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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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無法の秩序って素敵やん

「ぐらあっつってんじゃねーぞ!!。」

「おうっ!おうっ!おうっ!。」

「あぁーーん!。」

「いーい度胸じゃのう!おうっ!。」


 全然、安心できない展開になったよ。

 ビドリさんの案内でやって来た館。

 中に入るなり屈強なアーマーオウガの男たちに囲まれこの有様。

 !?ビキ!ビキビキ!?

 隣りを見るとシエンちゃんがキレる一歩前の顔をしてらっしゃるっ!

 うひゃー、どうぞお怒りを鎮めて下され!


「お前らいい加減にしろ!こう、うるさくちゃまともに話もできねーだろー。」


 部屋の奥から大物風吹かした奴が出てきましたよ。

 顔といい腕といい、身体の露出している箇所は傷だらけのオウガさん。


「ブガンさん。連れてまいりましたが、敵対勢力のものではありませんでした。」


「おう、ビドリよう、それはこれから俺様が調べて判断する事だ。いつからお前は部隊長になった?ああん?。」


 うわー、ドチンピラじゃないっすかー。痛々しいぐらいのやられ役ぅー。


「先に報告させていただきますが、彼らは友好的な相手には友好的であり、義を重んじる方々です。しかし、敵対するものにはそれなりの対処ができる力持つ方々です。どうか、ご自分が危うい橋を渡っておられる事をお忘れなく。」


「なんだと、この野郎。」


「まあまあ、ビドリさんありがとう。ここからはブガンさんと我々で話し合います。本当に、ありがとう。」


「わかりました。お力になれず申し訳ない。」


「テメー、ビドリよう。お前はどっちの味方なんだ?おう?。」


「まあ、その辺で。さあ、話し合いをしましょう。」


 俺はビドリさんとブガンの間に割って入った。

 ゴガッ!

 ブガンが無言で俺に裏拳を飛ばすが、いかんせんノロすぎるのでビドリさんと一緒に後ろに下がって余裕で回避をする。

 後ろに下がる俺とビドリさんに向かって勢い良く右手を開いたようになるブガン。


「きゃはははは!なんだそれは!ようこそいらっしゃいましたってか?それともキラーエイプのマネか?フン!フン!。」


 掛け声つきでブガンのマネをして笑うシエンちゃん。

 今度ビキビキ言うのはブガンの番だった。

 青筋立てて、それでもゆっくりと大物ぶってブガンは言う。


「久々にキレちまったぜ、表にでろ。」


「ぷっ、ぷふっ、いーっひっひっひっひー!勘弁してくれーー!!。」


 今度は俺が笑う番だった。どこの元ヤン会社員だよ!この野郎!笑わせやがって。


「あーーっ!!このヤロウ!どーゆーことだ!羨ましい!。」


 シエンちゃんが大きな声を上げてブガンに近づいて行った。


「こいつ、トモちゃんをこんなに笑わせるとは!やるじゃないか!おいっ!。」


 シエンちゃんは、頭三つ分は大きいブガンの肩に手をかけてグンッと下に引き寄せた。

 ブガンは膝を床につけて祈るような姿勢になってしまう。


「え?ちょっと?なに?。」


 急にしおらしい声を出すブガン。


「このヤロウ!急にかわいい声を出しおって!面白い奴だなー!な?。」


 膝立ちの姿勢のままシエンちゃんに頭をぐりぐりと撫でまわされるブガン。


「ちょっと、やめてー、やめて下さいよー。」


 ほとんど泣いてるような声のブガン。それでも笑って撫でまわすことをやめないシエンちゃん。

 首がブランブラン回って辛そうな顔をしているブガンを見かねたのか、ビドリさんが、すいません、もうそのくらいで勘弁しちゃあもらえませんか、と声をかけた。


「えー、なんだよー。我がいじめてるみたいな感じか?オモシロのコツを聞きたかっただけなのに。我が悪いのか?。」


 不服そうに言うシエンちゃんはちょっとだけ怖いよ。


「いやいや、シエンちゃんは悪くないよー。うん。悪くない。この場合、誰も悪くないよー。だけどね、ほら、ブガン君もちょっと偉そうな態度は良くなかったけどもう、白目むいちゃってるでしょ。ね?なにが面白かったのかは今度ゆっくり教えるから、ね?もう、その辺にしてあげて、ね?。」


