2.執行の悪夢
書類を捌き終えた頃、狩諳の携帯に一件の着信が入る。
「はい、デルタ西日本総帥、荒瀬狩諳です。」
「今日も特別室に来い。"執行"だ。」
「…承知…いたしました。」
上層部からの電話だった。
震える声で了解の意を伝え、総帥しか入ることの出来ない特別室へと向かう。
ノックを4回。「入れ」という合図を聞き、「失礼します」と入室する。
狩諳を待っていたのは、2人の上層部だった。
「…またお前の部下が1人死んだ。シグマの二等兵2人と対峙したのち殉職した。」
低く重い声で上層部の1人が話し出す。
「何度目だ?幾度もお前に刻みこんだはずだが。部下が弱いのは上司であるお前の責任だ、そうだろう?」
「…申し訳ございません。全て俺の責任にございます…。」
狩諳は肯定して謝罪することしか出来なかった。
「分かっているのなら座れ。今日もお前が組織の重みをしっかり理解するまで、全て教えてやろう。」
狩諳はただ、奥歯を噛み締めて俯くことしか出来なかった。
震える声、竦む足、荒くなる呼吸。
今日も"執行"される。その事実が狩諳の身体を恐怖で縛り付ける。
言われた通り、用意された椅子に座る狩諳。
上層部の人間たちは狩諳が抵抗できないようにする。
次の瞬間、
「ぅ…ぁ…あ"ぁ"…っ…!」
狩諳の目からは涙が、口からは呻き声が、溢れ出す。
上層部の手によって、目を覆いたくなるような壮絶な拷問が行われた。
狩諳は自身が置かれた状況を即座に嫌という程に理解する。
そんな自分が嫌で憎くて、苦しみながら泣き続ける狩諳は、上層部に対して謝罪を繰り返すことしか出来なかった。
半刻程ほど経ったのち、ようやく"執行"から解放される。
説明をするのすら躊躇うほど酷く傷ついた狩諳は、床に這いつくばって震えることしか出来なかった。
過酷な制裁を施される狩諳は、繰り返し何度も襲いかかる恐怖に精神を砕き散らされて、ただただ耐え忍ぶことしかできないのであった。
この"執行"は、上層部が総帥に対して行う極秘のものであり、その過酷さゆえに、限られた幹部以外にはその実態すら秘匿されているのであった。




