第67話 一回いくらと決める前に、誰が払うかを決めてください
第三便所。
試験運用。
合格。
次は。
営業として。
誰に。
いくらで。
使ってもらうかです。
第三便所。
入口。
昨日までの。
試験運用中。
その札は。
外されている。
代わりに。
白い板。
空白。
◇
オグが。
板を見る。
「で、いくらにする?」
モルド。
「外から来る奴は、小銅貨一枚でいいだろ」
直人は。
すぐには。
書かなかった。
「無料では?」
フィルが聞く。
モルドが。
首を振る。
「無理だ」
「水だけなら、それほどではないですよね」
「水だけならな」
◇
直人は。
試験記録を。
開く。
「一利用増えると、洗浄水が増えます」
次。
「汚れれば、清掃も増えます」
次。
「回収槽も早く埋まります」
次。
「汲み取りも早まります」
さらに。
「点検する人の手も増えます」
◇
オグ。
「水は勝手に桶へ入らない」
「はい」
「床も勝手にきれいにならない」
「はい」
「回収槽も勝手に空にならない」
「そういうことです」
◇
一回。
流して。
終わり。
ではない。
使える状態を。
次の日も。
続ける。
そこへ。
費用がかかる。
◇
直人。
紙へ書く。
宿泊客――宿泊料に含む。
酒場客――基本無料。
外部利用――小銅貨一枚。
「第一週は仮料金です」
「一週間で見直す?」
「はい」
◇
その時。
入口の外。
「昨日は無料だったぞ」
声。
若い荷運び人。
その後ろ。
市場仕事の女。
職人。
試験中。
第三便所を使った者たち。
◇
「今日から金を取るのか?」
「通常運用になるので」
「宿の客は?」
「宿泊料に含まれます」
「酒場の客は?」
「店側が負担します」
「俺たちは便所だけだから、一回ずつ?」
「はい」
◇
荷運び人。
「一回流すだけだろ」
モルド。
眉を寄せる。
「その一回の水を誰が用意する」
男。
黙る。
「汚れた床を誰が拭く」
「……店だろ」
「槽が埋まったら?」
◇
オグ。
「汲み取りを頼む」
「それも金?」
「人が動く」
◇
直人。
「払う理由は、それです」
男。
見る。
「便器に座る権利へ値段を付けたいわけではありません」
「じゃあ?」
「使える状態を続けるためです」
◇
そこへ。
階段から。
宿泊客。
降りてくる。
「外の人間も使わせるのか?」
荷運び人。
「何が悪い」
「私は宿代を払っている。朝、外から何人も並んでいたら待つのか?」
「こっちだって我慢できない時がある」
「この宿の便所だろ」
「使える便所がここにしかない時はどうするんだ」
◇
声。
重なる。
モルド。
「一人ずつ話せ」
◇
直人。
紙へ。
まず。
通常時。
書く。
通常時――宿泊客、酒場客、外部利用者の順。
荷運び人。
「金払っても最後?」
「通常時は」
「不公平だろ」
「第三便所は、まず宿と酒場の設備として整備しています」
「なら外の人間を入れるなよ」
◇
「全部断れば」
直人。
男を見る。
「外の人の排泄先が別へ移ります」
路地。
川沿い。
混んだ。
共同便所。
荷運び人。
黙る。
◇
その時。
市場仕事の女が。
聞く。
「じゃあ腹痛でも最後?」
「そこは別です」
直人が答えた。
◇
紙。
新しい枠。
作る。
緊急時。
ここで。
直人は。
一度に。
整理した。
◇
「緊急時は、通常の順番を使いません」
フィル。
筆を構える。
「対象は?」
「腹痛。体調急変。子ども。高齢者。介助が必要な人」
「宿泊客か外部利用者かは?」
「見ません」
「料金は?」
「後です」
◇
直人が。
紙へ。
順に書く。
緊急時――所属に関係なく優先。
料金確認より利用を先行。
支払い可能なら利用後に支払い。
支払い困難なら免除利用として記録。
緊急利用の理由と件数を記録。
◇
宿泊客。
「私が並んでいても、外の人が腹を押さえていたら先?」
「はい」
「宿代を払っていても?」
「はい」
◇
荷運び人。
「俺が金を持ってなくても?」
「緊急なら先に使ってください」
「その後?」
