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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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熱い試合って素敵やん

 決勝戦第二試合、俺の対戦相手はナンバー2選手、小柄な、と言うよりも子供なのか?アルスちゃん位の身長の選手だった。

 互いに礼をして試合開始、ロケットのように頭からすっ飛んできたナンバー2選手の頭突きをまともに受け、俺は吹っ飛んだ。

 即座に立ち上がったが、凄い衝撃だった。

 こりゃ、マズイ。

 本気で行かなきゃ。

 俺は体内に気を循環させながら、再びロケット頭突きをしてくるナンバー2選手をゲイルで避ける。

 するとナンバー2選手は、今度は間合いを詰めてくると接近戦に持ち込んできた。

 拳と爪によるひっかきを織り交ぜた格闘術は、手数も多く何よりスピードが凄い。

 目で追うのが精いっぱいで、避けきれず食らってしまうモノも少なくない。

 俺はスピード重視の軽い攻撃は敢えて受け、力のこもった拳による攻撃にカウンターを当てて行くことにした。

 相手のフック気味のパンチには肘を内側に入れたジャブよりのパンチで当てていく。

 段々と俺の攻撃が与えるダメージが上回っていくのを嫌い、ナンバー2選手は四つん這いダッシュで距離を取った。


「なかなかやるじゃないかー!本気を出すぞーー!。」


 ナンバー2選手は本当に子供みたいな、それも女の子のような声で俺に言うと魔力を溜めて全身の毛を逆立てた。


「行っくよーー!。」


 右手に大きな火の玉を纏わせたナンバー2選手が、凄い速さで殴りかかってきた。

 とっさに避けるが、熱で髪の毛が燃えて縮れる。

 すごい熱だよ。

 こりゃ、熱には水ですな。

 水魔法でスイカサイズの水の玉を作りナンバー2選手にぶつける。


「こんなもの、こうだっ!。」


 水の塊に炎をまとった拳でパンチするナンバー2選手。

 水は激しく蒸発しはじけ飛んだ。


「あっちゃっちゃっちゃーー!!。」


 一気に加熱され水蒸気爆発を起こし弾けた水を身体に浴びて叫ぶナンバー2選手。

 どうやら、耐熱が施されているのは炎を纏った拳付近だけのようだ。


「やるじゃないかーー!それじゃあ、これでどーーだ!。」


 子供じみた叫びと共に拳に纏っていた炎が紐状に伸びた。


「それ!。」


 伸びた炎をしならせて、鞭のように攻撃するナンバー2選手。

 うひゃ、こりゃどうしたもんか。

 距離を取られて避ける一方だ。

 こういう時は、と。アルスちゃんに教えてもらったやつだな。手元に武器がない時に、魔法で武器を作るってやつ。威力や射程の調整と維持が難しいんだけど、ナンバー2選手もそれをやってるんだよな。あれ?ナンバー2選手、凄くない?

 よーし!火には氷で対抗だ!と行きたいところだけど、あの炎はかなり強いよ。俺の出す氷剣じゃあっという間に溶かされちまうだろうな。

 と言うわけで、剣にするのに一番カッコよかったやつ!雷魔法で行きましょう!

 俺は右手から雷魔法で形成した剣を出す。

 バチバチ言っているこの感じ、やっぱりカッコいい!!


「さて、今度はこっちの番だぞ。」


 俺は雷剣で炎の鞭を叩き切る。


「にゃんだとーー!。」


 どんどん切って短くしてやる。


「ソンにゃのありかーー!!。」


 細切れになり消えてなくなった炎の鞭を見て、地団駄を踏むナンバー2。


「こうにゃったら仕方ない!。」


 段々と喋り方が可愛くなってるけど大丈夫か?

 ナンバー2選手は両手を激しく動かして、風魔法のかまいたちを沢山繰り出してきた。

 鎌状の空気のかたまりは、触れたものを切り裂くのだが避けて客席に飛んだら大変だ。

 俺は空気を圧縮した玉を正確に当てて、かまいたちを消滅させていく。


「だあーー!にゃんて奴だ!これはどーーだ!。」


 ナンバー2選手は手のひらをこちらに向けると火炎を放射してきた。

 それは以前に経験済みですわ、まあこっちの方が威力は強いけどね。

 それでも対処法は変わらない、前回は片手でやったけど今回は強力なので両手で行かせてもらいます。

 俺は飛んでくる炎を高速回転させた両手で巻き取るようにし、頭上で大きく渦巻かせてから霧散させた。


「にゃんですとーー!!こいつはどーにゃっ!!。」


 今度はジャンプして空中からシッポの毛を針のように飛ばしてきた。

 とっさに避けると地面に刺さった毛が燃えている。


「にゃははははー!どうにゃっ!。」


 刺さると燃える毛って、お前は何来訪者だよ!

