表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界治療院  作者: 森野熊惨
11/11

症例4:アレルギー性鼻炎(による鼻づまり症状)

先日久々にサイトをみたら、わざわざ誤字脱字訂正をしてくださったり、コメントくださったりしていた方がいて、とてもうれしかったです!

放置していてすいません、またぼちぼち執筆していきますので、末永くよろしくお願いします。

コンコン!


「おはよークマさん!入ってもいいかな?」


「昨日はよく眠れたかな?」


「おはよう、それはもう!おかげさまで」


「そう、よかった」


そういってアイリスが、えへへといった感じで微笑む、朝からなんて癒される笑顔なんだ。


「朝ごはんできてるよ、一緒にたべよ!」


なんだろうこれはもう、新婚さんかな?


「でもそのまえに、よかったらちょっと聞いてほしいことがあるんだけどいいかな?」


はいはいなんでございましょう?麗しの姫様の言うことならなんでも聞かせていただきますよ。


「おねがい、アンジュが地下室の悪魔にイタズラされてしまって苦しそうなの、クマさんの不思議な術で悪魔祓いができないかな?私の状態異常回復魔法じゃ治らないの」


術?術なの?おじさん東洋医学的に治療しているだけなんだが…

聞けばこの国には、昔から古い地下室にはイタズラ好きの悪魔が住み着いており、

息が苦しくなったり、頭痛や吐き気をもよおすといったような状態異常魔法をかけられてしまう、という言い伝えがあり、

幸い死に至ることはないのだが、悪魔のイタズラとしてやっかみがられていた。

事実、本当になんらかの症状が出て苦しくなる者が多いので、

「言うこと効かないと地下室に閉じ込めるぞ!」と言われると大抵の子供はおとなしくなるという。


ほぅ、一般家庭に押し入れじゃなくて地下室があるのか、たしかに城までくるときに見た中世ヨーロッパ風の建物も大概大きかったし、人口も少なそうだもんな、

地下室じゃ青いネコ型ロボットにおめにかかれるチャンスがないのは残念だが…

水の妖精ラルーカがアイリスの肩からひょっこり顔を出す、そういえばコイツ青くて丸っこくて耳があるんですけどまさか…


「オハヨウクマ!」


おぉっと呼び捨てですかい


「了解!どれ、除霊はできないけど、ちょいとみせてもらおうかね。」


そういえば城に泊まらせてもらっているのを忘れていた、いちおう客人ってんで、城の尖塔のシルバーリーフの街並みが見渡せる非常に眺めのいい一室にいたんだった。

なので二人と1匹?はエレベーター的な魔法の箱で1階に降り、長い廊下をいくつか曲がって使用人たちの離れに向かった。


ほどなくワイヤープランツのような植物が壁に繁茂している木造のオシャレな小屋にたどり着いた。

あら素敵!軽井沢のペンションみたい、マジで使用人の小屋かよ!?

玄関はやはり魔法陣でセキュリティーがかけられているようだ、アイリスが解除して入る。

ハイテクなんだかなんなんだか、魔法万能だなおい!

これまたオシャレな花瓶とか置いてある廊下を進んで、

いくつかある扉のひと部屋に入るとアンジュがベッドに横になっており、クロイツヘルムさんとアニス姉妹が心配そうにのぞき込んでいた。


「おお!アイリス様!くま殿!来ていただけましたか!本来使用人でありますわたくしめが城主のお手をわずらわせぬようお願いに上がる予定だったのですが、姫様のくま殿に失礼があってはならぬようにとのご配慮から…」


