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公爵姉妹は幸せです  作者: 京栞


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25/42

#25

時間安定せずすみません……orz


現在の時空に戻ります

(side リリアーネ)


 私以外に、巻き戻っている人がいる。


 その事実が私の心に重くのしかかっていた。


 何がどうなっているのかは分からないけれど、本人の言葉を信じるなら、この巻き戻しを仕組んだのはアノンということになる。

 彼に記憶が戻ったのは、ビリーの証言から考えても奴隷商の捕縛後。

 ほとんど関われなかったことを本当に気にしているなら、巻き戻れるタイミングは彼にも調整しきれなかったということ。

 それに私にまで記憶が残っていることは想定外だったみたいだ。


 なら、アノンが巻き戻した方法を完璧に再現できなかったか、アノン以外の誰かが介入している?


 アノンは、私が何かにアノンよりも好かれていると言っていた。

 必要になれば、向こうから関わってくるとも。

 どう考えても不安しかない。


 そもそもアノン自身も、自分も含めて警戒しろと言ったり、敵ではないと言ったり、どこまでが彼の意図したものなのかは分からない。

 それに彼は私やアノンにとっての家族の味方であって、きっとお姉さまの味方ではない。

 素直に公爵家にお世話になっていることを考えれば、敵だとみなしてはいない。

 お姉さまの私への態度についても疑うようなところはなかった。

 普通、前の出来事を知っているならば、お姉さまが私を自ら迎えに来て、その仲間まで受け入れたことに違和感を感じるはずだというのに。


 アノンは、この巻き戻しは魔王の誕生を防ぐためだと言っていた。

 魔王と言えば、神話に出てくる伝説上の存在。

 けれど、悪魔や魔族、神なんてものは少なくとも私は積極的な話題に上がる者だという記憶はない。

 現実的に考えれば、何かの比喩と捉えるべきだとは思う。

 けれど、私が死んだ記憶を持って巻き戻っている以上、本物の魔王が生まれるという可能性も捨てきれない。


 怖いのは、それでもアノンは私についてきて公爵家に世話になっているということ。

 その魔王の誕生を防ぐというには原因が分かっているはず。

 それにも関わらず、そう簡単に外には出れないこの暮らしを受け入れたなら、これは公爵家にも関わってくる話なのかもしれない。

 そうであれば、私の結末を知っていたことも、公爵家の内部情報を知っていたことも納得できる。


 私はアノンに教えてもらった情報を頭の中で整理することにした。

 聞かない選択肢を取るよりも、聞いた方が良いと思って教えてもらったその情報は、私が想像したよりもずっと大事になりそうなものだった。

 勿論、裏を取らなければ真実とは言えないけれど、これが本当なら早く動いた方が良いのは確かだった。 


「……お嬢様? お疲れですか?」


 ミディの声に思わず過剰反応して肩が大きく揺れる。


「ううん、平気。ちょっと考え事をしてただけだから、ミディも休憩して良いわよ」

「そう、ですか。では、お食事の時間まで部屋に下がっていますね」


 私の誤魔化すような笑みに、少し心配そうな顔をしたミディだったけれど特に言及するようなことはせずに下がる。


 アノンの中身が少なくとも私と一緒に過ごしてきたアノンの延長線上にいることは事実。

 そのアノンがミディへ警戒を見せたことは、少なからず私にも影響があった。


 ミディは何も悪くない。

 けれど、私が無警戒過ぎるというのは正しいのだろうし、ミディが私にすべてを見せているわけではないだろうことは事実だ。

 敵か味方かを判断しようにも、彼女とは今回が初対面だし、身元を保証する祖父のゼルスだって、お姉さまが直接迎えに来たことやアデラ夫人の存在に気を取られて忘れていたけれど、前回は公爵邸にいなかったはずだ。


 前回からの変化は、私やアノンの行動とは全く違うところから来ている。

 直接迎えに来てくれた時は、お姉さまも巻き戻り前の記憶を持っているのかと思ったけれど、それならアデラ夫人のことを気づかないはずがない。

 あの怒り方は、知った直後にしかできない怒り方だとも感じる。

 なら、他の誰かが動いている可能性が高い。


 年の近いお姉さまが傑物過ぎて忘れそうだが、ミディだって同世代の人間と比べたらかなり優秀な人材なのだ。

 それを自分で望んで私に付く、というのは、公爵家への忠誠心がなくとも怪しいし、忠誠心があればなおのこと怪しい。

 前回私を毛嫌いしたのは公爵家の忠誠心が高い人たちが中心だったのだから。


 だから、当分はミディにも迂闊にばれないように立ち回らなければいけない。

 情報を直接言っても根拠に乏しければ聞き入れられないだろうし、無駄に反感を買うことも間違いない。

 だからといって、そちらにばかり集中していれば、公爵令嬢としての振る舞いも指摘されてしまう。

 そうでなくとも、この変化を起こした人物が公爵家に敵対意識があるなら、大きい行動を起こせば狙われてしまう。

 流石に二度もお姉さまより先に死にたくはない。


 つまり、普通の令嬢として振舞いながらも、こちらに有利になるよう動かなければいけないわけで……。


 一人でうんうんと唸っていると、不意に扉をノックする音が聞こえる。


「リリ? 少し良いかしら?」

「お姉さま⁉ どうしましたか、まだお仕事のお時間ですよね?」


 夕食までのこの時間帯であれば、お姉さまはいつも仕事に追われているはずだ。

 突然部屋を訪ねてきたお姉さまに不思議に思いながらも、すぐに扉を開けて応接間に迎え入れる。

 お姉さまは私の知らない青年と男性を伴っている。


 青年の方は、若草色の長髪を後ろで一つに束ね、金縁の片眼鏡を付けた文官。

 年齢はお姉さまより少し上。

 鋭い眼光でこちらを見据えている。


 男性の方は、珈琲色の短髪に同じ色の瞳。

 こちらはきっと私たちの父親と同じくらいの年代と言ったところか。

 私と目が合うと、相好を崩し、柔らかく微笑む。


 お姉さまが口を開く。


「彼らは私の側近なのだけど、二人ともしばらく調査で留守にしていたの。これからしばらくはこちらにいるからあなたにも先に紹介しておこうと思って」


 お姉さまが口にする彼らの名前を私はよく知っている。


 青年の方はユリウス・カルスト。

 男性はエルヴィン・シュトゥルム。


 ______裏切り者と、卑怯者。

お読みいただきありがとうございます。


次回は水曜日を飛ばして、金曜日の更新になります。

ご了承ください。

次回更新予定 3/27 12:00

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