「払えるなら払う。難しければ免除記録です」
◇
モルド。
「名前は?」
「取りません」
「逃げ放題にならないか?」
「個人名を残さないと使えない仕組みにすると、本当に必要な人まで避けます」
◇
「緊急って嘘をつく奴は?」
荷運び人。
「出ると思います」
「じゃあどうする」
「その場で長い審査はしません」
◇
排泄。
待たせて。
事情聴取。
している間に。
入口で。
事故。
それでは。
意味がない。
◇
「だから」
直人が言う。
「緊急利用は使わせて、後で件数を見ます」
フィル。
書く。
緊急利用数。
免除利用数。
理由分類。
苦情・要望。
◇
市場仕事の女。
「毎日たくさん免除になったら?」
「第一週の見直し対象です」
宿泊客。
「緊急扱いで私たちが何度も待たされたら?」
「それも記録します」
◇
これで。
緊急時。
一度。
整理。
終わり。
通常。
順番あり。
料金あり。
緊急。
順番を変える。
料金確認は後。
記録は残す。
◇
直人は。
料金欄へ。
戻る。
宿泊客――宿泊料に含む。
酒場客――基本無料。
外部利用――小銅貨一枚。
緊急時――別ルールを適用。
「第一週は、これで行きます」
◇
市場仕事の女。
「七日後は?」
「利用数、水、清掃、回収槽、汲み取り、免除利用、苦情を確認します」
「小銅貨一枚も変える?」
「必要なら」
◇
料金。
決定。
通常時の優先。
決定。
緊急時。
決定。
入口の対立。
ここで。
終わり。
◇
次。
利用時間。
外部利用。
6時〜22時。
宿泊客。
夜間利用可。
◇
次。
利用数。
フィルが。
三日分の。
試験記録を並べる。
「通常運用は、どこまで広げます?」
「まず20利用で中間確認です」
20利用――回収槽水位確認。
◇
オグ。
「20利用で止める?」
「止めません」
「試験と同じ数字だから?」
「そこまでは三日間、実際に確認できています」
◇
三日間。
毎日。
20利用。
排水。
回収槽。
清掃。
設備。
そこまでは。
実績あり。
◇
「その先は?」
「第一週は30利用で、新規外部受付を止めます」
フィル。
「なぜ30利用?」
◇
モルド。
「20利用まで確認したなら、20利用で止めればいい」
「それだと、通常運用でどこまで広げられるか分かりません」
「なら40利用?」
「一気に倍へは増やしません」
◇
直人。
三日目。
記録。
指す。
「確認できたのは20利用です」
第一週運用表。
「そこから、まず10利用だけ広げます」
◇
「10利用?」
「20利用で一度、水位を見ます」
「問題なければ?」
「21利用目以降を続けます」
「それで30利用まで」
「はい」
◇
フィル。
「20利用は確認済み範囲」
「はい」
「そこで中間確認」
「はい」
「問題なければ、さらに10利用だけ増やして様子を見る」
「はい」
◇
オグ。
「最初から30利用まで使わせるわけじゃない」
「違います」
「20利用で危なければ?」
「そこで止めます」
◇
フィル。
書く。
20利用――中間水位確認。
異常なし・水位余裕あり――継続。
◇
モルド。
「でも30利用で外だけ止める理由は?」
直人は。
宿の階段を見る。
「その後も、宿泊客と酒場客が使います」
◇
昼。
外部利用。
夕方。
酒場客。
夜。
宿泊客。
全部。
同じ。
回収槽。
◇
「昼の外部利用だけで」
直人が言う。
「夜の分まで余裕を使い切れません」
「30利用なら必ず残る?」
「必ずではありません」
「なら?」
「だから20利用で実際の水位を確認します」
◇
人数。
だけでは。
判断しない。
20利用。
実物。
見る。
余裕。
あれば。
30利用まで。
外部受付。
広げる。
◇
フィル。
整理。
20利用――中間水位確認。
30利用――第一週の新規外部受付終了。
回収槽警戒線――全利用停止。
◇
「30利用が設備の限界?」
オグ。
「違います」
「槽の限界?」
「違います」
「試験済み20利用から、第一週だけ10利用分広げる線」
