高級リゾート地って素敵やん
さてとまずは作戦会議と行きますか。
我々はダセワンの街の教会へ行くことにした。
教会に行くとツラーセン司祭から話は聞いているし、こちらでも窓口になると言うので壁の向こうでの事を話した。サマ爺は良い仕事をしたので今回の報酬に色を付けて欲しい旨も伝えたのだった。
ダワセン教会の司祭はこの件での帝国内での責任者であるバトマデルーイのパンチャコ司祭に経過を連絡しておくので引き続き、任務の遂行をお願いしたいと言う。そして、デイアルアル公国ハミジカ地区のモミバトス教会を尋ねて欲しいと手紙を渡されたのだった。
我々は了承し教会が用意してくれた強鳥車でハミジカ地区を目指すこととなった。
ここからハミジカ地区は強鳥車で半日かからないと言う。
さて、デイアルアル公国とはどんな国なのか。
まずは我々が現在いる場所、神聖エルミランド帝国は大きな大陸の中でも海に面した土地であり、海以外に3つの国が隣接している。
そのうちのひとつがデイアルアル公国だ。
現在の元首はグリカクディ・デイアルアル大公。
100年程前までは神聖エルミランド帝国の保護下で主権の制限を受け、外交や軍事などはエルミランドが受け持っていたとの事。
現在でもエルミランドとの協調路線は継続しているが、主権や外交に関しては制限が緩和され、それまでは大公家が断絶した場合はエルミランドへ吸収される事になっていたが、現在では断絶した場合でも存続は保証するものとなり、外交に関してもエルミランドを通さず行っているという。
軍事に関しては、大公騎兵隊という軍隊を持ってはいるものの、ほとんど治安維持や式典のための集団、いわば儀仗部隊、保安警務隊であり、現在でも国土防衛の際はエルミランドが軍を出動させることになっている。
そうした事情もあるので、外交に関しても、それ以外でもエルミランドに不利益になるような事はしない、そうした国だとの事。
なるほどねえ、ここまで聞いた限りでは物騒な事はなさそうですな。
主要な産業は観光で、国営遊技場、まあカジノですね、それの収益が莫大であり、一部の課税が物凄く少ないために、近隣国の大富豪が移住している、いわばタックスヘイブン、税の楽園ってやつで、そこら辺はちょいとばかりキナ臭いと言うのか、そうした地域にペイルンのような奴が逃げ込む理由を考えると面倒臭い事になりそうな感じがするよ。
だがまあ、国自体は治安の良いリゾート地って感じで、これはちょっと楽しみですよ。
そんな所って、前世界でも行ったことないからね、ワクワクするよ。
と言っても前世界でも俺はギャンブルは余りやらなかったけどね。
どうも話を聞いているとシエンちゃんとキーケちゃんは、ギャンブル嫌いじゃなさそうなのよね。
ちょっとだけ心配になる。
ちなみに目的地のハミジカ地区、地区と呼ぶのは国土がそれほど広くないため国自体がひとつの大きな街になっており、5つの地区に分かれているためなのだと言う。
そんな話をしているうちに強鳥車はハミジカ地区の入口に到着。大量の品物の持ち込みには税がかかるため荷物を改められたが、我々は元から軽装だしレインザー王国の冒険者カードは身元を保証するものとして効力があるようで特に問題はなくデイアルアル公国へ入国することができた。
まずはハミジカ地区のモミバトス教会だ。
道行く人に道を尋ねて教会に着き、いつものように話を通してもらう。
角の生えたオウガの司祭はワソトと名乗り、手紙を渡すとそれに目を通してから上を向いて目を揉み、それから我々に向かい話をしだした。
「ご苦労様でした。私は今でこそ、こうして司祭をしていますが、以前はギャンブルにおぼれ借金にまみれ、この街で獣のような生活をしておりました。この街の光と影を、私は知っています。獣のようだった私を救ってくれたのはこの街のなんでも屋さんでした。彼でしたら力になってくれることでしょう。」
そう言って紙に何かを書き記すワソト司祭。
「これは、なんでも屋さん、キングフィッシャーと言うのですが、そこへの地図です。そこの社長ゴドーさんにこの手紙を渡せば協力してくれる事と思います。」
そう言って地図と手紙を渡される。
俺たちはワソト司祭に感謝し地図の場所へと向かった。
腰くらいの木の塀に囲まれた平屋の小ぶりな一軒家、玄関口には、何でも承りますキングフィッシャー、と看板に書かれている。
塀の中をのぞくと鷲顔の男性が上半身裸で太い木剣を素振りしていた。
「おじゃましまーす。」
俺はなるべく大きな声で挨拶をした。
「おお、これはお見苦しい姿を失礼しました。少々お待ちください。おーい!イリル!お客さんだー!。」
大きな声で鷲顔さんが言うと、家の中からスラっとした犬顔の女性がタオルと上着を持って出て来た。
「あらあら、これはこれは、むさくるしくてすいません。はい、社長これ。」
そう言って鷲顔の男性にタオルと上着を渡す犬顔女性。
社長と呼ばれた所を見ると、このキリっとした鷲顔男性がゴドーさんだな。
