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幻影部屋の利用法

カムイからの戦闘指導がひと段落つき、昼食を施設内にある食堂にて済ませた後、カムイ達は幻影部屋一号室へと戻ってきていた。

部屋の内装は中に人がいなくなると特に何もしない限りリセットされる仕組みになっているようで三人が入った時、その部屋は初めて来たときと同じ殺風景な部屋になっていた。


「うん、完全に元に戻ってるね。でもどうせ設定を変更するつもりだったし余計な手間にならなかった分良かったかな。」


カムイは部屋の様子を見てそういうと、設定用の魔道具へ向かい、設定を始める。

朝と同じくらいの時間で設定も終わり、カムイが魔道具から手を離すと次第に内装が変化していく。

やがて変化も終わり三人が周りを見回してみると周囲は一面の平原であった。

地面はある程度の割合で草木が生え、部屋全体に広がっている。壁はそのままであったがそれさえなければどこまでも続いているように見えたことだろう。


「おお、これはすごいね。できるかもと思っていたけどここまで再現できるなんてね。これならたぶん他にも応用できそうだ。」


カムイは自分の設定した空間をそう評価し、魔道具に向かい設定を追加していく。


「カムイ姉さん、そろそろ次に何をするか教えてほしいのです。」


「そうなの。次はここで昼前と同じことをやるの?」


「あぁ、ごめん。説明を忘れてたよ。クルルのは半分正解かな?この設定でやるのはあってるけど、今度は別の事をやっていくよ。ちょっと待ってね。今設定が終わるから。よし、これで終わり。」


カムイがそう言って魔道具に最後の設定を加えると今度は部屋の一部が歪んでいく。

その歪みは次第に治まり、そこから現れたのは一匹のケモノである。

大きさは大体カムイの胸くらいの高さで緑色の醜悪な顔をし、額に小さな角が生えた人型の生き物。

その生き物は意思のない人形のように動くこともなく、現れた状態のままで棒立ちになっていた。


「「ゴブリン、ですか?(なの?)」」


「そう、ゴブリン。どんな地域でも最弱の魔獣、または魔物とされ、それなりに動ける子供なら一対一でも倒すことのできるって言われている奴。とりあえず戦闘の練習にはもってこいじゃないかな?とりあえず二人は見てて。」


カムイはそういうと『収納庫アイテムボックス』から出した短剣を鞘ごと腰に差し戦闘準備をし対峙する。


「じゃあ、始めるよ。起動」


人形のようだったゴブリンは、カムイがその言葉を発すると催眠術が解けたように目に光が宿り動き出す。

その動きは一般でも知られるシャルとクルルが過去一回は見たことのあるゴブリンの動きと同じように見えた。

そのゴブリンに対しカムイは短剣を抜き、襲い掛かってくる爪を時には避け、時には短剣を受け止めたりしながら少しずつ反撃しゴブリンに傷を与えていく。

ゴブリンはそのたびに赤い、血のようなものを出し、その出た量が増えてくると次第に動きが鈍っていった。

充分にゴブリンが弱ったことを確認したカムイは今までカウンターが主だった戦闘方法から一変させ、一気にゴブリンとの距離を詰めすれ違いざまに首と胸のあたりに攻撃を加える。

弱り切ったゴブリンはその攻撃に対応できず、その二撃をもろに受け一瞬のうちに死を迎えることになったのだった。


「うん、良さそうだね。これなら充分いい訓練になるよ。」


ゴブリンを倒したカムイは、先ほどの戦闘の感覚を思い出しながらシャルとクルルの方へ向かいそういった。


「お見事だったのです。ゴブリン相手とはいえあれほど一方的に戦うのは余程の腕がないとできないのです。ましてやあれだけ攻撃したのに返り血すらついていないとはさすがカムイ姉さんなのです。」


「すごく一方的な戦いだったの。でも淡々と攻撃を繰り出すカムイ姉かっこよかったの。」


「でもカムイ姉さんなら一瞬で終わらせることも出来そうなのになんであんなに時間をかけたのです?」


「クルルもそう思ったの。クルルはカムイ姉の戦いはさっきのシャル姉とやったのとクルルとやったのしか見てなかったけど、それでもゴブリンくらい一瞬で終わらせることも出来たと思うの。」