「クロ!!」


「はっ、申し訳ございません、クマ殿さっそくこちらへ…」


アンジュがうーうーうなりながらベッドに寝かされている。

メイド3姉妹の真ん中で昨日は活発で元気そうな娘にみえたが。


「で、どこが苦しいんだい?」


「はだがつばっで、いきがぐるしいです。あだばもいだいえす。」


はいはい、頭痛と鼻づまりね、一瞬昨日飲みすぎて二日酔いなんじゃないの?とも思ったが、

舌をみて、脈をとってみたところそうではないらしい。


「これ、今朝からですかね?昨晩はなんともなさそうでした?」


本人が苦しそうなのでクロイツヘルムさんに聞いてみる。


「ええ、そうです、昨晩はいつも通りだったようですが…

ちょっと古い道具を探させに今朝方地下室に行かせたのです。そうしましたらあろうことか例の地下室の悪魔に悪い状態異常魔法をかけられてしまったようなのです。」


ふむ、やはり地下室、それも言い伝えになるほどの何かがあるみたいだ。

しかしこれは、本当に回復魔法が効かない状態異常魔法なのか??


「他の方はその地下室に行って具合が悪くなったということはありますか?」


「はい、わたくしめは長いこと地下室に潜っていると、目と鼻から水が止まらなくなることがしばしばあります、本当に厄介な悪魔であります。」とクロイツさん。


「私は胸が苦しくなって咳が止まらなくなります。」とアニス


「私も息がしずらくなるかなぁ、まだあまりわかりません」とカレン


アイリスは立場上地下室に降りた経験がないためわからないという。


「ふむふむ、なるほど、

じゃあとりあえず、その地下室の悪魔とやらに会いに連れて行ってもらえませんかね?」


「し、しかし姫様の大切なお客様に…」


「あぁ、たぶん大丈夫ですよ!たぶんですけど…」


結局アンジュのめんどうを小さなカレンがみて、一番上のアニスは本日の雑務に取り掛かり、俺とアイリスとクロイツヘルムさんと1匹で古城の地下室におもむくことになった。


「ほぅ!これはすごい!」


螺旋階段を下りていくと地下室が3階建てであることがわかった。見た目が中世の建物なので油断していたが、この世界の建築技術はバカにできない。

それともまた魔法という例のナゾテクノロジーか?

なにげにエレベーターもセキュリティー付きオートロックドアもあるからな、恐るべし異世界!


ちなみに地下1階2階は古い本、地下3階も半分は古い本と、もう半分は物置だそうで、本の内訳はほとんどが魔書、つまり魔法陣が大なり小なり描かれた本だそうだ。

この世界の魔法は基本誰でも使えるんだけど、紙に書かれた魔法陣はある程度の魔素量を通すと紙が燃えてしまう、日本のドライヤーを海外で使ったら焼き切れたっていうアレみたいなカンジか?

ゆえに大量の同じ本が保管されるということになってしまっているのだそうだ。

そういえば城下町の家のいたるところで本をみたな、今考えると本が異常に多かったのはそういう理由か。


「アンジュが作業していたのも地下3階の方でして、まったく彼奴ら闇が深いほどに悪さをするらしい!」


そう言ってクロイツヘルムさんが重く古びた木の扉を開けると、先ず鼻に着いたのは強烈なカビ臭さ、そして歩いただけで、(やはり魔法で発動した懐中電灯のような)ライトに照らされチンダル現象をおこす埃っぽさ、大勢で入ったもんだからすぐさま大量の埃が巻き上がり咳きがこみあげてくる。

息苦しい!こりゃ鼻水、鼻づまりがでるのも時間の問題だな。

みんなの症状とアンジュの舌、脈からだいたいは察しはついていたのだが、

こりゃまぁ、アレルギー性の疾患で間違いなさそうだ!!