「まあ、トモちゃんがそこまで言うのならば、良しとするか。」


 シエンちゃんに離されて糸の切れた操り人形みたいにへたり込むブガン君。


「ありがとねーシエンちゃん。やっぱ、シエンちゃんは大人だなあ。」


「くふふ、まあな。我は大人だからな。くふふふ。」


 なんか壁の中に来てから俺はこんなのばっかだな、まあまあ、お気を沈めてって。

 バイオレンス蔓延る無法地帯でユーはショックなはずだったのになあ。

 ふー、だがシエンちゃんはご満悦なので、ひとまずはオッケーとしよう。


「さてと、ブガン君がこんなになっちゃったから、次に偉い方はどなたですか?今度はちゃんとお話しがしたいんですけど。」


 アーマーオウガの男達がガヤガヤとざわつき始めた。

 すると外からバフフルルンッという音が聞こえてくる。


「あの鼻息の音は、デクラインさんのアーマーユニコーンの!!。」


「間違いねー!デクラインさんだ!。」


 もう、マッドな世紀末無法地帯マックス路線なのか、ハードラックとダンスるビキビキ路線なのかはっきりして欲しいところだが、まあボヤいていても仕方がない。

 トビラがバンと音を立てて開き、短く刈り揃えられた短髪に二本の角、きりっとした鋭い目つきの男が入ってきた。


「ブガンはどうした?。」


「はい!そこで倒れております!。」


「そうか。ブガンは相手の力量が測れず調子に乗る所があるからな。いい薬になっただろう。では、ビドリはいるか。」


「ハッ!。」


「お前が彼らを連れて来たのか。」


「そうであります。」


「ならばよし、お前はブガンよりは目が利くようだな。今日から本部付だ。所帯を持つんだろ?実入りも良くなるからな、家族は大切にしろ。」


「ありがとうございます!。」


「さてと、俺がこの街の長、デクラインだ。仲間が世話になった。」


 スパッと頭を下げるデクライン、周りの仲間たちがどよめいた。


「カパセリから話しは聞いた。子供たちを助けてくれておまけに、ジャイアントニュートの肉と本体の売却金までお駄賃だといってくれたそうだな。ああ、カパセリには会ってなかったか、キッパとルッパの母親で今度ビドリと所帯を持つことになったのさ。カパセリの亡くなった旦那も俺の部下だった。いわば、お前さんたちは、俺のファミリーの恩人ってわけだ。失礼があったならこの俺が頭を下げる、勘弁してくれ。」


「いや!失礼などなかったぞ!面白かったしな!頭など下げなくてよい!キッパとルッパの母さんは元気になったのか?。」


 シエンちゃんが聞く。


「ああ、大丈夫だ。お前さんたちに感謝していたよ。機会があったら是非お礼がしたいとな。」


「元気になったのなら良かったよ。」


 シエンちゃんは物言いがストレートなだけに嘘がないから、短い言葉でも本心から言ってるんだなと伝わっていいよ。


「ふふ、子供たちの言ってた通りだ。随分と親身に色々と教えてくれたようだな。俺からも感謝するよ。子供たちも、母さんを心配させることはしないって約束したんだっていい顔で言っててな。何の魔物はこうこうだから気をつけなきゃいけないんだって、ビドリさんに今夜教えるんだってよ、ビドリの奴が危ない目に合わないようにってよう、一生懸命俺に言うんだよ。あの小っちゃかったキッパがよ。ふふふ。」


 なによーー、デクラインさんめっちゃ良い人やーーん!言いながらちょっと鼻すすっちゃったりなんかして!もう!ワイルドなのに、純情派ってか!コンニャロメ!


「すまねーな、つい、嬉しくてよ。みっともねーとこ見せちまったな。さてと、本題に入るか。」


 居住まいを正すデクラインさん。

 部屋の空気がいっぺんに引き締まった感じがする。

 この人もなかなかの使い手なのだろう。


「ずばり聞くがお前さんたちゃ、ペイルンを追って来たんだよな?。」


「ああ、はい、そうです。」


 俺は正直に答えた。


「ふふふ、また、馬鹿正直な男だなあんたは。気に入ったよ。だったら、こっちも正直に答えなけりゃならないよな。俺の事を壁の中の支配者みたいに言うやつは多いが、俺はそんな事は望んじゃいないのよ。俺が望むのは最低限の秩序よ。信じられれねーとは思うがな、俺自身はデッケー重しみたいなもんだと思ってるのさ。軽いものが風に飛ばされないように置く、あの重しな。俺がいることで、この壁の中がちょっとやそっとの事で飛び散らないように、そうであれば良いと考えているのさ。だから俺は壁の中の統一なんて考えちゃいねーのさ。しかし、俺自身に力がなけりゃ重しにもなりゃしねえ。力を得て維持するためには金が要る。そんな訳で俺は壁の外とも繋がりを持ち色んな取り引きをしている。それは、キレイなものばかりじゃねえ。今回のペイルンのように壁の外で追われている者を匿い洗濯するのもそうした仕事のうちの一つだ。」


「ちょいといいでっか?洗濯とは、なんだんねん?。」


 サマ爺が質問した。


「身柄をキレイにすることよ。壁の外に残したそいつの財産等の回収、もしくは抹消。偽造通行証の発行、容姿の変更などだ。今回のペイルンについては偽造通行証の発行と容姿の変更が依頼内容だった。だったと言うのは、すでに要件は済ませ壁の外へ出て行ったからだ。これ以上の事は、ファミリーの恩人と言えど話すことはできない。すまない、恩人、恩人であるのにすまない。」


