第75話 便器を増やすなら、汲み取り人も増やしてください
便器。
増える。
利用者。
増える。
回収槽。
増える。
でも。
汲み取りをする人は。
増えていません。
今。
動いているのは。
ダス。
一人です。
「回収する人が足りなくなったら?」
フィルの言葉。
直人は。
すぐ。
答えなかった。
◇
机。
回収予定表。
広げる。
第一便所。
第二便所。
第三便所。
周辺長屋。
店舗。
そのほか。
既存の便壺。
◇
ダスが。
一人で。
回っている。
◇
「今、一日でどれくらい回れます?」
直人が聞く。
ダス。
腕を組む。
「場所による」
「距離?」
「距離もだ」
◇
量。
違う。
容器。
違う。
入口。
狭い。
広い。
階段。
ある。
ない。
◇
「同じ一か所でも」
ダスが言う。
「便壺二つと、回収槽一つじゃ全然違う」
「一日の件数だけでは測れない」
「そういうことだ」
◇
フィル。
記録。
しようとして。
止まる。
「じゃあ、何で管理します?」
◇
ダス。
「時間だな」
◇
積む。
運ぶ。
抜く。
閉じる。
洗う。
処理先へ。
運ぶ。
◇
一日。
使える時間。
限られる。
◇
「荷車の容量もありますよね」
「ある」
「処理先へ行く回数も」
「増えれば時間を食う」
◇
直人。
紙へ。
三つ。
書く。
回収時間。
荷車容量。
処理先往復。
◇
「この三つが限界?」
フィル。
「少なくとも今は」
◇
便所。
一つ。
増える。
回収場所。
一つ。
増える。
だけ。
ではない。
◇
回収槽。
大きい。
利用者。
多い。
なら。
回収頻度。
上がる。
◇
つまり。
一つ増えて。
二つ分。
三つ分。
負担になることもある。
◇
「今のまま、あと何か所増やせます?」
オグが聞く。
ダス。
顔をしかめる。
「その聞き方じゃ答えられん」
「また?」
「場所も量も分からんのに、何か所って言えるか」
◇
直人。
頷く。
「その通りです」
◇
便器。
置ける。
から。
回収できる。
ではない。
◇
「じゃあ今後」
フィル。
「便所を増やす時、回収側も確認する?」
「必須です」
◇
直人。
商会。
新しい。
確認項目。
追加。
◇
新設前確認
回収先。
回収担当。
想定利用量。
回収頻度。
搬出経路。
荷車進入可否。
◇
オグ。
「便器を売る前に、汲み取り人へ聞くのか」
「はい」
「面倒だな」
「回収できない便所の方が面倒です」
◇
ダス。
「それは本当だ」
◇
その時。
モルド。
「でも」
「はい」
「ダス一人じゃ増やせないなら、もう一人雇えばいい」
◇
ダス。
即座に。
「誰でもいいわけじゃない」
◇
「汲むだけだろ?」
「じゃあ明日やるか?」
モルド。
黙る。
◇
フィル。
少し。
笑う。
◇
ダス。
「満杯近い槽を、何も考えずに開ける」
「はい」
「こぼす」
「はい」
「荷車に積みすぎる」
「はい」
「坂で倒す」
◇
オグ。
「嫌だな」
「嫌で済めばいい」
◇
回収。
力仕事。
だけではない。
◇
蓋。
開ける。
順番。
槽内。
状態。
臭気。
流入。
止まっているか。
◇
運搬容器。
閉まっているか。
荷車。
偏っていないか。
洗浄場所。
飲み水から。
離れているか。
◇
「前にも」
直人が言う。
「便壺の運搬で決めましたね」
フィル。
頷く。
◇
一人で無理に運ばない。
飲み水の近くで洗わない。
こぼれたら、そのままにしない。
◇
回収人。
増やす。
なら。
そこ。
教える。
必要。
◇
「候補、います?」
直人が。
ダスへ。
聞く。
◇
ダス。
少し。
考える。
「一人いる」
「誰です?」
「ベルクのところで手伝ってる若いの」
◇
フィル。
「名前は?」
「ロイ」