 だが、毛は小さくて見えずらいけど軽いからな。

 再び放たれたシッポの毛を風魔法で作った小さな竜巻に巻き込んで粉々にしてやる。

 更に以前にシエンちゃんがムキムキ大猿軍団相手にして見せたように、小さな竜巻を誘導してナンバー2選手に差し向けた。


「にゃんだーこれ?追っかけてくるにゃ!気持ち悪いにゃ!。」


 走って逃げるナンバー2選手を四方八方から小さな竜巻で追い立てる。


「にゃーーっ!!毛が巻き取られるにゃーー!!。」


 近づく小竜巻にシッポの毛を巻き込まれて焦るナンバー2選手。


「にゃーっ!もう嫌だにゃー!降参するにゃっ!!。」


 ナンバー2選手は審判の後ろに隠れて叫んだ。

 俺は小竜巻を止めて審判の判断を待った。

 審判はナンバー2選手に確認を取ると、勝者ケートモマンと大きな声で宣言した。

 俺が小竜巻を消滅させると、シッポをナデナデしながらナンバー2選手がこちらにやって来た。


「お前、強いにゃ。気に入ったぞ!またな!。」


 そう元気に言うとナンバー2選手は控室に戻って行った。

 にゃんだったんだ?にゃにものだ?いかん、口調がうつってきてしまった、気を付けねば。

 俺は出場選手控室に戻ると、今度は入れ替わりにアルスちゃんの出番だった。

 アルスちゃんはいつも通りの穏やかな口調で、行ってきますねえ、と言うので我々もいってらっしゃーい、といささか気の抜けた送り出し方をしたのだった。

 しかし、普通に考えれば先鋒が、あの、我は龍族の王にして空を統べる赤龍の長エンの娘也でお馴染みシエンちゃんの弟さんでしょ、あの魔獣島でも挑まれこそすれ負けることはないと言う強者だ。

 そして、次鋒がさっきの、にゃの娘、超スピードと魔法を駆使し並みの使い手ではなかった、と思う。まあ、力を測る相手が俺だからな、そこは難しい所だが、とにかく、だ。

 強い団体だろう、この相手は。

 そんな団体マスクドペインの中堅だ、油断はできぬぞ!頑張れアルスちゃん!

 そんな俺の心の声を知ってか知らずか、出てきた相手側の選手は背筋のピシッと伸びた細身の選手で、マスクナンバーは1。

 手には前世界のチャクラムのような円状の武器を複数持っている。

 試合が開始され両者互いに礼をして間合いを取る。

 ナンバー1選手はチャクラムを指で回し、ひょいひょいとそれを投げつけてくる。

 アルスちゃんはそれを避けるが、投げられたチャクラムはナンバー1選手の手の動きに合わせて不規則な動きをする。

 まるで、複数飛んでいるその武器を遠隔操作しているようだった。いや、実際に操作しているのだろうし、なんなら推進力も与えているのだろう、チャクラムはドローンのように飛び回っている。

 周囲をチャクラムに囲まれたアルスちゃんは、ワンピースの腰ベルトに挟んでいた棒状の何かを手に取った。

 アルスちゃんはその棒状の何かを広げる。

 パシッといい音をさせて広げたそれは扇子だった。

 闘技大会受付にあった看板にも描かれていた狼少女の絵に頑張るニャンと書かれている扇子。


「おー、あれはアルスが売店で買っていたやつ!。」


「知っているのか!シエンちゃん。」


「おうよ!知っておるとも!昨日一緒に売店に行ったときにな、カワイイって言って買っていたものよ。」


「なるほど。という事はあれはただの扇子っちゅうことでんな。大丈夫でっかアルスお嬢?。」


「きひひ、サマ爺、まあ見ておれよ。」


 キーケちゃんに言われて俺とサマ爺は戦いの行く末を見守る。


「それはベル様の大会物販品。お買い上げ感謝ですわ!。」


 ナンバー1選手はそう言うと指揮者のように手を振り、チャクラムを一斉にアルスちゃんのもとに向かわせた。


「うふふ、面白い武器です事。」


 そう言ったアルスちゃんは、高速で向かって来るチャクラムを開いた扇子で撫でるように上から押さえていく。扇子で押さえられたチャクラムは、まるで糸の切れた操り人形のように力を失い地面に落ちた。


