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異世界治療院  作者: 森野熊惨
10/11

シフバーリーフ城

ひょんなことからPCのVRゴーグルを買って以来、VR異世界転生していましたが、最近現世に帰って来たので、ぼちぼち執筆していきたいと思います。

よろしくお願いします。


魔法屋でイケメン(兄)と魔女っ娘(妹)と一通りたわむれたあと、俺たちはこの街で一番大きな建築物、

シフバーリーフ城に行くことになった。


なんだろう?観光名所かな?


城門から続くメインストリートは城に直通しておらず、途中で円形の広場になって終わってしまった。

そのまままっすぐ進むと湖に落ちる、遠く湖の先の崖の上にこじんまりとした西洋風の石の城がみてとれた。

円形の広場は石造の手すりやベンチがいくつも並んでてデートスポットに良さそうなところだ。

この中世ヨーロッパ調の景色好きだわ~


そこからはいったん脇道に入り、地道に小島伝いに城に向かう。


小島が密集している街なので、アーチ形の橋がいたるところに掛かっていると思っていたらそうではない、

島と島をつないでいるのは、△の魔方陣が彫られた石のプレートである。

手すりの部分に丸い玉がついていてそこに魔力を通すと動くみたいだ、

うん、なんかだんだんノリに慣れてきたぞ!

この街は龍脈上にあって魔素が満ちているため、この程度の魔法なら本人の魔力はほぼ消費されないらしく、俺でも動かすことができた。

最初は動かなかったんだけど、なんかこう、ドラゴンボール世代的にはね、気がこう出る感じのイメージあるじゃない?

あれで魔法陣が発動した。

水面ギリギリをすべるように進んでいくプレート、遊園地のアトラクションみたいで大人ながらにテンションが上がるぜ!


「しかし、いくら魔法が使い放題だからって、橋を架けた方が便利なんじゃないか?」


「敵に攻め込まれた時は街全体の橋の魔法陣を一括してストップできるような魔法式が組み込まれているの、もちろん魔紋登録している街の住人は自分の意思で動かすことができるわ。

それに橋を架けちゃうと船の往来がしずらいのもあるし…」


なるほど、防衛のための都市構造も兼ねてるのか、

それでさっきから右へ行ったり、ちょっと進んでは左へいったり、

それはもう迷路のように入り組んでいるわけだ。

敵さんが右往左往しているところをおそらく極大魔法で一網打尽ってわけね。


いくつもの橋を渡って街の中心部にある城に向かった。

プレートが徐々に水面から離れていくのだが、空中散歩もスリルがあってなかなか楽しいもんだ。


徐々に小島は崖が高くなっていき、一般的な学校の屋上の高さくらいまでぐらいになった時、

高台にある古城にたどりついた。

ほう、古びてこじんまりとした城だけどもすばらしいたたずまいだ、

春の柔らかな日差しに照らされて水気をおびたコケがきらきらしている。

ワビサビをよしとする日本人的にはなんか懐かしいような、心動かされるものがある。


ふと、アイリスの背中の力がすっと抜けたようなきがした。


彼女が城門の大きくて重たそうな鉄扉の横にある魔法陣に手をかざすと、

これまた重そうな音をたてて鉄扉が左右にゆっくりと開いていった。


「おかえりなさいませ、アイリス様。」


初老の老紳士と3人のメイド、その他何名かが門の両脇に二手に分かれて整列し、深々とお辞儀をしている。


ま、まさかとは思いますが、今までの流れからしてこれは…


「姫様、この度の調査、ご無事で戻られてみな心から安堵しております。」


「姫!!??」


現世では聞きなれない単語に驚いてうっかり声に出してしまった。


「左様でございます、アイリス様はアクアスフィール王国国王の第3王女様にございます。」


オールバックの銀髪と綺麗に刈り揃えられた銀色の髭、長身だが、しっかりとした体つきの初老の執事がそう言った。


what!!姫?どっかのお偉いご貴族様だろうとは思ってはいたけど、まさか王女様だったなんて!

おっさんとんでもない娘さんに拾われてしまったのか?


