初日って素敵やん
対戦者達の手当も済んで教室に戻ると、担任教師が座って待っていた。
「もう、お済みになりましたか?。」
「はい、無事に委員も決まりましたしね。よし、みんな席に着け。」
「ウイーッス。」
「あいよーっと。」
フライリフとエイヘッズが怠そうに答える。
「それでは、委員長前に出て来て下さい。」
「今、席に着いたとこだっちゅーの。」
「エイヘッズ、頼むよ。」
俺はエイヘッズに言った。
「へいへい。それで俺に何を御所望ですか?えーと?。」
「ヤイザです。」
「そう、ヤイザ先生。」
「君が委員長なら、君が主導で他の委員会も決めて欲しいのですけど。」
「他にはどんな委員会が?。」
聞かれたヤイザ先生は黒板にチョークで各委員会を書き出した。
委員長と副委員長、風紀委員長と副風紀委員長は決まっている。
それ以外で黒板に書かれたのは、まず学園の図書館の利用サポートと学園新聞の発行を行う図書新聞委員。
これは、特別臨時講師としてスーちゃんの名前が挙がっている。
そして、体育祭や文化祭の企画運営をする祭事実行委員、校内施設等の生徒による自主管理を統括する施設管理委員である。
各々、委員長と副委員長のふたり選ぶという事で、こりゃまた揉めるんちゃいますか?と思ったのだが、これが、さすがはエイヘッズ。
口八丁であれよあれよと言う間に、各々正副を貴族、制服組両サイドから選出して見せた。
フライリフが見込んだ通り、こうした才がエイヘッズにはあるようだ。
フライリフだっていっぱしの組織を仕切ってたリーダーだったんだし、人を引っ張る力や人を見る目もあるだろうし、ただ腕っぷしだけでエイヘッズを押したわけでもないだろ。
各委員を決めた後はヤイザ先生の指示にて各々自己紹介後、校内施設の案内となる。
ヤイザ先生の先導で校舎内をぞろぞろと歩く。
「ねえねえトモ先生、先生は貴族なの?。」
ネージュが俺に話しかけてくる、ほんとにこの娘は人見知りしないなあ。
「いや、違うよ。」
「じゃあ、商会関係?。」
「まあ、商会にもすこし関わっちゃあいるけどさ、本業は冒険者。」
「なんだよ、先生、冒険者かい?すげーな。俺も冒険者になりてーんだよ。」
「なによ、フラちゃん、冒険者になりたいわけ?その力なら今からでもなれんじゃんさー。なんで学園入ったん?。」
フライリフとエイヘッズも話に加わってきた。
「確かに、お前らならもう立派に働けそうだし、エイヘッズなんて実際働いてたんだろ?なんで学園に?。」
俺も聞いてみた。
「俺っちはよ、もう町のゴロツキみたいな生き方にほとほと嫌気がさしてよ、お天道様に顔向けできる仕事がしたいと思ってな。そうしたら、この学園の話を聞いてさ。エイヘッズは?。」
「およよ、俺はフラちゃんっつってんのに連れないお方。まあ、いいや。俺はよ、そうだな、気まぐれかな。」
「嘘よー。寂しがりなんだからビンちゃんは。友達が欲しかったんでしょ?素直になりなさい!。」
「うっせー!気まぐれ猫め!人がせっかくクールに決めてんのによー。」
「クスクス、ほんと、あんたたちっていいコンビよね。」
「あら、スニーとフラちゃんだってそうじゃない?。」
「私なんて、フラちゃんに守ってもらってばっかりだし。」
「何言ってんだスニー。俺っちはお前を頼りにしてるぜ。」
「やっぱりスニーが言ってた通り、ヤボテンねフラちゃん。」
「でしょ?お互い苦労するわね。」
「何がだ?わかるか?エイヘッズ?。」
「さあ?お嬢さん方の言う事は俺にはさっぱり。それよか、トモちゃん先生さあ?。」
「トモちゃん先生っておまえ。まあ、いいけどさ。なによ?。」
「いやさ、先生あれだろ?ケイトモ事務所のトモさんだろ?悪殺の団の?そうだろ?。」