◇
昼。
第一便所。
◇
ベルク。
奥。
声をかける。
「ロイ!」
◇
出てきた。
若い男。
二十前後。
細身。
でも。
腕。
しっかり。
◇
「何です?」
「ダスがお前を使いたいってよ」
「は?」
◇
ダス。
「使いたいじゃない」
「教えたい」
◇
ロイ。
さらに。
困る。
「汲み取り?」
「嫌なら断れ」
「嫌っていうか……」
◇
臭い。
汚れ。
重い。
仕事。
◇
町で。
人気。
ある。
わけではない。
◇
「給金は?」
ロイ。
先に。
聞いた。
◇
ダス。
「そこは大事だな」
◇
直人。
横。
フィルを見る。
「商会だけで決めない方がいいですね」
「はい」
◇
回収。
便所。
複数。
関わる。
◇
第三便所。
商会。
だけの。
仕事。
ではない。
◇
「まず」
直人。
「仕事の内容を説明しましょう」
◇
ロイ。
聞く。
◇
便槽確認。
蓋。
開閉。
汲み取り。
運搬。
容器洗浄。
荷車。
積載。
処理先。
記録。
◇
「記録?」
ロイ。
「いつ、どこから、どれくらい回収したか」
「毎回?」
「毎回です」
◇
ダス。
「俺は今まで頭で覚えてた」
「それでは二人になった時に共有できません」
◇
ダス。
「分かってる」
◇
人。
一人。
なら。
頭。
一つ。
◇
二人。
なら。
記録。
必要。
◇
誰が。
どこ。
回った。
◇
次。
いつ。
必要。
◇
相談線。
どこ。
近い。
◇
口頭だけ。
では。
抜ける。
◇
フィル。
回収表。
作る。
◇
施設名。
確認水位。
回収相談日。
予定回収日。
実施日。
回収担当。
部分回収・全回収。
異常。
◇
ロイ。
「俺、字そんなに得意じゃない」
「記号でもいいです」
フィル。
「場所と日付は僕が最初に書きます」
◇
ダス。
「全部やらせるなよ」
「やらせません」
直人。
「最初は同行です」
◇
いきなり。
一人。
任せない。
◇
第一段階。
同行。
見る。
◇
第二段階。
蓋。
確認。
水位。
確認。
◇
第三段階。
容器。
運搬。
◇
第四段階。
部分回収。
◇
最後。
一人で。
回収。
◇
「段階多くない?」
ロイ。
「事故るより少ない」
ダス。
◇
ロイ。
黙る。
◇
少し。
考える。
◇
「給金がちゃんとしてるなら」
「やる?」
「やってみる」
◇
ベルク。
「俺は反対しない」
「助かります」
◇
でも。
直人。
一つ。
確認。
「ロイさんが第一便所の仕事を抜ける時間は?」
◇
ベルク。
「あ」
◇
人。
増やす。
つもり。
だった。
◇
でも。
ロイ。
今。
別の仕事。
ある。
◇
そこから。
抜けば。
第一便所側。
人手。
減る。
◇
ダス。
額。
押さえる。
「またか」
◇
負担。
移す。
だけ。
では。
駄目。
◇
直人。
「研修時間を固定しましょう」
◇
毎日。
全部。
ではない。
◇
最初。
週。
三回。
◇
午前。
回収が。
集中する時間。
だけ。
同行。
◇
第一便所。
忙しい時間。
避ける。
◇
ベルク。
「それなら回せる」
◇
ダス。
「最初はそれでいい」
◇
フィル。
書く。
◇
回収補助研修――ロイ。
週3回。
ダス同行。
単独回収禁止。
◇
「禁止まで書く?」
ロイ。
「書きます」
◇
翌日。
第一回。
同行。
◇
場所。
第二便所。
◇
ダス。
「まず何する」
ロイ。
「蓋を開ける」
「違う」
◇
ロイ。
「え」
◇
「流入止まってるか確認」
◇
サデル。
入口。
一時。
利用停止。
◇
札。
回収作業中。
◇
その後。
回収槽。
周り。
人。
いない。
確認。
◇
蓋。
少し。
開ける。
◇
いきなり。
顔。
近づけない。
◇
ロイ。
「臭い」
「当たり前だ」
◇