「いやいやいや、あんさんの気持ち、ようわかりましたで。あんさんの立場もありましょうからな!言えないんも仕方のないこっちゃ!!これこそプロの仕事でおます!!いやー、やっぱりプロの仕事は見ていて気持ちよーおますわな!そのぐらいでなくちゃあいけまへんわ!!あとは自分たちでやりまっさかい、ご心配のう。ありがとさんでした。あっ!そうだ、こっから一番近い壁の外への検問所教えてもらえへんやろか?。」


「それなら、この街の東門から街道沿いに進めばダセワンの街に繋がる検問所がある。」


「いやー、ありがとさんでした!しっかし、デクラインはんは口の堅いお方でっせ。ホンマ、おみそれしました。」


「ふふふ、それぐらいにしては貰えぬか。あんた、名前は?。」


「へい、サマカウイ言います。」


「ふふ、サマカウイか。何かあったら俺を尋ねてくれ。」


「ありがとさんです。では、失礼しまっさ。ほな、皆さん、行きまひょか。」


 あれよあれよと言う間にサマ爺はデクラインと話を進めてこの場はお開きになったようだった。

 家を出て、路地を歩き街を出て街道をしばらく進むとサマ爺が辺りを見渡す。


「ふー、大丈夫やな。ほな、皆さんお疲れはんでしたな。ペイルンの奴はデイアルアル公国行きの偽造通行証を持って逃げましたわ。髪を伸ばし色を赤に変え耳を隠し目の傷も消したようですわ。わての仕事もここまでになりまっさ。楽しい旅でしたわ。ほんま、おおきに!。」


「いやいやいや、サマ爺、どういう事よ?。」


「ああ、説明がいりますわなあ。デクラインはん、部下に外の組織の手の者がおるんでしょうな、あの場所ではああ言うしかなかったんですわ。デクラインはんも、わてのような技術を身につけておりなさったようでしてな、特定の合図を送ってくれはりましたんや。」


「特定の合図?。」


「へい、わかりやすい所ですと恩人、恩人と最後に2回繰り返しましたやろ、そしてその後、であるのに、と続けましたわな。どちらも不自然さは隠せませんでしたんで、まあ、デクラインはんもそっちが専門ではなかったんでっしゃろな。であるのに、と言った際に顎の下を押さえて人差し指を左に向けましたな、あれは前の言葉に意味をかける事を知らせるものでして。2回繰り返す、であるのに、そしてその後に左の胸に手をやった、その仕草は偽造通行証の事を言った時にした仕草。であるである、デイアルアル、通行証、てな具合ですな。」


「はへー!驚いたよ。さすがサマ爺!髪の毛の事とかは?。」


「それは仕草ですな。容姿の変更、と言いながら髪を触り直後に小指で赤い色のものを触る、と言った具合ですわ。まあ、口で直接伝えられない時に我々がやる事の初歩の初歩ですわ。」


「なるほどな。サマ爺が口が堅いだプロの仕事だと散々やったのは、内通者へのアピールだったのだな。ちょいとやりすぎではあったが。」


「でへへへ、ちょいとやりすぎましたわな。」


「最後にデクラインさんが言っていたのは?。」


「いやあ、あれは転職のお誘いでんな。」


「あら、サマ爺、どうされますの?火山の噴火と迷宮の話は?。」


「アルスお嬢、それは勿論探り続けまっせ。ただ、今の仕事も気に入ってまっからなあ、デクラインはんも悪い人じゃなさそうで、ホンマどないしまひょ。」


「きひひひ、サマ爺のやりたいようにやったらよかろう。どちらの仕事も自分で選んでやれば良かろうよ。さすれば、火山と迷宮の謎についても色々と情報が集まろうに。」


「そうしまっか!あんまり難しく考えないほうが良いのかも知れまへんな。」


「そうだぞ!楽しいと思える事をした方が良いぞ!。」


「ありがとな、シエンはん。シエンはんは確かにそう生きてまんな。」


「おうよ!。」


「ホンマに、いい仕事させて貰いましたで。皆さん、ありがとさん。」


「ああ、またね!サマ爺!。」


「あばよ!。」


「さようならー。」


「達者でな。」


 それぞれのあいさつで別れを告げ、我々はダセワンの街へ繋がる検問所を抜けたのだった。

 壁の中は思っていたより楽しい所だった。

 デクラインさん、ベルさん、キッパとルッパ、そしてサマ爺、楽しい出会いだった。

 またいつか、来たいものだよ。

 あれ?シエンちゃんの弟さんいたよね?

 影薄かったなー。

 一応、空を統べる赤龍の王の息子さんなのにねえ。

 帰ったらアウロさんに伝えないとね。

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