「はい?ケイトモは確かに立ち上げ手伝ったし、仲間だけど、何?悪殺の団て?。」
「え?違うの?暴力の化身、魔法の化身、技の化身の女性3人を従えるケイトモ会長の作った無敵の冒険者パーティー、バンミドルを始め魔獣だろうが人だろうが出会った悪は全滅が合言葉って聞いたけど?。さっきのシエン先生、暴力の化身でしょ?違うの?。」
「その話なら俺っちも聞いた。悪の教団の魔の手から歌姫ハティーを救った英雄、王国安対を助けて隣国の破壊工作を防ぎ、もののついででトゲウオの街の犯罪組織を壊滅させたって、この学園設立のきっかけもケイトモだって聞いたぜ。まさか、先生が?。」
「随分と話が盛られてるけど、まあ、そうだよ。うちのパーティーメンバーみんなここで先生やってるからよろしくね。あと、暴力の化身とかそんなんじゃないからね、うちの仲間達。まあ、強いのは本当だけど、無法者じゃないんだから、その辺ちゃんと理解して頂戴よ。」
「うっそ!トモちゃん先生、金持ち?なによー!もう!早く言ってよー、私、最初から先生のこと好きでした!結婚してください!。」
「ネージュ君、君はお金と結婚しなさい。」
「アッハッハッハ!こりゃいいや!言われたなーネージュ!。」
「ふーーんだっ!私は絶対お金持ちとっつかまえて、一生贅沢に好き勝手に生きてやるんだからね!。」
「ネージュは今だって十分好き勝手に生きているように見えるけどねー。それにしてもトモ先生、なんでここの先生になったのよ?。」
スニーが近くに来て俺に聞く。
フライリフにエイヘッズ、ネージュまでがそうそう、と頷いている。
「それも、成り行きでさー。俺自身、先生なんて向いてないと思ってたんだけどさ。」
俺は、軽く経緯を話した。
ゴゼファード公やスーちゃんとの出会い、そして今回後押ししてくれた事を。
「てなことがあってね。今に至るっちゅー感じ。」
「どうも、トモちゃん先生は先生っぽくねーと思ったら、まあ、そうか、いい意味で力が抜けてんだな。」
「ちげーねーや。俺っちは気にいったぜ。」
「そいつはどーも。まあ、せっかくの学園生活だからさ、楽しく有意義なものにしてくれな。」
「うーい。」
「はいよ。」
「はーーい。」
「はい。」
校内案内も一通り終わり、本日はこれまで。
初日なので授業はなく、これからの学園生活のための説明を再びして、解散となった。
俺はシエンちゃんとアルスちゃん、キーケちゃんと合流し食堂へ向かった。
今日あったことを皆に話すと、どうにも俺らしいとアルスちゃんとキーケちゃんは笑った。
話を聞くと、我々全員、担任の先生は貴族商会サイドの先生、それもかなり強硬なそちら側の人ばかりのようで、これは、理事長の計算だな、と皆で話し合った。
食堂に着くとすでに生徒達が何人もおり、キーケちゃんやアルスちゃんに挨拶をする者もいた。
「ふたりとも、人気者じゃん。」
「そんな事はないですよ。ただ、担任のロウヒ先生が外見で私を評価して、人にモノを教える資格があるのかと尋ねるので、カウザミ川とチルデイマの歴史とについて軽く説明したのですよ。」
「へー、そうしたら?どうなったの?。」
「はい、一部の生徒さんに非常に受けましてね。どうも、ロウヒ先生の鼻を明かしたみたいに見えたのでしょうね。そうならないように気を付けたのですが。」
「はー、わかる、その先生が過剰に煽ったんでしょ?制服組を見下したりして。」
「まあ、そんな感じですね。」
「アルスの所もか。うちのクラスはジマオウという教師だったが、貴族組の方しか見ないのだ。委員も全て貴族組から選ぼうとしたもんでな、ちょいと言ってやったのよ。」
「うわ、なんて言ったの?。」