シャルとクルルはカムイの戦闘に対し感想を告げ、そのうえで疑問に思ったことを聞く。


「ああ、それはね、見本として見せる為と実験だよ。」


「実験、ですか?」


「そう、実験。」


「?見本は言われればその通りだったと分かるの。でも実験ってなんなの?」


シャルとクルルはカムイが答えとして言った言葉に首を傾げる。

それにカムイは詳しく説明をするべく口を開いた。


「えっと、最初になんだけどギルドの受付でマリアさんに個室について聞いたときなんだけど、この部屋の説明で実体のある幻影を作り出すって言ったのと、かなり精巧に再現されるって言っていたのは二人も聞いているよね。」


「はいなのです。」


「確かにそんなことをいっていたの。」


カムイの質問に二人はその時の話を思い出しながら答える。


「そこでボクは思ったんだ。その精巧っていうのはどこまでできているんだろうってね。で、こうも思った。その精巧の度合い次第ではいろいろできそうだなって。」


「いろいろなの?」


「例えばどんな事なのです?」


「うん、例えばさっきみたいなこと。どこを傷つけても血のようなものは出たし、その出た量によって次第に弱っていった。それに切った感触なんかもあった。これはマリアさんの言っていたように実際の戦闘と同じことができるってこと。それがあるかないかで戦えるかどうかも決まりかねないからね。」


カムイはそこで一度言葉を区切り、二人を見る。

二人もその言葉を聞いて確かにと思い真剣に聞いていた。


「それと設定次第で他にもいじれるから、その分経験も積める。例えば極端に強いゴブリンが出たなんてことが実際にあったらどうする?ちなみに見た目は一緒だよ。」


「見た目だけで判断できないのなら攻撃してしまった後、実力がなければ返り討ちにあってしまうです。」


「そう、そんな時経験があったら?」


「返り討ちにあう前にできることが増えるの。」


「うん、そんなところだね。それもこの部屋なら簡単にできるってこと。しかも説明書によると幻影で出されたものに与えられた攻撃で怪我をしても終われば消える、もちろん死んでもね。死んじゃうとかなり精神に来るというかキツイらしいからやりたくないけどね。まあ経験を積むにはいいよね。」


「そうかもしれないのです。」「同意なの。」


「最後に、これは個人的に興味があったものだけどこの幻影には内臓などもあるって言ったらわかるかな?」


「「???」」


二人は最後にカムイが言った言葉がわからずに首を傾げる。


「そうだなぁ。これも設定次第なんだけどね、あれを見て。」


そういってカムイはさっき戦ったゴブリンの方を指さす。

そこには未だにゴブリンの死体が残って(・・・・・・)いる。

二人はそれを見ても首を傾げたままだったが、しばらくするとシャルの顔が驚愕に染まっていく。


「え?なんでです?これって幻影のはずじゃないです?」


「?どういう意味なの?」


「うん、魔術に触れていたシャルは気づいたみたいだね。そう、普通の幻影・・・特に実体のある幻影は倒されたり特定の方法で消えてしまう。けどこの幻影は設定した効果で消えていないんだ。そしてこれを利用すればあることができる。」


「あること、なの?」


「カムイ姉さん、まさかこの部屋でするつもりですか?・・・アレを。」


クルルはカムイの言った"あること"に思い当たらなかったようだが、シャルは気づいたようであった。


「そう、ボク達が森でやろうとしたけど危険が伴いかねないからできなかったこと・・・獲物の解体を。」


「え?」


「やっぱり、ですか。」


「シャル、やっぱりはないよ。だってこの部屋ってかなりその練習にうってつけなんだよ?わざわざ狩ってくる必要もないし、練習で失敗しても肉を無駄にすることもない。それに汚れたりしても消せるから後に影響もでない。それに旅をするならこういう方面でも経験は必要だしね。良いことずくめじゃない。」


「まあ、そうですね。カムイ姉さんの言う通りなのです。でもここって戦闘の訓練用施設なのにそれ以外の方法が思いつくなんてカムイ姉さんも大賢者様に勝るとも劣らないのです。」