「きひひひ、な?。」


 キーケちゃんが言う。


「あやー!アルスお嬢、えらいことしまんなあ。」


「アルスちゃんは何をしたの?。」


「いや、クルースはん。アルスお嬢は相手選手の武器に込められた魔力を自分の魔力で追い出しましたんや。魔力を込めるっちゅーんは、その人が何度も何度もやって通り道を作ったものでっから、そいつを追い出すってのは並み大抵のこっちゃあらしまへんで。魔力の出入口を見つけてそこから自分の魔力を入れる、これを一瞬でやったっちゅうことでっせ。しかも高速回転して飛んでるもんにでっせ。どーなってまんのや。」


「きひひ、まだ試合は終わっとらんぞ。」


 試合場ではチャクラムを落とされたナンバー1選手が、即座に間を詰めて接近戦になっていた。

 ナンバー1選手は手足が長く、しかもかなり柔軟性のある選手のようでその特性をフルに生かした格闘術を使ってくる。

 鞭のようにしなやかな蹴りを繰り出し、アルスちゃんがその足を扇子で叩くと蹴り足を引き、そのまま自分の背中からサソリの尾のように振り下ろして攻撃して見せたり、ジャンプしたアルスちゃんを自分の頭を超えるほどのハイキックで追いかけてきたりと、アクロバティックな動きに会場の観客も大興奮だ。

 スラっと伸びた手足で繰り出すナンバー1選手の蹴り技と手刀は、小さなアルスちゃんを時には背後から襲うが後ろに目でもついているかのように的確に扇子で弾かれる。

 どうも、段々とナンバー1選手の手刀や蹴りにしなやかさが無くなってきたように見える。


「あれ、もしかしてアルスちゃんの扇子での防御って、相手にダメージ与えてる感じ?。」


「なんだトモちゃん気付かなかったのか。扇子に魔力を通しているからな、相手の攻撃が鈍くなってきたろう。あれは自分の攻撃を食らってるのと変わらないからな。」


 そうして大分精彩を欠いてきたナンバー1選手の突きをアルスちゃんは上にはねて避け、そしてその腕に乗っかった。

 そのままスススっとナンバー1選手の懐に入ると、扇子でペシっと頭を叩いてからスッと地面に降りるアルスちゃん。

 ナンバー1選手は突きを出した姿勢のまま、ゆっくりと倒れる。

 アルスちゃんは倒れるナンバー1選手をそっと抱きとめ、地面にそっと横たえた。

 うわー、かっちょいい事するやないのーー!。

 惚れてまうわーー!。

 審判が近寄り、場内は大歓声で沸く。

 審判はカウントをし、アルスちゃんのリングネーム、ギリヤドフォークロアの名を叫び勝利宣言をした。

 アルスちゃんはナンバー1選手に近づき額に手を当てた。

 意識を取り戻し上体を起こそうとするナンバー1選手に、アルスちゃんは何か言い聞かせると相手は頷き右手を出した。

 アルスちゃんはその手を取り握手を交わすと、こちらへ戻ってくるのだった。

 上体を起こしたままのナンバー1選手は、やってきた担架に乗せられるまでアルスちゃんに敬礼していた。

 いやー、無事に中堅戦も終了し、いよいよ真打、キーケちゃんの試合となります。

 次はどんな強敵がやって来るのか!強敵と書いて友と読むのか!!なんてひとりで盛り上がっていると、審判と相手チームの選手が話し合いを始めた。

 なんぞ?

 暫くして、審判が実況解説席へ行く。


「えー、皆さん、お待たせしております。只今、マスクドペインチームから敗北宣言の通知があり審判によって受理されました。よって、今大会優勝はウパタル探検隊で決定しました。皆さん、大きな拍手でお迎えください!!。」


 えーー?なんで?

 きょとんとしている俺に、案内係さんが、皆さんどうぞ試合場へお進みください、優勝おめでとうございます、と言うので、ああ、ハイ、とか気の抜けた返事をして試合場へと行くのだった。

 いや、ちょっと、拍子抜けするっしょ。

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