第4話 怒られなくて良かったー
ステータスオープンにテンション上がりすぎて、考え無しにスキルを試してみたかったのは確かだ。
目の前には稲がふさふさと生い茂っておいでで、どうやっても隠せそうにない。
汗が止まらない。営業先で受注先を間違えた後輩の尻拭いに得意先に行ったが取り次いでもらえなかった時も絶望を感じたが、あの時も汗が止まらなかった。
前に血で芽を出したことが秘匿扱いになってたこともあったし、これ絶対バレたらいけないやつだったのでは?!
俺のアホ、、
つい楽しくなっちゃってどうにかすること忘れてたら、どうやらもう日が昇る時間だったらしい。
「これは……その生えちゃったというか。」
「こんなに?」
「突然です?」
執事とメイドに尋問を受ける日がこんなに早く来るなんて
俺はとりあえずベッドに座って、目の前に執事とメイドが立っている。
主に稲が部屋の真ん中を占領しているので座る場所がベッドしか無かったのだ。
メイドはこの稲に興味がありすぎるのか、フワフワする稲穂をツンツンしいる。
これはもう、言い逃れ出来ないのではないか?
最早言ってしまった方が後々 助けてくれるとか無い?
「坊ちゃん」
圧!執事という立場でちょっといい声で低く名前を呼ぶとかずるくないか?
こっちが悪いことしたみたいになってる!これ悪いのか?
「ち、ちょっと、試していたといいますか。自分のポテンシャルを知りたかったといいますか。」
「ふむ。やはり我々の目は確かだったようです」
「微かにこの種?から魔力を感じるよ」
「え?」
稲を触っていたメイが視線だけこちらに向けて、バルドと何やら確認していた
「ど、どういうこと?」
状況が飲み込めないが、どうやら俺の能力が驚かれてはないので大丈夫そうだ。
「坊ちゃんが生まれたあの時、今は秘匿とされておりますがあの瞬間に立ち会ったもの達は皆 何かを坊ちゃんに感じたのです。」
どうやらここからあの日何が起きたか説明してくれるようだ
「怒られたり、、その、勝手に地面に稲生やしちゃったりしたことは、、」
「おや、これは稲と言うのですね?」
「ルシアン様、そんな可愛い顔で怯えないで。萌える」
「黙りなさい。馬鹿メイド。話がややこしくなる」
「?」
何やら怒られる心配は無さそうだ。
「ふむ、勘違いをさせてしまいましたね。この感じを見る限り寝てはいないのでしょう?先に仮眠を取られてはいかがですか?この話をするには時間がかかりますので」
怒られはしないが、いたたまれないので出来れば少しくらい話を聞いてからにしないと眠れそうにないな
「ありがとうバルド。気になって眠れそうにないから少し話をしてくれないかな」
「承知しました。では、メイにお茶を出させましょう」
「すぐに用意します」
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一息ついて、少し気持ちが落ち着いた
メイの入れてくれたお茶はここの土地で唯一残ったものだった。
土地は枯れてしまったが、この茶葉だけは乾燥させて大量に城に保管されていた為に残っていたらしい。
だがどうやってもまた作ることは出来ないと聞いたことがある
土地が荒れただけでこうなってしまうのか?
「坊ちゃん、少しは落ち着きましたか?」
「うん。」
メイがお茶を用意する間に、椅子と机を用意してもらい視界の端で稲が揺れているがまあ、それは後でどうにかしよう。
1度頷いてからこの国に起きたことを教えてくれた
この国は元は豊かな緑生い茂る国で、周辺諸国との争いもあったことはあったが領地を仕切り、貿易こそ少ないが争いが続くことはどの国にとってもマイナスでしかないので東西南北であった争いはクレメンスが強すぎだ為に一気に終結した。
それほど魔王軍は強いのだ。だがその魔王軍が”勇者”というどこから来たのか分からない集団にたった数か月で敗北した。
敵が強かったといえば強かったのかもしれない、だが何をされたかもわからないまま魔王軍が城に帰還した時には全てが終わっていた。
進軍した兵達は勇者一行を見つけることができなく、勇者たちはその隙に魔王国に乗り込み田畑を枯らし、家畜も奪われ、水は飲めるものではなくなっていた。
そこからはずっと曇天が続き回復できずにいる。
魔王軍はとても強かったがそれ以外は普通だった
この地に争いが起こらなくなってから数十年、隣りの隣国とは上手くやっていたという。
魔王国ヴァルデンシュタイン王国は東西南北の丁度間にあることから周りの国が貿易をする際の関門になっていた。だがただただ武力にしか長けていないので周辺の魔物を討伐することで他の国に護衛として呼ばれる代わりに魔王国で使う武具や装飾品、食材の提供をしてもらいつつ周りの諸国でまた争いが起きないよう目を見張ることを役割として平和を保っていた。
魔族と魔物は全く別物で魔族は人種の1つであるらしい
獣人族、竜族、人間、エルフ、魚人族がいる。
他にも細かく分ければいるらしいがこの種族達が他の国にもいて共存して暮らしているとのこと。
