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公爵姉妹は幸せです  作者: 京栞


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84/84

#84

全然話が進まないと思っていますね?

私も思ってます。

 私の問いに、少し複雑そうな顔を一瞬だけ覗かせてからお姉さまは微笑んだ。


「一応北部も西部の方も反乱の鎮圧は出来たから安心して」

「一応、ですか?」


 歯切れの悪い答えに首を傾げると、ルニエッタ卿が眉間にしわを寄せて答える。


「西部辺境の方もこちらの国境伯の件も、実行犯の大半は捕まえたのですがそれを唆したであろう連中に繋がる証拠が見つからなかったのです。両方の実行犯が面識があるかも疑わしく……」


 話を聞けば、北部で起こされた反乱と西部で起こされた反乱は同時発生ではあるものの、どうやらその性質は微妙に違ったらしく、どちらもそれぞれの公爵家から討伐隊を出し、それぞれ別で鎮圧したとのこと。

 私たち北部側では、国境伯の娘婿が反乱を起こしたというのが初報だったけれど、どうやらその娘婿も騙されていて最終的に伯たちと軟禁されていたとかで情状酌量の余地があるとか。


 現在は犯人たちを尋問したり、国境伯領の占領中に起こった問題を一つ一つ調べて解決しているそう。

 大きな問題はなくとも、経済や治安にはそれなりに被害があったようで、領民を落ち着かせることもなかなか大変らしい。


 そんな状況でお姉さまが抜けても問題ないのかと思ったが、どうやら国境伯が陣頭に復帰して仕切っていることから、わりに早期に混乱が収まりつつあるみたいだ。


「国境伯様はお元気だったんですか?」

「軟禁されたことで多少の栄養不足はあったようですが、命に別状は無いと医者も言っておりました。西部からもすぐに鎮圧の方が来ましたし、我々公爵家の陣営からも犠牲者は出ておりませんから大丈夫ですよ。現在はクラウス・ゼノンが国境伯の補佐と現場の後始末を担当していますが、近いうちに調査隊を送ることになるかと」


 ルニエッタ卿の言葉にホッと胸をなでおろす。

 私が覚えている反乱では多くの犠牲を払ってやっと鎮圧できたと記憶しているので、それが回避されただけでもとても嬉しかった。


一方エルヴィンは、ルニエッタ卿の発言に少しだけ驚いて、お姉さまの方へ尋ねる。


「閣下、クラウスに指揮権をお与えに?」

「私は今でもどうかと思っていますが。あの馬鹿はこんなにも可愛らしい姫君や幼い少年に対して相応しくない言動をしたと聞きましたし」


 不満そうな顔で憤りを示してくれたルニエッタ卿だけれど、私自身はもうそれほど気にしていない。

 彼自身が反省していることもそうだけれど、正直彼よりもその後に起こったことの方が色々と大きすぎてあまり気にならなくなってしまったのが本音。

 彼を許さないとなると、それ以降の人は事情があるとはいえ、更に思い罰を受けなければならなくなるし、クラウス卿に関してはお姉さまへの忠誠心の高さだけは間違いないのだ。

 どれだけの敵がいるか分からない今、最も心強い味方になり得ることは間違いない。


 お姉さまもルニエッタ卿をなだめるように首を横に振る。


「だからと言っていつまでも私の傍に置いているだけでは成長しないのではなくて? 公爵としてそう何度も機会を与えるわけにもいかないが、私に尽くす気がある者を、機会も与えないままに見捨てるような人間ではありたくない……公爵としての私の判断に不満か? エルヴィンもクラウスに私の傍から離してこういった役割を任せるのは早かったと思うか?」


 若干不安げな色を覗かせてエルヴィンに視線を向けるお姉さまを肯定するように、エルヴィンが頷いた。


「いいえ、俺もそろそろクラウスには経験を積ませたいと思っていましたから。騎士団長以外に貴族籍にある騎士の内、若いのはクラウスと精々がアニーの旦那くらいですからね」

「シュトルム卿、私の可愛い夫は私よりも年上なのですが。そこは私の名前を挙げてくださらねば」


 拗ねるように口をとがらせてルニエッタ卿が抗議する。

 エルヴィンは気にした風もなく、軽く肩をすくめた。


「お前は立場が微妙だし、どちらかといえば平民の実家の後ろ盾の方がでかいだろ。まあ、それは置いておいて。いい加減中に入りませんか? そろそろ執事長がしびれを切らすのでは」


 呼びに来てくれたエルヴィンも話に加わってしまっていたが、爺やがお茶とお菓子を用意してくれている。

 休憩をあまりとらずに帰ってくるであろうお姉さまの為に湯浴みも準備すると言っていたので、待たせるのは良くない。

 いくら状況に余裕が無くても、休息を取るくらいの時間はお姉さまにもあってほしい。


 私はエルヴィンに頷くとお姉さまの手を握り、邸内へと連れていく。

 お姉さまも私の手をそっと握り返して微笑んでくれる。


「エルヴィンの言う通りですね。お姉さま、続きは後でお菓子を頂きながらゆっくりお話を聞かせてください!」

「分かったわ。代わりにリリの方で起きたことも色々教えてちょうだいね?」

お読みいただきありがとうございます。


次回更新予定 8/19

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