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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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力とパワーって素敵やん

 しっかり休んで準決勝当日となりました。

 今日の対戦相手は、力こそパワーでお馴染みのファイティングパワーズの皆さんですけど、俺たちとしては最初の三人を誰にするのか、が難しい所だ。

 何が難しいのかと言えば、ファイティングパワーズの選手はカスターオイルズとの試合が総力戦だったため、全員の力がわかっているので、そのレベルに合わせた戦いが出来るのかどうか、という事だ。

 シエンちゃんは、我に任せろ!今日は二試合とも出るぞ!とやる気十分。

 アルスちゃんとキーケちゃんはどちらでも良い、と言う。

 サマ爺は力任せの相手は得意だから、準決勝に出て決勝は大将で見学したいと言う。

 そうなると、俺もどちらでも良いしどっちかと言えば争い事は好まないのだけれども、と言うと、ではわたしが行きましょうか、とアルスちゃんが言ってくれたのでお言葉に甘えることにした。

 そうして始まったファイティングパワーズ戦、先鋒はこちらからは、キャプテンノズトクこと、サマ爺だ。

 相手チームの先鋒は前回の副将だったゴリラ顔のマッチョマン、クラウンズ選手。

 猿顔対猿顔の猿人対決となりました。

 クラウンズ選手の得物はこりゃ、前世界でもマンガやゲームでたまに見かけたけどなんなんだろ?でっかい玉が付いた棒って言うと伝わりづらいな、持ち手の先端に球状のデカいおもりが付いた武器ね、アレを両手に持ってブルンブルン振り回してらっしゃる。

 ザ・力自慢といった風情だよ。

 対するサマ爺は、クラウンズ選手の周囲を回って間合いを図っているのか挑発しているのか。

 クラウンズ選手が右手に持っている武器を振るうと、なんと先端の金属球が飛び出した。

 どうやら鎖につながれて伸び縮みするギミックが施されているようで、周囲を回っているサマ爺に鎖鉄球が襲い掛かった。

 サマ爺は地面に這いつくばるほど身を沈めて避けると、そのままの姿勢でクラウンズ選手に走り寄る。

 カサカサとまるであの黒光する虫のように凄いスピードで、地を這い間を詰めたサマ爺を鎖鉄球武器を手放し、左手の武器で上から押しつぶそうとする。

 クラウンズ選手の見切りの早さとスイッチした武器攻撃の早さは素晴らしかった。

 しかし、サマ爺はそれを上回る身体能力の持ち主だった。

 クラウンズ選手の武器が振り下ろされる瞬間、サマ爺は急停止しそのままの姿勢で真横に動き、武器が地面を叩いた時には背中へと回っていた。

 正直、気持ち悪い動きなんですけど。

 サマ爺はクラウンズ選手の背中から首へ駆け上がり、首を足で挟むと鉄棒の大車輪のように回転し始めた。

 クラウンズ選手は左手に持っていた武器も手放し、首元に手をやり高速で回転しているサマ爺を引き離そうとするが、回転しているサマ爺が遠心力に合わせて手技で弾いてしまうので上手く掴めずにいる。

 業を煮やしたクラウンズ選手は真後ろにひっくり返った。

 サマ爺はひっくり返ってる最中に、身体正面で回転を止め、クラウンズ選手の胸元を蹴りながら後ろにジャンプし、一回転して着地して見せた。

 デカい音を立ててひっくり返るクラウンズ選手と、着地して尚構えを解かず残心の姿勢を崩さぬサマ爺。

 かなり短い間での攻防に場内が一瞬静まり、そして歓声に沸く。

 ひっくり返ったクラウンズ選手に審判が近寄りカウントを始めるが、カウント2で頭を振りながら立ち上がる。クラウンズ選手は自分の両頬をバシンと勢いよく叩いて気合を入れた。

