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006 撤収

 基地に戻り、αの遺体と捕虜を調査班に渡した三浦船長は、すぐさまシャトルで『屯田2号』に帰って行った。


 艦橋に居た皆から声を掛けられ、多少落ち着いたが・・・

「なぁ~ 責任者が武器も持たずにファーストコンタクトしなければならないって、おかしくない?」


「どうしたんですか? 船長。 愚痴を言っても規則は変わりませんよ。」


「そーなんだけどね・・・ 何か納得いかないと言うか・・・」


「でしたら、正式に抗議すれば如何ですか? 提出書類を山の様に書く羽目になりますけど。」

 通信士のルーナからのさめた対応に言葉を無くし、通常業務に戻って行く船長。


 一見冷たい対応に見えるが、ルーナの心の中にはやましい計算が・・・

 皆の前ではクールでできる女を演出しつつ、誰も居ない2人っきりの時に優しくしてあげれば、ギャップもあって船長の中での私の株価は爆上がりですわ~


 なかなかに残念な? 計算高い? 性格をしていた。



 さて、ファーストコンタクトの結果ゴブリン (仮)は、今回の出来事を見ていた者全員一致で正式にゴブリンと名づけられた。 

 又、先の戦闘は正当防衛であり、知的生命体と言うにはあまりに道徳心が低い事から、危険生物として認定される事に・・・

 今後は無警告での攻撃が許可された。


 さて今回のテレビ会議だが、三浦船長からの提言が・・・

「皆も分かっていると思うが、この星の環境は信じられないくらい理想的だ。 しかし、謎のエネルギー結晶体を持つモンスターとでも言うべき生物群が存在し、しかも物語に出て来る様なものばかり・・・

 ハッキリ言って異常事態だ。

 この星の利権を大いに失う事にはなるが、一旦本国に帰り上の判断を仰ぎたいと思う。」


「・・・この星に来て1ヶ月、未だドラゴンの様な大型のモンスターは確認されていません。 現状、我々だけでも対処は可能と判断します。 帰国は時期尚早かと・・・」

「調査班もこの時点での帰国に反対です。 確かに異常な状態であるとは思いますが、データが足りません。 上を納得させる為にも今しばらく情報収集すべきです。」


「そうか・・・ しかし長く留まればその分、危険度が増すだろう。 不測の事態に巻き込まれる事にならないかと危惧している。

 既に有り得ない状況だからな・・・ 何が起きてもおかしくはないだろう。

 だが、今ならば損害無しで撤退できるんだ。 賛成してもらえないだろうか?」


「・・・支援班は船長を支持します。」


「ありがとう。 それに、上がデータ不足を理由に何もしなくても、此処に戻って来ると約束する。 我々が自分達で装備等の増強をする事は出来る。 万全の体制で出直そう。」


「「・・・」」


 最終的に護衛班と調査班が折れる形で母星への一時撤退が決まった。


 

 さて、本来なら撤退時に簡易ベースも撤収するのが原則なのだが、今回はAIによる自立防御で残していく事になった。

 元々1年分の燃料は持ち込んでいたし、戦闘などの不測の事態によりエネルギー消費が増大しても、フードカードリッジの原料に回していた動植物をバイオリアクターに回せば基地のエネルギー消費に対応出来るとの試算が出た事と、長期の観測データの自動収集が目的だ。


 そして1週間、全ての準備が終わった上陸班の人達は全員『屯田2号』に戻った。 因みに、4機のシャトルは全機収容され、地上には1機も残していかない事とされた。



「達する。 本船は間もなく母星へ向け出発する。 出港に備えよ。」

 船長の三浦は船内放送を流すと艦橋内を見渡し、

「出港する。 航宙士、軌道離脱。 速力最微速。 超光速航行可能ポイントへの最短ルートだ。」


「了解。 速力最微速。 軌道離脱します。」


 すると突然、船体に異音と異常振動が起こり、各種アラートが鳴り響く。

 すぐさまAIが推力カット、船内隔壁の緊急閉鎖を行うが・・・


「状況報告! アラート停止。」船長が声を荒げる。


「船体への異状負荷を計測しました。 一部構造体に歪みが発生しています。 プロトコルに従い動力カット及び隔壁の閉鎖を実行しました。」

 AIの報告を受け、

「総員、宇宙服を着用。 艦橋の人員以外シャトルデッキに集合、待機せよ。 繰り返す。 総員・・・」


 そして三浦自身も宇宙服に着替え始めた。


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