鬨の声を上げますか。②
五感アップと持久力アップを重ねて、フェンと並んで馬を駆る。
さすがにこの辺まで来ると畑が無くなるかと思いきや、ずーっと道沿いに広がる野菜達の列。
ゆっくりと、でも確実に暗くなる空の下、ぽつんぽつんと見える小屋に灯りは無い。
しばらく放置しても育つ作物なのかもしれない。
……そんなことを思い、今度はこの先のことを考える。
今夜は夜通し駆けるべきだ。
今は出来るだけ、ディティア達から距離を取りたい。
あとは、もしもダルアークとやらが襲ってきた時のことを考えておく必要があった。
ダルアークが欲しいのは俺が識ってる情報だ。
つまり、すぐに殺される事は無いだろう。
捕まったとして、情報を守れば勝ちだと思う。
でも、俺が捕まることで他の皆への交渉材料にされる可能性も十分ある。
だから、本気で逃げるべきだろうな。
戦うのは絶対に無理だ。
どう考えても相手は複数だし、俺にはバフ以外で突出した強さなんて皆無だ。
だから、後はいかに早く索敵して対策するかである。
そうすると五感アップは二重でもいいかも。
考えてる内に、空はすっかり暗くなった。
それでも、フェンが馬の横を走ってくれて、方向やスピードを微調整してくれているため、順調に進めていた。
俺も五感アップで視力が上がってるから、暗闇の中でも道をしっかりと走っていることが確認出来る。
それにしても……。
「お前、すごいな。フェンの指示だけでそんな迷い無く走れるのか。真っ暗なのに」
自分の乗る黒い馬に話しかける。
馬は走ったままチラリとこちらに視線を向け、自信たっぷりにひひん、と鳴いた。
……何となく馬鹿にされているような気もする。
「よーし、とりあえず頑張りますか」
俺達はその夜、暗闇の中を駆け抜けた。
******
空が明るくなってから、ほんの少し仮眠をとってすぐに出発。
朝ご飯代わりにその辺の作物をひとつ拝借し、高栄養バーを一緒にかじっておく。
今のところ誰の気配も無い。
まだまだ先は長いけど、俺がしっかりしないと。
そういう気持ちが込み上げてくる。
フェンと黒馬も大丈夫か確認して、俺達はまた出発した。
今日のお題は、ダルアークの目的はなんだろう?ということ。
これを考えながら、道中を急ぐことにする。
魔力結晶を粉にして下っ端に飲ませるくらいだから、他にも何かの実験をしてたりするのかも。
そもそもダルアークって名前は知らなかったけど、珍しい魔物を狩って売る集団がいるって話は聞いてたしな。
魔物を売るってのを金策として、本当は魔力結晶を調べてるのかもしれないとも思えた。
魔力結晶をあれだけ持ってるんだから、ギルドの思惑通りになれば困るんだろうな……。
あれ?
そこで、何か引っかかる。
そうだ、確かあれは、ノクティア王都で。
ギルドで魔力結晶を集めることを不審に思う輩を、ギルドで捉えようって話が出たんじゃなかったっけ。
それは、魔力結晶を集めることを警戒する奴らがいるからで、どうもギルドもノクティア王もそいつに心当たりがあるようだった。
それがもし、ダルアークだとしたら??
ギルドの情報をどうにかして得て、大きく動き出したのかもしれない。
考えれば考えるほど混乱してくるから、俺は、いったん気持ちを切り替えた。
……雲行きが、怪しくなってきたなあ。
10日分の投稿です。
また遅くなってしまいました、
毎日更新していますので、
11日分も夜に更新予定です。
21時から24時を目安に更新しています。
が、見ての通り遅い日も。面目ありません……




