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無重力格闘少女伝説オメガスクリームⅡ世  作者: 川場託
VS.サンダークラップ
19/71

第十九撃

 音楽に合わせながらダンベルを上げ下げしていたが、気がつけばその音楽も耳に入らなくなっていた。


 結局のところ隠したつもりでいても周りに心配をかけてしまっている。


 接することが多いアマンダが相手とはいえ気づかれてしまったのは自分の中に気づいて欲しいという気持ちがどこかにあるということではないだろうか。


 どこかに早めに自分の気持ちを披露して楽になりたいという考えがなかったとは言い切れない。


 そんなはずはないと思いはする。


 ジョーが言う通り自分はひたむきに〈ZGA〉をやってきたつもりだったし、これからもそうしていきたいという意思はある。


 しかしながら同時に引退を考えているのも間違いないところだった。年齢的なことを考えるとそういう考えが頭をよぎることはしかたがないだろう。


 それらがそれぞれどれくらいの割合で心の中にあるのか自分でもわからない。


 心を計量する仕組みが発明されれば良いのにと思うが、そんな都合の良いものはない。


 アマンダに気持ちを知られていることを告げられてから数日たっている。


 ジムのトレーナーなどほかの者にアマンダが引退を考えていることを話したようすはなく、いまのところ悟られているふうでもないが、場合によってはジム側に自分の考えを告げなければならない。


 そこまで考えて、まるで引退したがっているようではないかと気づいてしまう。


 正直のところ困惑した。


 そうではないはず、と、ダンベルの上げ下げを加速する。


「リズムずれてるよ。ぼうっとしてる?」


 トレーナーから注意を受けながらも、一定時間がたったところで運動を終えた。


「そろそろ発表の時間だ」


「発表っ?」


 どきりとした。いつの間にか引退についてのことをジム側が察知していて、そのことを発表しようと強硬姿勢に出たのではと疑ってしまったのである。そんなはずはない。


「次の対戦相手だよ」


 こちらの驚きに戸惑いを見せながらトレーナーが告げた。


 ジムの端末のところに二人でおもむき、操作して対戦表を表示させる。


 対戦相手の決定は主にコンピューターによって行われている。あまりに無慈悲な対戦があった場合またはけがなどの状況により人間が多少調整をすることもあるが、ほぼ機械的に決定されている。


 だが、多くの者はコンピューターが決定することだから完全に公平だと感じているようだが、いまや人間を超えるほどのあいまいな判断を下すことも可能なコンピューターがどこまで機械的に判断しているのかは微妙なところだと思っていた。


「名前出てますよ」


 後輩の一人が声をかけてきた。


 うなずいて表示を見ると、


 サンダークラップ対オメガスクリームⅡ世


 の表示が見えた。


 それは、〈ZGA〉をはじめたてのころに自分に大けがを負わせて引退を考えさせた選手を継ぐ者の名だった。


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