模擬戦
「最初に、二人の実力がどれだけあるか確かめてみようか。魔術とかは後でやるとしてまずは武器を使った戦闘からかな。ルールは近距離戦で物理攻撃のみ、自身を強化する系統の魔術は使えるなら使用可、範囲は床に書かれた枠内のみで、開始位置はそことそこの線から、ボクは最初は受けるだけである程度受けたら反撃するって形でいくとして、降参するか武器を手放すのが敗北の条件、でどうかな?」
カムイが開始位置として示したのは部屋の中央に書かれた線二つ。間隔は大体シャルの持つ短槍の間合いを基準としてそれより少し広いくらい。シャルが一、二歩前に出れば間合いに入るくらいである。
「構わないのです。全力で頑張るのです。」
「クルルはその辺りはあまりよくわからないから任せるの。でも精一杯やらせてもらうの。」
「うん、その意気だよ。まずはシャルからかな。」
「わかったのです。胸を借りるのです。」
「うん、じゃあクルルは枠の外に出て少し離れて見ててね。」
「わかったの。」
「じゃあ、少しだけ準備運動をしたら始めようか。」
カムイに言われてクルルは枠の外に出て距離をとる。
枠の中に残ったのはカムイとシャルでクルルが出た後から指定の位置について得物を取り出し、素振りをしている。
カムイは手甲・・・ではなく『収納庫』から刃引きされた刀。カムイはその刀を両手で構えて振り、途中からは右手で、しばらく振ったら左手で、と繰り返していた。
シャルの方はいつもと同じ短槍で穂先の部分に表面が皮で覆われた鞘がつけている。短槍に鞘を付け終えた後は両手で構え、突きの動作から払い、そこから槍を戻してまた突きから、と同じ動作を繰り返していた。
二人はそれを数分ほど続けていると納得がいったのかどちらからともなく素振りをやめる。
「どう?問題はなさそう?」
「はいです。大丈夫そうなのです。カムイ姉さんは・・・・大丈夫そうですね。あまり見たことのない得物ですけどそれは何です?」
「ああ、これはボクの故郷でよく使われていた武器の一種だよ。扱いは難しいけど、技術さえあればかなり汎用性があるとボク思っているし、結構使う機会も多かったから慣れているからね。」
「確かに素振りを横目で見いただけですが振りなれている感じがしたのです。」
「そう?ありがと。じゃあ、時間ももったいないし早速始めようか。」
「はいです。よろしくお願いするです。」
「うん、よろしくお願いします。クルル、始めの合図だけ出してもらっていい?」
カムイとシャルはそれぞれの位置であいさつをして構えをとる。
「わかったの。二人とも頑張ってなの。・・・・では、よーい、始めなの。」
ダッ
クルルの掛け声で次第に重心を低くしていったシャルがカムイに向けて飛び出す。
一歩、二歩とカムイに近づき、自分の間合いに入るとシャルはカムイに向けて二度突きを放った。
カムイはそれに合わせて半歩下がり、半身になる。
するとシャルの放った突きの片方はカムイの抜ける。もう片方に関しては向かってくる槍の穂先の中心から少しずらした位置に添わせ受け流す。
シャルは受け流された槍を少し引き、薙ぐ。それをカムイは刀で受け止める。刀と槍の穂先が衝突し穂先が跳ね返る。シャルはその反動を利用し、後ろ足を軸にして一回転してからバックステップで下がり元の位置に戻る。カムイはその場で構えを直した。
「うん、だいぶ動けるみたいだね。突きの際にも重心移動はしっかりできているし、それを対応されてもリカバリーも出来てる。でもまだまだ動きにアラがあるし攻撃が直線的過ぎるから対処されやすいけどそれは経験次第だね。これなら充分にやれそうだね。ところで魔術とかは使っているの?」
「ありがとうです。一応軽く身体強化はしているのです。」
「もう少し行けそう?今度はこっちから仕掛けていくよ。」
「わかったのです。いつでもきてください、なのです。」
カムイの言葉にシャルは構え直し返事をする。
「よし、じゃあ遠慮なく。・・・・フッ」
シャルの返事を聞いたカムイは脱力すると一気に飛び出す。
シャルはその動作に一瞬反応が遅れるが、それでも何とか動きに合わせ突きを繰り出す。
しかしそれを読んでいたカムイはそのままの動作で後ろへ跳ぶ。
そして着地した後ろ足を蹴りだし一歩でシャルの目の前へと迫り、片手で突き出された槍の柄を持ちもう片方の手で持った刀を首筋に添える。
「はい、チェックメイト。まあこんなところかな?」
「参ったのです。一気に間合いを詰められてしまったのです。」
シャルのその言葉でカムイは刀を引き少し後ろに下がる。
「うん、でも反撃ができたからいいんじゃないかな?一応ある程度実力がないと反応も出来ずに終わるような速度でやったからね。ましてやそれに反撃できる時点でかなり高得点かな。」
「それならよかったのです。でもいずれ遅れずにしっかりと反撃して一撃くらいは入れれるようになりたいのです。」
「うんうん、その意気だよ。・・・っと、とりあえずシャルの実力はある程度分かったかな。次はクルルいってみようか。」