「う~ん、否定は、できないかな?大賢者さんの考えってボクも頷けるところもいくつかあったし。」


っとそこまでカムイとシャルが話していたところで蚊帳の外にいたクルルが割り込んでくる。


「カムイ姉、シャル姉、クルルのわからないような話をするのはやめてほしいの。」


「あぁ、ごめんごめん。シャル、その話はまた今度クルルにボク達の事をもっとしっかり話した後にしようか。クルルも時間があればゆっくりと話していくからそれで我慢してくれないかな?一から話すと長くなりそうなんだ。」


「わかったの。今日の所は許してあげるの。」


「うん、じゃあ始めようか。まず最初はゴブリンからでそこから少しずつ数を増やしたり、種類を変えたりしていくからね。今日の目標はこのグラントの町の周辺に生息していて二人の実力で倒せるものと一通り戦ってみることにしようか。ボクはボクで行ける所まで行ってみようかな?とりあえず順番はシャル、クルル、ボクでその後三人で連携を含めて。その後少し休憩を挟んでまたボクが戦ってからシャルに戻るっていう形で行くよ。」


「わかったのです。」「はいなの。」


「あと、今日に限り幻影は倒したら消えるように設定しておくからね。」


カムイはゴブリンの幻影を消し、設定を変更していく。

設定の魔道具の横に設置されたデータベースのような魔道具を使い、様々なケモノを設定に組み込んでいく。

一応カムイとはいえこの設定には少し時間がかかる為、シャルとクルルには少しの間動いていてもらう。

三十分後その設定も終わり、カムイは最後の設定を打ち込んだ。


「シャル、クルル。設定終わったよ。十分くらい休憩したら始めようか。」


「「わかったの(です)。」」



十分後、カムイは立ち上がり、休憩している二人に声をかける。


「さて、ある程度疲れはとれてそうだし始めようか。シャル、大丈夫?」


「いつでも行けるのです。」


「じゃあ、出すよ。最初に言った通りゴブリン一匹。強さも普通だよ。」


「了解なのです。」


シャルの返事を聞くや否や部屋の一部が歪みゴブリンが出現する。


「起動」


カムイのその声でゴブリンに仮初の意志が宿る。

ゴブリンはシャルに向かっていき、シャルは短槍を構え対峙する。

カムイ達の外に出るに向けての戦闘訓練が本格的に始まった。




誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。


感想とかも頂けるとうれしいな・・・・・。



まだ町の外の依頼を受けれない・・・。

でも、仕方ないじゃないですか。一応習ったことがあるとはいえ武器をあまり振ったこともないクルルが外に出たら痛い目に合うか死んでしまう光景しか浮かばないんですもの。

ならしっかりと戦闘についてカムイが教える描写を書いてからの方が作者的には後味がいいのです。

という言い訳ですがまあもう少しすれば外の依頼の話になるはず・・・そう思いたいです。

作者が途中からノリで他の話を書かないように祈っていてください。

長々と失礼いたしました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ゴブリンの情報を乗せておきます。


・・・・ゴブリン・・・・


世界のどこを探してもゴブリンより弱いケモノは居ないといわれている魔獣。ただしゴブリンは生まれた時から瘴気を多量に持っていることから魔物と言われることが多い。発生の仕方は様々で魔力や瘴気が集まって生まれることもあれば他種族で人型の雌を苗床として生まれることもある。成長速度、繁殖速度が異様に早く、“ゴブリンを一匹見つけたら十匹は居ると思え”という言葉も存在するくらいである。

他のゴブリンより強い個体が現れることもあり、その個体が成長していくと様々な進化をしていくので要注意。そういう個体は見つけたらすぐに始末するのが推奨される。


ゴブリンの進化予測

正当枠:ゴブリンナイト、ハンター、メイジ、プリースト、ジェネラル、ロード、クイーン、キング、エンペラー等々

派生枠:ホブゴブリン、オーガ


※他にもゴブリンソードマン、アーチャー、ガードマンなどもいるがこれに関してはゴブリンがただ装備を持っているだけという説もある。

またゴブリン以外にもそう呼ばれる個体もいる為、これは世界の謎ともいえるだろう。


(世界のケモノ図鑑第一巻より抜粋)


今後も思いついたらこんな感じで乗せていくかもしれません。

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