「なるほどねぇ、これはちょっと俺には地下室の悪魔を退治することはできそうにないな。」


アイリスがあからさまにしょんぼりした顔をする。


「でも、できるよ!君にならね!」


そう言ってアイリスに向かってガラにもなくウインクしてみた。

するとすぐさま頭にはてなマークがいっぱい浮かびつつも、ぱあっと表情が明るくなる。

まったくコロコロと表情がかわる可愛いお嬢さんだ。


「あ!それとちょっとしたまじないがあるんですが、みなさんハンカチはお持ちですかね?」


「ハンケチでございますか?もちろんここに」

「あるよー」


クロイツヘルムさんは大きい白いハンカチを、アイリスは縁にレースのついた水色のかわいらしいハンカチを取り出した。


「それじゃこう、鼻と口をしっかり覆って、頭の後ろで縛ってください」


俺はハンカチ、持ってなかったんで、ふわっとしたアスコットタイをとって鼻と口にあてがおうかとおもったんだけど、アイリスのハンカチがちょうど鼻と口を覆えるぐらいの小さなサイズの物で、埃の侵入を防ぐには不十分だったので、その上からアスコットタイでかるく縛ってあげることにした。


「むぐぐぅ??」


上目遣いに目をぱちくりさせている。


この分だとこの世界、ないんだろうな…


マスク!


結局自分の分はベストを脱いで口元に巻いた、目だけ出てる状態ね。


「ははは!なんでしょうかコレは?仮装大会ですかな!?」


「違います!」


「クマ!オモシロイ、カオ、ワロタ!」


精霊はアレルギー関係ないよね?っていうかコイツ鼻と口あるのか?


「えぇと、たしかサークルが小さいほど魔素は少なくてすむんだよね?

であればまずは地上まで穴をあけてもらう、これくらいでいいから。」

そういって親指と人差し指でオッケーマークをつくる。

これはアイリスが以前魔法で土を操ってシェルターを作っていたからたぶん大丈夫だろう。


「つぎにあけた穴から空気が外に出るようにしたいんだけど風の魔法か何かでできないかな?」


「大丈夫、それなら簡単だよ」


そういってアイリスは魔法のペンを取り出すと、すごい速さと正確さで円の中に円と三角形が幾つもある魔法陣を書き上げた、なるほど魔法陣の中に魔法陣を描くと複合できるらしい、いくつかの文字と数字もみられた、もしかしてコンピューターのプログラムを書くようなものなのだろうか?

しかしこのペン、石の壁にも直接かけるんだ、そういえば俺の翻訳の魔法陣も体に直接描かいてたし、万能だなこのペン、ってかフリーハンドなのにめっちゃ円まるくね?線直線じゃね?


「それはそうでございます!姫様は天才ですから!」


なにそれ!?フリーハンドの天才なのかな?


さて話を戻そう、俺がなにをしたかったのかというと、

そう!つまりはただの換気扇をつくったのである、ベンチレーター!

西洋医学の抗アレルギー薬を飲まなくても、東洋医学でアレルギー症状を緩和する方法はいくつかある。

だが、一番大切なのはまずアレルゲンを取り除くこと、原因物質がなければそもそも発症しない。

今回の場合、日の光が届かず空気の流れがなく、カビや埃の温床となっている地下3階に

常に空気を送り込み乾燥させてカビの繁殖を抑える、まずはこれが先決だ。


「あとは定期的に床や本棚をきつく絞った雑巾でよく拭くこと、これでたぶん2~3日もすれば地下室の悪魔はいなくなるはずだ!」

なんてね。


さて発症の原因さえ取り除ければ再発はないだろう、悪魔の除霊は無事成功した!

ならば目下の症状、アンジュの鼻づまりを改善することは難しくない。


「さぁ、部屋に戻ってさっそくアンジュの治療をしよう!」


「なんとっ!地下室の悪魔を退けただけではなく、状態異常を解く方法も存じ上げているとははたまた…」


「わぁ、すごいよくまさん!すごいよ!」


「クマ!スゴイ!カオ、ワロス!」


顔じゃねーし!ベスト巻いてるだけだし!




