第二話 「ーー私はアレックス。」
△▽△
「ーービ。おーい、起きろチビ。いつまで寝てんだ早う起きろ。」
ーーー!?誰!?男の声だ。ここは戦場。兵士の可能性が高い。
無我夢中で声の主から離れようとしたのだが、倒れた際に捻挫でもしたのか、足が痛くて動かせない。
何らかの術で周りを氷の壁で囲まれた。これで私に移動の選択肢はなくなった。
諦めて声がした方に視線を向けると、そこには猫が居た。
「...お父さん、お母さん、兄さん、ごめんなさい…私も多分ここで…」
思わず呟くと、
「いや、俺は危害を加えないから!大丈夫だから!!」
ーー声の主はこの猫?
壁越しに目を凝らして猫を見る。分かりずらいが、尾が二又に分かれている。
もしや、目の前のこの子は猫ではなくて…
「ーーケットシー?」
私の言葉に反応して、猫もどきは目を少し見開き、安堵したような表情を見せる。
「あぁ、ようやく分かったか。見る限りは思考能力も大丈夫そうだな。そう、俺はケットシーだ。お前さん、俺らの仲間だろう?あ、壁は落ち着いたら解除するからな。」
そう言い、周囲を見回し始めた。
彼の言う『仲間』というのは、恐らく『人ならざる者』という意味だ。
しかし、私は今この状況を理解できていない。
「ちょっと待って、この状況は何?あと、せめて名前くらいは名乗るべきだと思う。」
「ーあぁ~、確かに忘れてたな。俺はヒューゴってんだ。」
彼は毛づくろいをしながら話す。余裕だな。比較的安全ではあるけど、此処は戦場なのに。
「これはお前さんみたいな戦場付近に居る仲間の救護活動。んで、名前は?」
名前を訊かれたからには答えるしかない。
「ーー私はアレックス。」
私が答えたからか、ヒューゴは嬉しそうに尾をゆらゆらと揺らしている。
「そうか、アレックスか!いい名だな!アルって呼んでもいいか?」
目の前にいるこいつは、悪い奴ではないのかもしれない。
「お好きにどうぞ。」
「おうよ!ーーあ、そうだ。アル、今からお前さんを俺らのキャンプに連れていく。大丈夫か?」
「ー私に拒否権は無いような気がするけど。」
「確かにそれもそうだな。まぁ、運命だと思って受け入れてくれ。立てそうか?」
「足に捻挫があるから難しいと思う。」
「そうか。なら俺が浮遊魔術で現地まで運ぶ。愚図愚図してはいられないからな。すぐに動こう。」
ーー目の前の壁が溶けていく。