ダス。
「でも臭いだけ見てるんじゃない」
「何を見る?」
「泡」
◇
槽。
表面。
異常。
泡立ち。
なし。
◇
「急に発酵みたいなのが強い時は?」
ロイ。
「開けっぱなしにしない?」
「そうだ」
◇
直人。
横で。
聞く。
◇
ダス。
ちゃんと。
持っている。
◇
言葉に。
していなかった。
だけ。
◇
「フィル」
「はい」
「今のも記録してください」
◇
ダス。
「全部?」
「新人へ渡すためです」
◇
ダス。
少し。
照れたように。
鼻。
鳴らす。
◇
回収。
開始。
◇
ロイ。
容器。
持つ。
◇
一つ目。
重い。
◇
「腰で持つな」
ダス。
「足使え」
◇
二つ目。
積む。
◇
「片側だけに置くな」
「荷車が傾く?」
「そうだ」
◇
三つ目。
途中。
ロイ。
急ぐ。
◇
「止まれ」
ダス。
◇
「何?」
「蓋」
◇
運搬容器。
閉まり。
甘い。
◇
ロイ。
顔。
青くなる。
◇
「そのまま坂行ったら?」
「こぼれる」
「そういうことだ」
◇
フィル。
記録。
◇
容器蓋確認――積載前必須。
荷重左右均等。
一人で無理な重量は二人。
◇
回収。
終わる。
◇
ロイ。
汗。
かなり。
◇
「どう?」
オグ。
見に来て。
聞く。
「便器作る方が楽じゃない?」
ロイ。
◇
直人。
「どっちも必要です」
◇
便器。
置く人。
◇
水。
用意する人。
◇
掃除。
する人。
◇
汚物。
運ぶ人。
◇
一つ。
欠ければ。
便所。
続かない。
◇
三回目の。
同行。
◇
ロイ。
先に。
言う。
「流入停止、確認」
◇
周囲。
確認。
◇
蓋。
ゆっくり。
開ける。
◇
水位。
記録。
◇
容器。
蓋。
確認。
◇
荷車。
左右。
確認。
◇
ダス。
少し。
離れて。
見る。
◇
「どう?」
フィル。
小声。
「まだ一人は早い」
ダス。
「でも?」
「覚えは悪くない」
◇
それで。
十分。
◇
その週。
終わり。
◇
第三便所。
第一週。
運用記録。
まとめ。
◇
外部利用。
増加。
◇
第二便所。
利用増加。
◇
回収回数。
増加。
◇
でも。
相談線。
使った。
◇
部分回収。
使った。
◇
ロイ。
補助。
開始。
◇
ダス一人。
だけ。
だった。
回収。
◇
少し。
形。
変わり始めた。
◇
フィル。
まとめ。
読む。
「じゃあ次の便所、増やせます?」
◇
直人。
「まだです」
◇
「まだ?」
◇
「ロイさんは補助です」
「はい」
「単独回収できません」
「はい」
「処理先の受入量も確認していません」
◇
全員。
止まる。
◇
ダス。
「そこまで見るのか」
「回収量が増えたら」
直人。
「最後に持っていく場所も増えます」
◇
汲み取り人。
増やす。
◇
荷車。
増やす。
◇
でも。
処理先。
同じ。
◇
そこが。
受けきれなければ。
◇
また。
別の場所で。
止まる。
◇
直人。
回収予定表。
閉じる。
◇
便器を。
増やす。
前に。
◇
見る場所。
また。
一つ。
増えた。
◇
最後に、どこへ持っていくのか。
便所の増加に対して、汲み取り担当がダス一人では限界が見え始めました。
そこで今回は、単純に「人を一人増やす」のではなく、
回収時間
荷車容量
処理先への往復
を回収能力の基準として整理。
さらに、ロイを回収補助として育て始めました。
ただし、いきなり単独では任せません。
同行
水位確認
運搬
部分回収
と段階的に覚えます。
これで回収側にも少し余裕が見え始めました。
しかし、回収する人を増やしても、その汚物を最後に受け入れる場所の容量が足りなければ意味がありません。
次は、町の便所から集めたものを最終的にどこへ持っていくのかを確認します。




