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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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剣を交えるって素敵やん

 馬車での道行は実に順調、何事もなく進み我々は無事に領主都オッドウェイ中心部にあるゴゼファード領主の城へと到着した。


「いやあ、アルスちゃんの言った通り、オッドウェイに入ってからが長かったねー。」


「でも、あの牧歌的な田園風景もまた良いんですよね。」


 俺とアルスちゃんは馬車から降りて話す。


「うあぁーーあ、と。お腹が減ったなあ。」


 大きく伸びをして言うシエンちゃん。


「遠路お疲れさまでした。会食の準備ができておりますので、ご案内させていただきます。」


「うおっ!。」


 突然声をかけられてびっくりしてしまった。振り向くとそこには背筋の伸びた初老の男性が立っていた。


「これは失礼をいたしました。私、こちらで執事長を務めておりますジェンスと申します。ようこそ、ゴゼファード城へ。」


 きれいに一礼するジェンスさん。


「いや、こちらこそ失礼しました。お世話になります。」


「きひひ、久しいなジェンスよ。キワサカは息災か?。」


 ひょこっと馬車から降りてジェンスさんに声をかけるキーケちゃん。


「タモクト様!お久しゅうございます!キワサカ様は相変わらずでございます。タモクト様がいらっしゃった事をお知りになられたらお喜びになられますでしょう。さあ、皆さまどうぞお入りください。」


「きひひ、相変わらずか。これは楽しみだなトモよ。」


「うわあ、やっぱり逃げられないのかー。」


「逃げることはあるまいて。お主にとっても良い経験になると思うぞ。」


「本当かねえ。しかし、ご領主様相手に勝っても負けても良い事なさそうだけどなあ。」


「いや、キワサカは認めた相手には胸襟を開く度量のある男よ。お主という男に興味を持ったという事は、お主に何か相談したいことでもあるのやも知れぬ。事と次第によっては面白いことになるかもな。」


「ほうほう、面白い事は大歓迎だぞ。」


 シエンちゃんが話しに食いついてきた。


「きっひっひ。まあ、シエン好みかどうかはわからぬがな。アルス方面かも知れぬしな。」


「まあ、わたし方面と言われますと?。」


「なにか、ゴゼファード領の歴史にかかわる事かも知れぬという事よ。」


「あら、それは魅力的!。」


「きひひひ、まだなにもわからぬがな。あたしの予想よ。」


「キーケちゃんの予想は当たるからなあ。」


「面白い予想は当たると良いな!。」


 シエンちゃんが元気よく言った。まあ、そうだね。面白いのは俺も大歓迎だよ。

 城内をジェンスさんに案内されて通されたのは会食の部屋。

 長いテーブルに白いテーブルクロス、左右にはイスが置かれテーブルの上には花が飾られている。


「うわっ、お上品な感じ!テーブルマナー自信がないんだよねー。」


「まあ、そう心配せずとも大丈夫だろうよ。細かい事は気にせぬ男だ。」


「どうぞ、皆さまお座りになられてお待ちください。」


 ジェンスさんに促され我々は着席して待つことしばし。


「いやあ、皆さんお待たせした!。」


 大きな声を出して部屋に入ってきたのは、がっちりした体つきの長身男性だった。


「本日はお招きに預かりましてありがとうございます。」


 俺は立ち上がってあいさつをした。


「いや、そう畏まらなくとも良い!さあ、食事をしながら話をしようではではないか。」


「きひひ、な?言った通りの男であろう。キワサカよ、久しいな。」


「タモクト殿!お久しぶりにございます!ご一緒だと聞いて驚きましたぞ!。」


 そう、両手を広げて言うご領主様。また、声も大きければアクションも大きい人だ。

 俺たちは運ばれてくる料理を食べながら、ご領主様と話をすることになった。


「しかし、タモクト殿が一緒にパーティーを組まれるとは、驚きました!クルース殿の噂は聞き及んでおりましたが。」


「そうか、面白い連中でな。腕もたつぞ。」


「タモクト殿がそこまで言われるとは、それは楽しみですな!クルース殿!食事の後に軽く模擬戦でもしませんか!。」


 でたよ。しかも、疑問形じゃないもんね。しませんかって、もう、明るい体育会系が独りぼっちの子を誘う時の口調だもの。キーケちゃんをちらりと見ると笑顔でうなづいてるもんね。仕方ないな。


「ええ、お手柔らかにお願いします。」


「いやいや、こちらこそ!。クルース殿の武勇は色々と耳に入っておりましてね、衛兵隊長やデンバー商会会長からも聞きましたよ。」


「そんな、お恥ずかしい。まだまだ若輩者ですのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」


「はっはっはっは!聞いていた通り奥ゆかしい方だ!クルース殿の事務所の話も聞いておりますぞ!身寄りのない子供たちに職能をつけひとつの商会にするやり方、感服しました。是非とも、ゴゼファード領にて模倣させて頂きたく思いましてな!それも今回来て頂いた理由の一つなんですよ!。」