「お前はこの学園の理念に逆らうのか?それはゴゼファード公に逆らうのと同じぞ、とな。」
「うわー、えげつない言い方したもんだなー。それで、ジマオウ先生はどうしたの?。」
「いや、公の何がわかるのだ!貧民風情が!などと言いよってなあ。ホントにこらえ性のない男だったよ。張り倒してやろうかと思ったが、それじゃあ、問題もあろう、冒険者カードのキワサカお墨付きの紋章を見せてやったら、震えて黙り込んだわ。まったく、奴にもこの学園で色々と学んで成長してもらいたいものよ。」
「なるほどねえ、シエンちゃんは?邪魔だからどっか行けって言われたんでしょ?。」
「ああ、あいつ、なんて名だったっけな?えーと、シャイナとかチョイナとかそんな名前の。」
「スウナー先生ですか?。」
「あっ!それそれ!よく覚えてんなーアルスは。スウナーね。生徒がケンカしてたからさあ、我が仲裁に入ったら、出てけっていうんだぞ。あいつ、どうかしてるだろ。廊下見たらトモちゃんが歩いてたから、お望み通り出て行ったけどな。」
「なにそれ?それはスウナー先生が悪いな。」
「いやー、どうだろうな?」
「なによ、キーケちゃん?。」
「シエンだぞ。なにかやっておろうよ。」
「うふふ、わたしもそう思いますねえ。」
「あっ!シエン先生!ちーっす!まじ、先生最高っすよ!俺たちみんな先生のファンっすよ!。」
「なんだ、キャロか。みんな、うちのクラスの生徒、キャロだ。」
「あっ!どーっもっす、自分キャロウェイって言います。」
「キャロウェイ君、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?。」
俺はシエンちゃんの言ってた事を尋ねてみた。
「それっすよ、それ!自分、まあいわゆる貴族商会組なんすけど、この学園の理念はわかってて入学してますから、制服組にも別になんも悪い感情はないんすよ、うちのクラスのモン、みんなそうっすよ、なのに担任のスウナー先生は制服組がいないみたいにやるんすよ。俺たちも気持ち悪くて。そしたら、制服組でケンカが始まって。」
「ほうほう、で?どうなったの?。」
「はい、シエン先生が教室に入ってきてケンカしてるふたりを止めて。」
「ほらな!我の言う通りだろ!。」
「うんうん、ここまではね。それから、どうしたの?。」
「シエン先生が言うんすよ、仲間同士で争ってる場合か!敵と戦え!敵と!って。それで、ケンカしてるやつらが、敵って誰だよって聞くじゃないっすか、そしたら、ぷふふ、やべ、思い出しても笑っちゃう、ぷぷ、シエン先生、スウナー先生を指さして、あそこにゴブリンがいるだろって。ぷぷっ。」
「そりゃ、怒るわなあ。」
「なにを怒ることがある、軽いお茶目な冗談ではないか。」
「それで、怒ったスウナー先生が誰がゴブリンだーって黒板消しをシエン先生に投げて。」
「投げて?。」
「気づいたらスウナー先生のおでこに黒板消しがめり込んでたっす。」
「ゆるーく投げてよこしたから、遊びかと思ってゆるーく投げ返しただけだぞ。」
「あちゃー。それで、スウナー先生が怒って出ていけーって言ったわけだ。」
「はい、でもその時にはすでに廊下に向かってましたけどね、笑いながら。まじで、スカッとしたっす。」
「きひひひ、やっぱりな!。」
「でしたね。シエンさんらしいですわ。」
「いやー、シエン先生!最高っす!俺たちみんな先生が毎日来るの期待してるっす!。」
「わかったわかった。なるべく顔出すから、飯食いに行け。」
「了解っす!。」
それから、俺たちは食堂でご飯を食べながら今日あった細かな事を再度話し、やはり格差による問題は根深いと再認識するのだった。




