逃亡生活(終)?
「はぁー、体中が痛い……」
「前回、一生絶対使わないとか言ってた癖に結局使ったじゃない」
「今回は仕方がなかった」
「はい、はい。と言うわけで賭は私の勝ち」
「くそっ、なけなしの金だ」と言いつつ俺は鞄の底から100万円の束を師匠に渡す。
「そんな事思ってもないくせに」
「鞄の中に入れているお金はそれだけだ」
「そう……なら後払いでも」
「あとが怖いから今渡す」
「孝之に言われたらこの世も終わりだ(笑)」
「いやいや、師匠が持っている機密情報が流出する方のが……」
「多分、しないよ(笑)」
決して冗談ではない。
下手したら戦争が始まって、国が滅ぶ。
誰も特をしない戦争。
「そろそろおいとましますかね」
「うーん、それは無理かな……なんか、外が騒がしい」
「は?この家が見つかった?」
「それは違うかな。具体的にいうと……孝之の家」
「なぜ知ってる?」
「師匠だからwww」
「盗聴してるな」
「イエス!」
「否定しないのが師匠らしいが…………どこだ」
「言えないところ。乙女の花園」
「…………」
大体予想は付くが、そんな事はどうでもいい。
帰ったら取り除く……。
「孝之のえっち」
「この場所バラす」
「孝之にそんなことできるかな〜hahahaha」
「うぜぇ」
そんなことしたらこの世界が地獄化する。
SNSや動画サイト上に吊し上げられるよりも厄介なことだ。
「まあ、そんなことは置いといて、既に1ヶ月経過したけど、どうすんのよ。ある程度は沈静化したけど一時凌ぎ。いつかまたこの状況下になるわよ。乙女の恋心を弄んでいる悪魔が」
「そうならないためにも考えはある」
「孝之にしては……嫌な予感はするけども。嘘でも私は彼女にならないわよ」
「そんな事はしませんよ」
「まだ何か含みがある言い方」
師匠を彼女なんて考えたことない。
女性としては魅力的に感じるけれども、恋愛対象に入るかといえば入らない。
ただの師匠と弟子の関係しかない。
「師匠と出会ってどのくらいでしたっけ?」
「5年以上は経つんじゃない?」
「そんなに経つんですね」
「口調がうざい」
「師匠に汚され「してない」」
「グスン、可哀想な俺」
「心からそう思っていないでしょ?」
師匠の言う通り、嘘だ。
「まあ、師匠に出会えてよかったですし」
「嬉しいことを言ってくれるね。あと6年前早かったら結婚してた」
6年前?結婚?
俺と出合う前に結婚してた?
まさかそんなこと、地球が明日破壊されようと信じない。
この師匠が結婚してたなんてありえない。
俺が百面相をしているところに、電話が掛かってくる。
「噂をすればなんとやら」
「師匠に電話掛けてくる人なんているんですね」
「うるせぇ、愛しの旦那からだよ」
「誰かを脅して、無理やり相手役させるなんて酷い人だ」
俺も人のことは言えないが。
「嘘だと思うなら代わりに出るか?」
師匠が俺にスマホを渡す。
ん?普段使用しているスマホと異なる?
「早くしな。旦那にはお前のことを話してるから大丈夫だ……たぶん」
師匠にしては自信がないようだ。
師匠をここまでさせるなんてどのような人だろうか?
「もしもし」
「おや、この声は今話題な若者だね」
俺の状況下も知っているのか。
師匠から聞いたのか?
いくら旦那といっても、師匠が個人情報を言うはずがない。
「君のことは智さんからよく話を聞いている」
「父のことをご存じで?」
親父にそんな知り合いがいることを聞いてことがない。
「知っているもな何も、旧知の仲だからね」
「は?」
親父もそんなに若くない。
「旧知の仲といっても幼馴染とか同学年とかではないけどね」
「そうですか」
謎が深まる。どこで知り合ったのだろうか。
「ビジネスパートナーだよ。昔、僕がお世話になったからね」
「先を読まないでください」
俺の思考を読まないでいただきたい。
「何年、彼女の隣にいると思うんだい?嫌でも読めるようになるよ。ビジネスには最適だけどね」
「はあ」
「旦那にこれじゃあ、まだまだ成長が足りないね」
ぐうの音も出ない。
「と言うわけで、今後君の立ち回りはどうなのかな?」
「うーん、一旦戻りますよ。もう決着つけないといけないかなと思います」
「君にとってのベスト回答?」
「まあ、被害は最小限にしますよ」
きっと、これが俺にとっての最適解かな。