「そうですか!それは良い事です!どんどん模倣して下さい!。私にできることがあれば協力しますから。」


「ありがとうございます!そう言ってもらえると力強い!そうした子供のために領で経営する学校を作ろうと考えているのです。」


「それはいいですねえ!色々な職業の専門的な教育を施せる学校があれば、有能な人材が沢山できますよ!そうすれば産業は発展し民衆の生活もより良くなりますよ!。」


「おおっ!それですよ!それは私は常々言っている事ですよ!。」


「領民の繫栄は領の繁栄、ですか。」


「そうです!いやー!クルース殿!その時は是非、お力をお貸しください!。」


「微力ではありますが、機会があればよろしくお願いします!。」


 どうやら、領民思いのご領主様と言うのは本当の事らしい、さっぱりしていて男らしくて領民思いで腕っぷしも強いとはまあ、時代劇の主人公かいな?城を抜け出して遊び人に扮して市井の人を助けたりしてるんじゃないだろうか?そんなことを考えてゴゼファード公を見ていると、白い馬に乗って海岸を走る姿が目に見えるようだ。

 和やかな雰囲気で会食も終わり、やってきましたよお手合わせタイムが。

 城の中庭、円形の訓練場のような空地に案内される俺たち。


「お好きな物をお使いください。私はこれを使います。」


 隅にある訓練用武具置き場から大きな木剣を選ぶゴゼファード公。

 俺は普通サイズの木剣を選んでから、腰の特殊警棒を抜いてこれも使用してよいか聞いてみた。


「それは、マキタヤのジョーサン工房で最近売り出している伸縮性の鉄棒ですな。見たことがありますぞ。それでは、木剣と鉄棒の二刀を使われるか?。」


「ええ、よろしければ。」


「いいでしょう!面白くなりそうですな!では、行きますぞ!。」


 俺は右手に特殊警棒、左手に木剣を持ち構える。右手を前に半身になり了承の声を上げる。


「お願いします。」


 ノーモーションで間合いを詰め大きな木剣で突きを放ってくるゴゼファード公。

 俺は右手の警棒で剣先を外側に流し、左手の木剣で上から切りかかると公は即座に大剣を引き俺の木剣を受けそのまま強く押し後ろにさがって距離を取った。

 公は大剣を右後ろに引き円を描くようにじりじりとこちらに寄せてくる。

 俺は公がやったようにゲイルの魔法を使ってノーモーションで間合いを詰める。

 公の凄まじい速さの横切りを、大剣の握り近くで警棒と木剣の二刀で受け止めながら懐に入り肩から体当たりをしようとするが、公はサイドスイングしていた大剣を止め俺の背中に蹴りを入れてきた。

 蹴られた勢いでゴロゴロと転がりながら距離を取り、立って構えると既に公は迫ってきておりまたもや大剣での鋭い突きを放ってくる。今度は受け流す暇はない。十文字に構えた木剣と警棒で突きを受け止める。

 勢いで後ろに押される。木剣にヒビが入る。

 公は素早く上段に構えた大剣を振り下ろしてくる。

 俺は左手の木剣で勢いをつけて迎え撃つ。

 俺の木剣は砕け破片が飛ぶ。

 公は破片を顔に受けてもひるまず目も閉じない。大したものだが俺は同時に手に残った木剣の柄も手放しているのでそいつが公の顔を打つ。

 さすがに目を閉じる公。

 俺は先ほど二刀で受け止めた大剣の握り近くを、警棒で強く打った。

 折れる大剣。

 警棒を構えてその切っ先で公をマークする。


「素晴らしい!。」


 両手を広げて大声で言うゴゼファード公。


「まさか、こいつを折られるとは思いもしませんでしたよ。そして、その動きには驚かされました。剣を使いながら剣を使っていないような動き。感服しました。」


 俺は警棒をたたみ腰のケースにしまう。


「いや、そんな大したものではないです。」


「きっひっひ。キワサカよ、そやつはあたしから一本取ったぞ。」


「なんと!まことですか?。」


「ああ、トモの剣にはこだわりがない。あたしも最近それを学んだのよ。剣に囚われれすぎない事をな。」


「剣に囚われすぎない、ですか。」


「そうよ、剣も手の延長という事かの。まあ、トモのやり方は手すらおとりにするからな。」


「やめとくれってキーケちゃん。そこまで色々考えてはいないって。」


「いやあ、良い模擬戦であった!クルース殿ありがとう!。」


 ゴゼファード公は握手を求めてきたので俺もそれに答えた。


「貴殿は信用に足る人物であると、私は確信した!是非、貴殿に聞いてもらいたい話があるのだ。相談に乗ってもらいたいのだ、良いだろうか?。」


 俺の手を力強く握りながら言うゴゼファード公。

 どうやら、キーケちゃんの予想は当たったようだ。


「はい、お聞きします。」


 俺は正面から公の目を見てそう言ったのだった。

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