るものよの、ほっほ」

爆炎のガルフが、さらに隣に立つ。


「おいナーガ、シュヴァリエはラナンクロストの要になる。必ず連れて行け」

アイザックが顎で示すと、ナーガは眉をひそめる。


「祝福の。君は、僕の信念に水を差すのかい?」

シュヴァリエは珍しく面白くなさそうな顔をした。


「ははっ、珍しい顔してんな、シュヴァリエ」

思わず笑うと、シュヴァリエは苦笑した。

「閃光の、と付けてくれてもいいよ、逆鱗の。……死ぬような弱い者は、僕のパーティーに相応しくない。それに水を差させないためにも、僕が残るしかないだろう?」


悔しいけど、ここまできてもこいつの爽やかな空気は健在だった。


「絶対呼んでやらないぞ?」

応えると、シュヴァリエは優雅に微笑んだ。

「大丈夫だ、逆鱗の。君が頭を垂れたくなる強さを見せてあげよう」


何が大丈夫だよ……。

余裕綽々な顔しやがって。


見ると、アイザックは苦笑しながら、それでも安心したような顔をしているし。

ナーガもやる気十分といった表情で、シュヴァリエの一歩後ろに控えていた。



そして。



「さーて、………んじゃあ…まずは何したらいいんだかなぁ……見当付くか?」

そんな、やってやるぞ!という空気を、グランが両断。



「あんたね……締まらなさすぎるでしょう……馬鹿なの?」

「えーっ、そうだよグラーン、俺のかっこいいセリフ返してよー」

ボーザックが項垂れる。

「んなこと言ったって、足元は絶賛崩落中、揺れはまだ起こるだろうし。頭はとどかねぇし?」

グランは、漸く頭を上げきったのか、動きを止めた黒龍を振り仰ぐ。


「魔法は温存してぇし。どう見てもこのサイズにはなっからぶち当てたところで効かねぇだろ」

「……まあ、そうね。やるなら体内の柔らかいところを……」

ファルーアまで、髪を弄りながら考え出す始末。



俺はため息をついた。

「んじゃあさぁ……とりあえず、避難続けようぜ?」

「賛成~」

ボーザックがははっと笑う。



「よし、グロリアス、後は任せた」

「ふっ、言ったね豪傑の。それでは残ろうか、祝福の」

「はっ?本気か?閃光の」

アイザックが若干後退る。

「えっ、ちょっ、シュヴァリエ!お前犬死にするつもり?」

「冗談に決まっているよ逆鱗の。さあ、行こう」


……こ、こいつ。


俺はふんと鼻を鳴らして、再び皆と一緒に走りだしたのだった。


本日分の投稿です。

基本的に毎日更新予定!


時々間に合わなかったりしますのであしからず……ほんとすみません。


更新を始めて、なんともうすぐ半年となります。


お付き合いくださるみなさま、

はたまた初めましてのかた、

本当にありがとうございます!

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