「はい」
◇
本当の。
設備停止。
人数ではない。
回収槽警戒線。
さらに。
漏水。
排水不良。
安全異常。
どれか。
発生。
即停止。
◇
「30利用前に警戒線へ来たら?」
「全利用停止」
「宿泊客も?」
「はい」
◇
逆に。
30利用へ。
達しても。
回収槽に。
余裕あり。
その場合。
新規外部受付。
終了。
宿泊客。
酒場客。
については。
水位を見ながら。
継続。
◇
緊急時の扱いは。
さっき。
決めた。
ここでは。
繰り返さない。
管理表には。
短く。
緊急時――別ルール参照。
それだけ。
◇
次。
清掃。
朝。
昼。
夜。
三回確認。
汚れ。
多ければ。
追加。
使う水。
必要分。
◇
第一週。
記録。
利用数。
洗浄回数。
使用水量。
清掃水。
回収槽水位。
料金収入。
免除利用数。
緊急利用数。
苦情・要望。
設備異常。
◇
利用者向け。
入口札。
必要なものだけ。
第三便所
外部利用 6時〜22時
外部利用料 小銅貨一枚
第一週は、当日の総利用が30利用に達した時点で新規外部受付を終了します
混雑時は宿泊客・酒場利用客を優先します
緊急の場合は管理者へ申し出てください
設備状況により早く受付終了する場合があります
◇
オグ。
札を見る。
「緊急時の細かい条件は書かない?」
「全部書くと読まれません」
フィル。
「管理側には?」
「別紙です」
◇
管理者用。
通常時――宿泊客、酒場客、外部利用者の順。
緊急時――所属に関係なく優先変更。
料金確認より利用を先行。
支払い困難時は免除利用として記録。
20利用――中間確認。
30利用――新規外部受付終了。
警戒線――全利用停止。
漏水・排水不良――即停止。
◇
フィル。
欄外。
30利用=設備容量上限ではない。
◇
若い荷運び人。
完成した札。
読む。
「緊急なら管理者へ」
「はい」
「そこへ行けば、また最初から説明?」
「いいえ」
直人。
管理表を指す。
「管理側のルールは決めてあります」
「金がない時も?」
「緊急なら、そのルールで扱います」
男。
頷く。
「分かった」
◇
宿泊客も。
札を見る。
「通常時は宿泊客優先」
「はい」
「緊急時だけ別」
「はい」
「それなら分かる」
◇
一つ。
緊急時。
という。
例外。
でも。
例外だからこそ。
その場の。
気分では。
決めない。
先に。
ルールへ。
しておく。
◇
モルド。
「これで開けられるか?」
直人。
管理表。
見る。
利用時間。
決定。
料金。
決定。
通常優先。
決定。
緊急時。
決定。
20利用。
中間確認。
決定。
30利用。
外部受付終了。
決定。
警戒線。
全利用停止。
決定。
◇
残る。
一つ。
「代替便所」
オグ。
止まる。
「……まだだった」
◇
回収槽。
警戒線。
漏水。
排水不良。
何か。
起きれば。
第三便所。
止まる。
その時。
宿泊客。
酒場客。
外部利用者。
全員。
どこへ。
行くのか。
◇
フィル。
通常運用表。
最後。
一行。
停止時代替便所――未決定。
◇
通常時。
誰を。
先にするか。
決めた。
緊急時。
どう。
例外を扱うか。
決めた。
料金。
決めた。
利用数。
決めた。
設備を。
止める条件も。
決めた。
◇
でも。
停止した後。
だけ。
まだ。
決まっていない。
第三便所。
通常運用へ。
あと。
一歩。
最後に残ったのは。
便所が使えない時の便所。
だった。
緊急時の優先ルールを一か所へまとめました。
通常時は、
宿泊客 → 酒場利用客 → 外部利用者
の順。
一方、緊急時は、
所属に関係なく優先
料金確認より利用を先行
支払い可能なら利用後に支払い
困難なら免除利用として記録
とします。
腹痛・体調急変・子ども・高齢者・介助が必要な場合などを想定し、入口で長く審査しない運用です。
以後の20利用・30利用・警戒線の説明では、緊急時について繰り返さず、**「緊急時は別ルール参照」**として扱う形に整理しました。




