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恐怖
「カノン!」
ぼんやりとした意識の中で、私は自分の名前が呼ばれるのを聞いた。
この声、聞いたことがあるような……
「カノン! しっかりしろ!」
首をがくがくと揺さぶられ、突如として私の身体に感覚が戻った。
私を包む、力強い腕。
目の前には、私の顔を覗き込むリンの顔。
その後ろには、青い空…
リンが、落下していた私を止めたのだ。
「放して…!」
私は状況を理解すると、リンの腕を振りほどこうとした。
だが、腕の力はさらに強くなり、身動きが取れないほどになった。
「放して………」
私は涙声で懇願した。
しかし。
「馬鹿野郎!」
あまりの大声に目を見張る。
「つべこべ言わずにじっとしてろってんだ!」
そこで私は、リンの胸が苦しげに上下していることに気付いた。
見ると、額には大粒の汗が浮かんでいる。
「リン…?」
耳元で風を切る音がする。
二人の身体は、落下し続けている…!
私は気付いた。
まだ怪我が完治していないリンにとって、
二人分の重さを支えて宙に浮かぶのは、あまりに過酷なのだと………
このままでは、二人とも地面に激突してしまう。
頭の中が、真っ白になる。
恐怖。
私は、怖いと思った。
死ぬことが、ではない。
自分が死ぬことなど、思い至りもしなかった。
だとしたら、何に対しての恐怖なのだろうか………?




