第四十七撃
前回の待ち合わせより数か月たっているはずなのに人々の服装が大きく変わらないというのは、地球で生まれて四季がある国で育った身としてはよく考えると不思議に思えた。このサミュエラでの気温は故郷の初夏ぐらいで一定していてほぼ変化がない。
まったく変化がないわけではない。緩慢な流行の変化という形で少しずつ違いが出てきているはずである。
しかしその違いはわからなかった。
前にスージーに選んでもらった千鳥格子のスカートを身に着けてきているから流行には乗り遅れてはいないとは思う。
流行に疎い身としてはほんとうに似合っているのか不安になるが、そこは自分が知る限りの唯一のオシャレ猛者であるスージーを信じるしかない。
そのスージーだが、
「遅いな……」
つい呟いてしまう。
そこへ、人波をかき分けて背の高い女がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。
「あの!
オメガスクリームⅡ世ですよねっ?
サインください!」
背の高い見知らぬ女はそう言い、メモ帳をこちらに差し出した。
応じてやると背の高い女は釣りで大物を引き上げたような歓声を上げ、何度もお礼を述べて去って行った。
「っせえな……、あいつ、何やってんだ?」
モバイルの時計を見やる。
約束の時間はとっくに過ぎていた。
約束があるのに、それを強引に取り付けた本人が来ないというのはどういうことだろう。
連絡しようにも番号を知らない、などというのは下手な言い訳に過ぎなかった。着信履歴を調べればすぐにスージーの番号は探し当てられるはずである。
しかしそれをするにはためらわれたのである。
番号をわざわざ調べるような真似をするのはスージーに対する未練のようなものを断ちがたく思っている証拠に感じていた。
スージーとはあくまで単なる知り合いであって、友達などでは決してないはずだった。
そうなればここでとる選択肢は、帰る、または、一人で美術館に行く、のどちらかとなる。
実は美術館の場所は既に調べがついていたし、よしんば調べてなかったにしてもモバイルを使えばリリー・コロニーにあるというてがかりさえあれば容易に見つけられうる情報だった。
「どっちにするか……」
呟き、モバイルを手の中でもてあそんだ。