「はじめてお目にかかります、わたくし執事のクロイツヘルム・フォイエルバッハと申します、以後お見知りおきを」


スッと胸に手のひらをあて、サッとお辞儀をした。

なんというスマートさ!!イケオジ!!


つられてこちらも深々とお辞儀をする。


「こちらはクマ…さん森で会って困ってたから一緒に来たの。」


「初めまして、コウノ・クマゴ…」


「あ!あの、あのクマさん!?お風呂入りたいよね?

ほら、あちこちよごれてるよー?

クロ!わたしお風呂いってくるから、クマさんのお世話してあげてね」


「かしこまりました、すでに準備は整っております、ごゆっくりおくつろぎくださいませ。」


アイリスはよっぽどたまった旅塵を落としたかったのか、そそくさと城の中に消えていった。

そりゃなんたってお姫様だもんね、ん?でもなんで一国のお姫様が一人で森にいたんだ?

ってか初老の執事にクロって、犬じゃないんだからさ…


そのあとすぐに俺も浴室に案内された。

あろうことかクロイツヘルムさんではなく、3人の若い女性のメイドさんのうち、カレンと名乗る短い金髪眼鏡のおとなしそうな年頃の女の子が案内役だ。

「さぁ、お召し物はこちらに、お、お、お背中お流しいたしますぅ」

とかはずかしそうに言っている。

まてまてまて、このすばのクズマさんならば、「よろこんで!さぁ!」とか堂々と言ってのけるんだろうが、いくらなんでもこれはマズイでしょ!?

結局

「申し訳ないがお風呂はひとりで入るのが好きなのでね、お気持ちだけいただいておきますよ。」

というのがせいいっぱいだった。


学校の教室ぐらいの広さがある風呂はいうまでもなく最高に気持ちよかった。

身体のすみずみまでたまった疲れが、コリが、温かい湯に溶け出していく。

あぁ本当に生き返る。

そして浴槽から出て、ふわふわのバスタオルで身体を拭きながらふと思う。


流してもらえばよかったかなぁ、背中...


カレンは結局浴室の外でずっとまっていてくれたみたいで、その後すぐに食堂に案内してくれた。


「さぁ、ご夕食の準備はすでに整ってございますよ」


あー、コレですわ、煌びやかなシャンデリアの下に長テーブル、銀食器に盛り付けられた豪華な食事、

しかもよく見るとシャンデリア浮いてるし、蝋燭じゃなくて燭台からちょくせつ火でてるし…

魔法だよねあれ?


「改めまして、こちらアニスとアンジュとカレンです。

アイリス様の御意向で我々使用人も同席させていただきますことをお許しくださいませ。」


長い金髪に緑の瞳が眼鏡から控えめに覗いているおっとりした大人のお姉さんがアニス

赤毛で元気な笑顔で出るとこが出ているスタイルのいい娘がアニス

カレンはもしかしてアニスの妹か?

2人が並んで座っていると姉妹にしか見えない。


「いえ恐縮です、こちらこそおねがいします」


「さぁみんな、新しいお客さんの出会いに感謝して、食事にしましょう!」


そういってみな合掌し、目を閉じた。

ただこの世界の合掌は掌を合わせるのではなく、指先だけをあわせるみたいだ、あわてて俺も真似をする。


「いただきます!!」


なんかすこしほっとした、イタダキマスのある文化。

我々が生きるために殺害した生命の命をいただく、

そういえば一人暮らしだったし、スーパーの弁当とか外食が多かったからなー、みんなで手を合わせていただきますなんて言ったの何年ぶりかな。

こういうの心があったまるなぁ。


さてさて、異世界料理のお味はというと、めちゃくちゃ旨かった!

なんというかコクがあってうま味が強く体全体に染みわたっていく印象がある。

「くぅー!!うめぇ!!あ、これは失敬、あまりにもおいしかったのでつい」


アニスがあらあらといった感じで微笑んでいる。


「ははは、これはこれはお口に合ったようでうれしい限りですぞ!