シャルを励ますと、枠の外で見学していたクルルに声をかける。
「はいなの。頑張るの。」
カムイの声を聞くとクルルは意気揚々と枠の中に入ってきた。
「じゃあ、シャルは外に出ていてね。あと開始の合図もよろしく。」
「わかったのです。」
シャルはクルルと入れ替わりで枠の外に出てクルルの見学していた位置に行った。
「じゃあ、まず最初にクルルは武器はどうする?前に渡したのと同じような短剣でいい?」
「それでいいの。重い武器はまだ使えそうにないし、速さを落としたくないの。だからその分手数を増やしたいの。」
「わかった。じゃあ武器は短剣にして、さらに手数をもっと増やしたい時用にもう一本持っておこうか。とりあえず二本同時に扱うのは難しいし、教わってないだろうからそれは後で教えるとして今は短剣一本でやってみようか。いきなり間合いが広い相手とやるのはつらいだろうしボクも同じ短剣をを使おうかな?」
カムイはそう言うと手に持っていた刀を『収納庫』にしまい短剣を二本取り出す。
確認のために鞘を外し刃引きされているのを確認する。その短剣は二本とも同じ素材でできているようでどちらも銀色に輝き、光の具合で緑が混ざった銀の光を反射していた。
「じゃあの短剣を使ってやろうか。切れないけど当たると痛いから気を付けてね。」
「わかったの。」
クルルはカムイが差し出した短剣を受け取ると振り始める。
その振り方は基本に沿っていたが、振る際に力が入りすぎているのかどこかぎこちない動きになっていた。
それを見たカムイはある程度離れ、クルルと同じように、いやそれよりも洗練された動きで振る。
「クルル、素振りを見てる限り最低限振り方は知ってるみたいだからあとはある程度振る力を抜いててみて。そうすればもっと楽に振ることができると思う。」
「はいなの、やってみるの。すぅ~、はぁ~。」
カムイの助言に肯いたクルルは一度深呼吸をしてからまた振り始める。その動きはさっき振っていた姿とは違い、スムーズに動き、素振り自体に流れが出てきていたのだった。
「よし、そろそろいいかな?じゃあ、始めようか。」
クルルの素振りを見ていたカムイは、クルルの体からある程度力が抜けて動きがスムーズになっているのを確認するとクルルに精子の声をかける。
「わかったの。よろしくお願いしますなの。」
「よろしくお願いします。じゃあシャル合図お願いね。」
「わかったのです。・・・・3、2、1、はじめっ!」
シャルの合図でクルルはカムイに向かって飛び出す。先ほどのシャルとは違い、重心を落とさずに行くが、体を少し前に倒しながら進んでいるためその分加速していく。
数秒もかからずにカムイの近くまで来て短剣を持つ右手を振りかぶり一撃をカムイに放つ。
カムイはそれに対し短剣で受けようとするがやめ、半歩下がる。
クルルの腕は空振りしカムイには当たることはないがその手に短剣を持っていない。
クルルは振り下ろした手にもう片方の手で持っていた短剣を持ち替えさっきとは逆側に放つ。
この攻撃にはカムイも防ぐべく短剣をクルルの短剣が通る軌跡を邪魔するように置く。
クルルの短剣はカムイの短剣に吸い込まれ両者の短剣が衝突すしクルルの方が弾かれてしまい、その反動に耐えきれずにクルルは短剣を手放してしまった。
「終わり、だね。クルルなかなか良かったよ。」
「ありがとうなの。でも悔しいの。二撃目でカムイ姉を驚かすことができると思ったのに全然意味がなかったの。どうしてわかったの?」
「いや、まあ確かに予想外の攻撃だったかもしれないけどあれは、ねえ。一応そういう戦い方をする人を見たことがあるというか、やったこともあるというか・・・。まあそんなところかな。でもクルルはどうしてその攻撃をしようとしたの?」
「昔、教えてもらった時先生にやられたことがあってクルル自身が驚いたからカムイ姉も少しは驚くと思ったの。」
「なるほどね。先生に、か。まあそれは置いておくとしても、それは刃のついたものでやったりとか実際の戦闘では禁止ね。もし失敗したらもう片方の手が傷ついたり、敵を目の前に丸腰になりかねないからね。やるとしても宴会芸みたいなものと思っておくこと。いいね?」
「は~いなの。」
「あと二撃目はもっとしっかりと握っていた方が良かったかな。体の力を抜くとは言ったけど握る力まで抜くとさっきみたいに武器がすっぽ抜けるからね。まあそれ以外は及第点かな。瞬発力もあるしさっき教えたことは一部を除いてしっかりとできているみたいだしね。」
「ありがとうなの。そういってくれると嬉しいの。」
「どういたしまして。さて、とりあえず二人の実力もわかったし本格的に教えていこうかな。まずはクルルから。シャルはボクがクルルを教えている間は自分でやっててもらっていい?」
「了解なのです。」
「じゃあクルル、始めようか。まずは短剣二本での戦い方だね。・・・・」
こうして二人は昼休憩に入るまでカムイの指導のもと戦い方を学んでいくのだった。
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