と、いうわけで使用人小屋に戻ってまいりました。


「アンジュすごいよ!クマさんが地下室の悪魔をやっつけてくれたの!」


「おんど!?ぐばだとぅげーぐばだ!」


はは、何言ってっかさっぱりわかんねーよ(笑)


一度部屋に戻って鍼を持ってきてるんでね早速一仕事行きますか。


漢方だと今のこの娘には小青竜湯がいい、少し冷えも持ってるし。

とはいえもちろんツムラもイスクラもないからね、かといって植物も元いた世界と同じとは限らない。

それに試験問題でやったから方剤は覚えてるけど、実際に森で生薬を取ってきて調合した経験もないから、漢方薬を1から調合するのは難しいだろうな…葛根湯、桂枝湯、生姜湯といった単純な方剤ぐらいならあるいは可能かもしれないが、それはゆくゆく研究していくとしよう!


ま、でも俺一番得意なの鍼だしな!

東洋医学の医師はみな一様にできるのであるが、

漢方の処方が得意な者、

鍼を打つのが得意な者、

推拿という整体が得意な者、

薬膳料理や生活指導が得意な者、

といったようにやはり得手不得手がでてくる。


自慢じゃないが俺は鍼を打つのが早かった。

左手の小指と薬指の間にあらかじめ30本くらい鍼を挟んでおいて、右手だけで鍼管に鍼を入れて左の人差し指と親指だけで押し手を作りマシンガンのように打っていく。

生まれてこの方鍼灸治療を見たことも聞いたこともない人に、何も言わなければトントンと皮膚を叩かれているだけで、まさか鍼を打たれているとはわからないだろう。

アル綿で消毒しながら流れるようなスピードで容赦なく鍼を打っていく。


「「「!!??」」」


使用人3人衆は文字どおり鳩が豆鉄砲食らったような顔でこちらをみている。

あ、アニスが涙目になってる。


というわけで、以下の場所にサッと鍼をした。

上星じょうせい

(頭部、前正中線上、前髪際の後方1寸)

印堂いんどう

(顔面部、眉間中央陥凹部)

迎香げいこう

(顔面部、鼻唇溝中、鼻翼外縁中点と同じ高さ)

鼻通びつう

(迎香と攅竹を結ぶ中点)

尺沢しゃくたく

(肘窩窩横紋上、小弯二頭筋腱外方の陥凹部)

合谷ごうこく

(手背、第2中手骨中点の撓側)

厲兌れいだ

(足第2指、末節骨外側、爪甲角の近位外方1分、爪甲外側縁の垂線と爪甲基底部水平線の交点)



「はい、で、鍼を打ったところがツボ、えーとまぁ、鼻詰まったら刺激するといい場所ね。

せっかくだから軽くレクチャーしておこう!

鼻のツボだったら(印堂、迎香、鼻通)両鼻の際の部分を上下に往復しながらでいいし、おでこの上のツボだったら(上星)生え際からすこし後ろぐらいを指で何回も押してみてほしい。

なんかこうツーンとか、ズーンとかする場所あるでしょ?

指はのばしたままだとすぐに疲れてしまうし、力が入りずらいので、こぶしをこう作って第2関節で押すのがポイントかな、とはいえそんなに厳密にならなくていい、

鍼をささなくてもツボの周辺をマッサージするだけでも血行がよくなって少しは楽になるからね。」


みんな言われるがままに、真面目な顔で黙々と顔中指で押している、

いちばん小さいアニスなんて絶対何やってるのかよくわかってないけどなんか空気読んで

一生懸命みんなの真似してるところがほほ笑ましい。


「え!??なに!?鍼ってなに!?


あ!なにこれ!鼻が通ってる!?? しゃべれる!」


アンジュはおもむろに顔に手がいって刺さっている鍼を触ってしまい、まさか!?という顔でベッドサイドに置いてあった鏡の方をみた、見てしまった。

はは、クロイツヘルムさんとアイリスがあっちゃーって顔になってる。


「ファッ!?」


うん、きっとこっちに鍼灸用の細い鍼なんてないんだろうから無理もない、

裁縫用の太い縫い針が顔にいっぱい刺さっていると勘違いしたのだろう、アンジュは顔色を青くしてもう一度ベットに倒れこんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