魔物はこの何処にも属さない。ダンジョンというものが出現してから何処からでも沸くらしく 巣をつくり脅威を拡大していた。戦争が無くなってからはそれを討伐するのが魔王軍の仕事になった。
他の国の争いに巻き込まれる上では仕方なかったのかもしれないが、被害は甚大だった。
それでも民は信じてついてきてくれて土地を耕し、木を植えて城を再興し、街を作って活気を取り戻せたのも全ては民のおかげだったこともバルドは話していて嬉しそうだった。
周辺諸国との和解交渉もすすみ 完全ではないが条約を結んで戦わないという誓いをたてた国もあったというが、そのあと思いもよらないことが起こった。
勇者という聞いたこともない者たちが、魔王国に攻めてきたのだ。
その時は、今まで静かだった東の国が魔物に襲われているとの知らせがあり魔王軍は第1部隊だけ出陣する予定だったが、第1部隊が出発した2日後、他のダンジョンからも魔物が溢れた為に第1部隊の援護に行った第2部隊が二手に分かれて出現した魔物の討伐に向かった。
そこから1週間経ったあと、勇者が現れた。
見た目は人間だったという。魔王を討伐にきたといい街を襲い魔王城を目指したがクレメンスが勇者の前に立った瞬間、勇者のメンバーが転移魔術を使いどこかへ消えてしまったという。
バルドはその時、二手に分かれた部隊の伝令役をしていたのでその場にはいなかった
帰城したら、勇者が攻めて来た話を聞き破壊された街をみて自分の不甲斐なさを思い知ったという。
「バルドは伝令役に行ってたから仕方なかったんぢゃないの?」
「いえ、少しおかしいと思ったのです。ただ根拠が無いので自分の勘違いかと思い早く魔物を討伐することしか頭が回りませんでした」
眉にシワを寄せたのをみて悔しさがこちらにも伝わってくる
「あの時、私に情報を伝えてきた男は魔王城のものではなかったと思うのです。」
「え?それって」
「はい。どうやら数ヶ月前から魔王国に住み、スパイが紛れていたのではないかと」
「そうだったのか、、その頃メイは何をしていたの?」
「私は、王妃様の護衛を務めていましたので城にずっとおりました。街が襲撃を受けていたのに気づくのに時間がかかったのも多分、今思えばスパイは1人ではなかったのかと」
その後、勇者という人物は見つからず。
他の国にも聞き込みに言ったが、勇者という名前すら知らないとの一点張り。
「ちなみにその勇者ってどんな雰囲気とかわかる?」
「複数人いたようです。街のものも襲われたがあまり強い感じは無かったので、ただの酔っ払い程度にしか感じなかったらしいので。正確に覚えているものが少なく。あとは畑の場所を聞かれたものが多いくらいでしょうか」
ん?仮にも勇者でしょ?
弱いの?
「え?勇者一行は弱いってこと?」
「まあ、そうですね。どちらかと言うと魔物の方が数倍強いです」
俺の中での勇者像が!全然強くないとか勘弁してくれ!
いや、魔物が強すぎるというのも考えられる。
ダンジョンは異世界あるあるでもランクがあるだろうし
「私も対峙したわけではないですが、声だけは大きくて城内に響いていました。ただ街の被害も分からないのですぐには向かうことも出来ず顔は見れませんでした」
「うーん、なんで畑を聞いたのだろうか」
「これも今思えばおかしいのです。畑だけではなく水も何度浄化しようとしても出来なくなってしまいました」
え?浄化ってなに?
「ちょっと待って。今飲んでるものや食べてるものは魔王国産ではないってこと?」
「ええ。その通りです」
「となりの街から運んでます」
「そうですね、討伐依頼も絶えませんので食べ物や飲み水に関しては困りません。条約に基づいて輸入する代わりに魔物を討伐して交換することで成り立ってます。」
それが何か?とでも言いそうな顔!
頭良いのではないのか?それとも疑うということを知らない?
ここの人たち、人が良すぎて侵略される=戦 以外の考えがないんだ。作物や水を枯らされたら他の国を頼るしかないのに、それを逆手に取られていることに気づいてない!
他の国に戦いでは勝てないから他の事で侵略されていると思ってないのか
な、なんてきな臭いんだ!
「バルド、メイ」
「なんです?」
「?」
「話してくれてありがとう。ちょっと試したいことがあるから明日、もう今日か、寝て覚めたら畑に連れて行ってくれない?」
「かしこまりました」
一瞬良く分かってないような顔をしたが了承してくれた
「でも、もう畑と呼べる感じではないですよ?」
「それでいいんだ。今の現状が知りたい」
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第4話読んでいただきありがとうございます!
とうとうバレてしまいましたが、
少しシリアスな…展開になりそうな雰囲気でした
次回は畑を見にいきます!
どうぞよろしくお願いします!
次回は明日の19時頃に投稿予定です。
面白い、また読んでやってもいいという優しい方
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