「こら、イリル、社長をむさくるしいとはなんだ。」
身体をタオルで拭き上着を羽織りながら言うゴドーさん。
「社長って言っても、社員は私だけじゃないですか。もう。すいませんねー、どうぞ、中にお入りください。」
社長を軽くあしらって我々を中に案内するイリルさん。
イリルさんに従って中に入ると、すぐに応接テーブルとイスのセットが目に入り、そちらへおかけになって少々お待ち下さい、と言われたので座らせてもらう事にしたが、イスは4人分なので我々だけで占拠してしまう事になった。
「はい、こちらお茶です。どうぞ。」
イリルさんが冷たいお茶を持って来てくれたので、それを飲みながら待つことしばし。
「いや、お待たせしました、私がなんでも屋キングフィッシャーの社長、ゴドーです。本日はどの様なご依頼ですか。」
ゴドーさんは応接セットの近くに別のイスを持って来て座り話し出した。
「教会のワソト司祭から伺いまして、こちら司祭からの手紙です。どうぞ。」
「ほう、ワソト司祭からですか。では、拝見いたします。」
ゴドーさんが手紙に目を通していると、隣りにイスを持ってきたイリルさんが来てちょこんと座った。
「フムフム、なるほど。わかりました。ところでイリル君、君はどうしてここにいるのかね?。」
「だって、社員ですから。仕事の内容を知っておかないといけませんから。」
「ふぅ、わかったわかった、ではイリルも一緒に聞きなさい。それでは皆さん、ご依頼はこの国へ入ってきたペイルンという男の捜索ですね。」
「はい、そうです。」
「よければ、その男について詳しくお聞かせ願えませんか。話せる範囲で構いませんので。」
「ええ、別に話せないようなことはなにもないのですが、ちょっと長くなりますよ。」
「ええ、構いません。」
と言う事で俺は、レインザー王国で起きた発見者騒動から、モミバトス教会の依頼で神聖エルミランド帝国で流行り始めている実践会について、そして実践会が大きくなり始めたその影に居たアドバイザー的存在の男について探りに来た事、そしてバトマデルーイの街でそいつが起こした邪法による災害の事、そして壁の向こうで見かけを変え、この国への通行証を手に入れた事まで話して聞かせたのだった。
「ふうむ。なんと言う事だ。裏世界の噂話で聞いた事はあるが、そんな事が実際に行われているとは。」
「ほう、その裏世界の噂話とはなんだい?。」
キーケちゃんが興味深そうに聞いた。
「いや、この街も遊技場に群がる色々な者たちがおりましてね。博徒、金貸し、山師、犯罪組織、違法物専門の商人、そうした連中の間で一時期良く語られたのが、思想商売と呼ばれるものでしてね。色々な国でそうした団体を裏で操って大きくし、その団体から、もしくはその国に敵対する国や組織から莫大な利益を得ている、そうした商人が存在するらしい、という噂話です。実際にそれを真似ようとノウハウもないのに過剰投資して身代を傾けた大富豪もいるそれがあのなにそれだ、といった具合で単なる与太話と思っていましたが、まさか、本当に存在するとは。」
「いや、我々も背後にどんな組織がいるのか、までは掴んでいません。ただ、その組織のやり方は確実にやられた国に損害を与えます。その損害とは国民の財産や労働力、将来性など非常に大きなものです。」
「許せませんよ!社長!なんとかしなきゃ!。」
ビックリした!突然イリルさんが大きな声を出した。
「急に大きな声を出すものじゃないぞ、イリル。君の気持ちはわかる。私だって許せない。わかりました。ぜひ協力させて下さい。教会から報酬は出るそうですし、お任せください。」
「ありがとうございます。我々もここまで追って来るまでに多少の荒事は切り抜けてきました。特に女性達は皆、凄腕です。ですので、一緒に動いても邪魔になる事はないと思います。よければ、一緒に動かせて下さい。」
「大丈夫ですか?かなり、危険な所まで踏み入ることになるかも知れませんよ。」
「望むところだ。」
「うふふ、見かけに惑わされないで下さいね。」
「きひひ、腕が鳴ると言うものよ。」
「と言うわけですんで、お願いします。」
「・・、わかりました。身の危険を感じたら迷うことなくお逃げ下さい。これだけはお願いします。」
「はい、わかりました。約束します。」
「くふふ、感じたいねえ、身の危険。」
「きひひひ、意見がおうたのう。」
「うふふ、そうですねえ。」
「良かったじゃない社長!今回は一人でやらなくても済みそうですね!。」
「こらこら、イリル。」
「いや、本当に依頼主は教会なんで、我々は同じ依頼を受けた協力関係の同業者と思って頂けると助かります。」
「そうですか?そう言って頂けると私としても動きやすいです。では、早速ですが聞き込みに行きましょう。」
「ええ、お願いします。」
本当に早速だが話が早くて良いわな。
「いってらっしゃーーい!!。」
うひゃ!イリルさん声デカイよ!。
さあ、高級カジノリゾートの裏の顔、見せて頂くとしましょうか。




