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公爵姉妹は幸せです  作者: 京栞


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42/42

#42

お待たせいたしました!

(sideリリアーネ)


「アーノーンー?」

「いだっ」


 真上から振り下ろされたビリーの拳骨は綺麗にアノンの頭に着地し、アノンは思わず涙目になった。

 痛みに少し恨めしそうな目でビリーを見やったアノンだったけれど、そんなやり方が通用するような兄ではないビリーは一切容赦がなかった。


「うぅ、痛いよビリー……」

「勝手にどっか行くなって言っただろ? いないと思ったらアノンは先に来てるって呼び出された時の俺の焦りが分かるか?」


 私がアノンを呼びだしたのは、アノンに預けられた魔法紙を使った伝書魔法だった。


 特殊な魔力の込められた紙は伝言を書き記すと動物の形に変わり、あらかじめ定められた相手の下へ戻る。

 なんとも便利な代物だけど、一枚で平民の五人家族が一年は暮らせるほどの高額であることと、製法は王都の教会が握っていて、教会の上層部と不仲な北部では流通量が極端に少ないことが理由で、滅多に使用されない。

 また、伝言の行き先はあらかじめ本人が登録をしなければならないことも、普及しにくい要因でもある。


 聖女が来たという話を聞いた私は、すぐにこれを使ってアノンに知らせたのだ。

 その時はまさかアノンが直接駆けつけるとは思わなかったのだけど。


 私が知らせて十分と経たないうちに地上三階にある私の部屋の窓が叩かれた時は何事かと思った。

 人一人が乗れるくらいの紙でできた船のようなものに乗っていたとか、却って宙に浮いている方がまだ理解できないと諦められたような登場をされることがあるとは思わなかったので、あれは本当に心臓に悪かった。

 貴族の経験がある者はそれなりに魔法の限界を知っているけれど、宙を移動するようなことは属性魔法を習得済みかつ膨大な魔力量がなければできないことは明白だ。


 伝書魔法紙を渡された時は、何でこんなものがアノンの手元にと思ったけれど、教会と関りがあったというなら製法なども知る機会があったのかもしれないと先ほどの話で納得できた。

 船も、まあ、うん、教会絡みの秘術ってことで納得をしておこう。


 とにかく、私の知らせに駆け付けたアノンだったけれど、どうやら誰にも言わずに出てきたらしく、私の部屋で合流したビリーに叱られているというわけだ。


「ぅ、悪いとは思ってるよ。でも」

「でもじゃない! いいか、確かに俺は隠し事は悪いことじゃなきゃ良いって言った。けど、どこか行くならちゃんと言ってからって約束しただろ? ……俺も皆も心配したんだからな?」

「……ごめんなさい」


 少しだけトーンの落ちたビリーからは微かな安堵が見える。

 アノンは昔から一人で静かにしていることが多いから、気付くのに時間がかかったんだろう。


 アノンもビリーの様子に気付くと、小さくなって謝る。

 一生懸命だったとはいえ、今の私たちの中身は一度成人を迎えているのに、正真正銘の子どもであるビリーを心配させてしまったのは流石に自分が悪いと思ったようだ。


 元はと言えば、私がアノンを呼びだすような伝言をしたのが発端でもある。

 アノンが可哀そうになって私も一緒に謝ろうと口を開く。


「私もごめんなさい、ビリー。アノンは私が呼んじゃったから急いで来てくれたの。とても急がせちゃったからそのせいで言い忘れただけだと思うの。余り責めないであげて」


 私の言葉にビリーは軽く首を横に振った。


「いいや、リリが呼んだとしても、約束を破ったのはアノンだから。リリは悪くない」

「うん、僕が悪い。次はちゃんと言ってから動くよ」


 殊勝な顔をしてアノンが言うと、溜息を吐いたビリーが頭を掻きながら言う。


「本当はそれもやめてほしいんだけどなぁ。ま、必要なことだって言うし? そしたら兄としては見守ってやるしかないもんなぁ」


 そんなビリーを眺めていると、どんと体に衝撃が伝わる。

 私を後ろから抱きしめていたのはメルだった。


「メル?」

「リリ、アノンとばかりいてずるい。だから、今のうちにリリを補充しておくの」


 そう言ったメルは私の背中に顔を引っ付けるとそのまま動かない。

 ネラを交代で抱っこしている双子が口々に言う。


「ほんとだよな、アノンはずるい!」

「おかげで俺たちがネラにつきっきりだったんだぞ! 俺たちが!」

「いやそれは普段からお前らも遊んでないで面倒見ろよ」

「「えー」」


 ビリーの言葉には文句がありそうなリュットとテッドだったが、ネラに触れる手つきはとても優しい。


「いいか、公爵様たちは今すっごく大変なんだから勝手にどっか行かない! 迷惑をかけない! 破ったらお仕置きだからな!」

「……ふふ。あ」


 再度気合を入れて怒って見せるビリーに思わず笑いが漏れる。

 ぱっと口を押え、さっきまで気を張り詰めていたのがいつの間にかほぐれていたということに気付いた私は、手のひらを見つめる。


 そのまま手を見つめている私を見たビリーが首を傾げた。


「リリ?」


 その問いかけに私は首を振って、笑いかける。


「何でもないよ。……ただ、皆がいると心強いなぁってだけ」

お読みいただきありがとうございます。


次回更新予定 5/11

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