 サマ爺も軽く跳ねて構えている。

 クラウンズ選手は脇を締め両手を軽く前に出し、前屈みになってジリジリとサマ爺に近づいていく。

 サマ爺の地を這うような超低空接近術を警戒して前屈みにになっているのだろうが、前世界のレスリングの構えのようになっており、間合いの詰め方も足のスタンスは崩さずにじり寄るような近寄り方で、クラウンズ選手はどうやら力任せだけの選手ではないようだ。

 サマ爺はトントンと軽く跳ねると、間合いを詰め攻撃エリアに入った。

 掴みかかるクラウンズ選手の手を払うサマ爺。

 クラウンズ選手はどうにかサマ爺の身体をつかもうとするが、サマ爺はその手をバンバン払い、いなし、掴ませない。

 焦れたクラウンズ選手は両手を広げサマ爺に覆いかぶさるように倒れ込んだ。

 ノーモーションのボディープレスだった。

 うつぶせに倒れ込むクラウンズ選手の身体が浮いたように見えた。

 なんと小柄なサマ爺がクラウンズ選手の巨体を持ち上げていた。

 驚愕の表情のクラウンズ選手、どよめく会場。

 よく見るとサマ爺の両腕はムッキムキのマッチョ状態になっていた。


「ほうほう、羽化変性を使いよるか。」


「知っているのかキーケちゃん!!。」


「きひひひ、このやり取りも何度目かのう。まあよい。あれは魔族の中でも才有るものが修練の末に身に着ける事ができる技よ。お主は身体強化は自然とやっておるようだが、普通は意識して魔力を消費して行うものだ。当然、身体強化をしながら他の魔法を使うのは難しい。まあ、お主もシエンもアルスも平然とやっておるが、普通に考えて難易度の高いやり方だ。その上、魔法の重ねがけや微調整となると戦闘中に行うのは至難の技よ。だが、あの技、羽化変性は魔力は使わぬ、自前の能力移動とでも言うのか、今、サマ爺は瞬発力を犠牲に筋力を上げておる。そうした技よ。」


 サマ爺がクラウンズ選手を持ち上げクルクルと回している。確かに、筋力は大幅に上がっているようだ。

 しかし、何かを犠牲にしてひとつの能力を底上げするのは、どうなんだろう?それほど大きなメリットがないような気もするのだが。


「きひひ、トモよ。お主は考えていることが顔に出るのう。まだまだ若いのう。あまり効果的でない技だと思っておるか。それも仕方なし。お主は人族であるからな。ほとんどの魔族は人族とは比べられぬほど高い身体能力を持っている。今のサマ爺も瞬発力を犠牲にしたと言っても、並みの者よりまだまだ高い瞬発力を持っておるわな。さらに、魔族の住む地域には魔法の使いづらい場所が少なくないのだ。そうした事を考えると、やはり彼らにとっては相性の良い技であり、強力な技なのは確かなのだ。」


「ホヘー、やっぱりサマ爺は只者じゃなかったねえ。」


「ほれ、試合もそろそろ終わるぞ。」


 キーケちゃんが言う通り、クラウンズ選手を力任せに放り投げたサマ爺。

 近づいてくるサマ爺に、明らかに怖気づいているクラウンズ選手。

 サマ爺はゆっくりと歩きながら、落ちていたクラウンズ選手の武器を手にすると、ムッキムキの右手のパンチで先端の金属球を粉々にしてしまった。

 それを見た観客は歓声を上げ指笛を鳴らす。

 クラウンズ選手は力なくうなだれて、審判に何事か伝えている。

 審判はそれを聞き頷くと、大きな声で勝者ノズトク!と宣言した。

 サマ爺の両腕はみるみる標準サイズに戻り、その手で観客に手を振り、毎度!毎度!と挨拶している。

 先鋒戦は無事に、いい勝負で勝利することができた。

 問題は次のシエンちゃんなのだが、まあ彼女もどんどん進歩している、知恵の象徴、赤龍の王の娘さんだ。

 良い勝負を演出してくれることだろう。

 頼むよ、シエンちゃん。

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