ささ、コウノ様どうぞご遠慮なさらずにどんどん召し上がってください、こちらもございますので!」

そういうとクロイツヘルムさんが、黄金色の液体をグラスに注いでくれた。

(例の水玉が、バスケットボールぐらいの大きさの球体になっていて理科の実験で丸底フラスコとアルコールランプを支えていたような器具の上からつるされているところから、蛇口状の魔道具をつけて注いでくれた)

こ!これはまさか!とは思ったが、シュワシュワしておらず、ハチミツの酒ミードをとびっきり爽やかにしたような酒だった。


みんなで乾杯する。


「どうですかな異界の酒は?」


「うまい!これはクセになりそうです!」


「ははは!これはこれはイケる方のようで、じゃんじゃんいってください!」


この老紳士見かけによらず酒好きなんだな、酒が入るとすっかり普通のジイサンだ。

女性陣もお酒が入ってリラックスした様子で談笑していた。

アイリスはその幼い様子からは考えられない結構な量を飲んでいたが、普段からほわっとした表情をしているので、最後まで酔っているのかいないのかわからなかった。

まぁ中身俺より年上だしね、恐るべしハーフエルフ。



食事が終わるとカレン嬢に寝室に案内された、それはもう立派な5つ星ホテルクラスのゲストルームで、見たこともない巨大なベッドや豪華な家具で目を丸くするしかない。


「御用がございましたらいつでもこちらからお申しつけくださいませ。」


カレンはそう言ってベッド脇のホテルでは通常、電話が置かれている位置にある机の上の魔法陣を示した。


「おぉ!、通信魔法ってことでいいのかな?使い方は来るときに使った浮橋のようにやればいいんだよね?」

なにそれ、たのしそう!酒もはいってちょっと子供の様になっていたのかもしれない。


「ふふ、左様でございますよ、私たちメイドと直接繋がっておりますのでご心配でしたらお試しいたしますか?」


「あぁ、そうしてみるよ!」


さっそく魔法陣に掌をあて、気が流れていくようなイメージをすると、ほどなくして赤っぽい魔法陣の色が緑色に変わった。


「はいはーい!こちらアンジュちゃんでーす!!クマちゃんさん元気ですかー!?

今夜はアニス姉さんをよろしくお願いしまっ・・・」


「わわっ、大変申し訳ございませんでしたっ!」

そういってアニスに手を握られると魔法陣はまた赤っぽい色に戻って通信が途切れた。

で、しばし手を握り合ったまま見つめ合う、なんだろこれは?おじさんときめいちゃう!


「そそそ、そのアンジュが大変もうしわけないことを、はわっ」


アニスは真っ赤になってぱっと手を離して顔を赤らめて目が泳いでいる。

あはは、さすが姉妹、普段は冷静だけどカレンと反応がそっくりだ!

お嬢さん、足元がふらついていますよ、ほら、ドサッ…

一瞬緑ジャージで目に黒線のモザイクが入ったクズマさんがアニスを押し倒す映像が頭をかすめたが、憑依はしてくれなかった。

さて、一人でこの6畳一間にピッタリ収まりそうなベッドに寝ることにしましょう、どこに寝ればいいのコレ?せっかくだから真ん中にしよう!こんな体験一生に一度になるかもしれないし…


・・・


なんて考えていたら朝になっていた。

前の日の野宿はモンスターを警戒してうつらうつらしか寝れてなかったから、ほんとうによく眠れて、本当に感謝している。


今何時なんだろう?

スマホを手に取るが電源は入れていない、この世界にも電気が存在するならば、何とかすれば充電できる術が見つかるかもしれない、もちろん電波はないだろうが、写真や動画が撮れるだけでも使いがってはある。そのときまでは何かの時のために温存しておこう。


寝ぼけまなこでベットからのっそりと這い出て、あたたかい日差しが差し込む窓を開け放つと、新鮮な緑で洗われたさわやかな空気がふわりとほおをなでる。

大きく深呼吸する、遠くにはシルバーリーフの街並み、きらめく湖。


一気に目が覚めた、なんというすがすがしい気分だろうか。

おもわず目を細めて景色を堪能していると、


コンコン、と控えめに扉がノックされた。



次回はアレルギー性鼻炎になります。

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