呪いと魔法
「しっかし毒って言われてもピンとこないんだよなー…なんかフサフサしてたって言ってたし」
「あんにゃさん、毒と言っても呪いの様な物です。我々の世界ではフサフサしてる生き物は基本そういう性質を持っていると言うのは常識です」
「ああ…そうなんだ…
まあ、それはいいとして
問題はその毒をどうやって消すかだよな
いや、その前に…沙那美は今どういう状況なんだ?」
「たぶん、念波によって精神を侵されています
沙那美さんは今、肉体的な快楽だけを求める存在
つまり、歩く性欲です」
「そりゃまた…えげつないな…
で?やっぱりこのまま放って置いたらヤバイんだろ…?」
「そうですね…脳が異常な状態になっていますので、放って置いたら…溶けます…」
「溶けますって…脳が!?オイオイ!!
早くなんとかしないとダメだろ!?
どうにかできないのかよ!?」
「一種の魔法みたいなものですから、こちらもその類いの力で打ち消せば…たぶん…」
「魔法…そんなもん使えるヤツがどこに…」
あんにゃは思った
元々異次元の扉を開いて元凶となるヤツを呼び出したのはララだ
ならばララには他にも不思議な力を使えてもおかしくはない
「ララ!魔法だ!!魔法で沙那美を救って…」
ここであんにゃはララの異変に気付いた
先程から一切話に入って来ないと思っていたが、それが何故なのかは気にならなかった
植木鉢を持ったままそれを見つめるララ
「ララ…リザーラはもう死んだんだろ?
それよりも今は沙那美を救う方法を…」
「生きてるの…あんにゃちゃん
リザーラは…まだ生きてる…」
「ララ…気持ちはわかるが、それはどう見ても…」
「いいえ、確かに生きていますよ
ほら…微かに呼吸をする音が聞こえます」
「なっ…マジかよ!?」
「ネコさんどうにかリザーラを元気にしてあげられないですか?」
「正気かララ!!
そんなことよりも早く沙那美を助ける方法を…」
「あんにゃちゃん!ララは魔法なんて使えないよ…
だから沙那美ちゃんは…
だけどリザーラは弱っているだけだから元気にする方法さえわかればまだ助かるかも知れない…」
「ララどういうことだ!?
それは沙那美はもう助からないから諦めるって…そう言ってんのか?」
「・・・」
「嘘だろ!?お前そんな薄情なヤツだったのかよ!!そもそもララが異次元の扉なんか開かなければ沙那美は」
「ストップですあんにゃさん。
それに、ララさん諦めるのはまだ早いですよ
沙那美さんの脳が溶け始めるまで早くても3日はあります
それまでになんとかすれば良いのです」
「なんとかって…できんのかよ…」
「ララさん私が言った言葉を真似してみて下さい」
ネコは呪文のような言葉を唱えそれをララにも唱えさせた
「へ…!?」
燃え盛る炎がララの両手を包みそれは1つになって大きな炎の球になった
「すごーい!!」
「おい…ララ熱くないのか?」
「上出来ですよ。ララさん。」
「本当に魔法を使いやがった…あれ?でもなんで炎!?」
「一番簡単だからですよ
まあ小手調べというやつです
しかし、驚いた…まさか初めてでいきなりできるとは…」
「でも、すぐ消えちゃったよ」
「出来てしまえばその状態を保つのは大して難しいことではありません
あとは、イメージをより強くすることによって更に強力な炎を出せますよ」
「いや、だから何で炎なんだ…」
「これからララさんにはアボイゾ星の森の奥深くに住んでいるミスター・ケニャップに会ってそれっぽい魔法やら呪術を会得してきてもらおうと思います」
「それっぽいって…」
「だって魔法とかは私だってよくわからないんですもん…
いや、大丈夫ですよ。たぶん
きっと強力な魔法なら大抵のものはどうにかなるでしょう」
「まあ、行くしかないんだろうな…
他に手もなさそうだし…」
「そうです。行くしかないのですよ
ですが、その前にケニャップ氏の住む館に辿り着くまでにはそりゃあ恐ろしい獣がうじゃうじゃといるはずです」
「え!?ワープで行くんじゃねえの!!」
「ワープで行きますよ。近くまでは…
しかし、完全に位置が特定出来ているわけではないのでそこからは…徒歩です
で、やっぱそれって危険じゃないですかー?
なのでその前にララさんには私の知っている限りの魔法を身に付けてもらいます」
「私が魔法を…?」
「そうです。森にはただただ凶暴な獣しかいませんから単純な攻撃系の呪文さえ覚えておけば楽々倒せるはずです
そしてあんにゃさんあなたは…」
「お!?オレにも何か教えてくれるのか!!」
「あんにゃさんは持ち前の身体能力でララさんの援護をお願いします」
「え!?マジで!生身!?」
「あんにゃちゃん…よろしくね…」
「ララなんでそんな哀しそうな表情で言うんだ…え!?オレ死ぬの!!」
「では早速特訓を開始しましょう
この成果次第であんにゃさんの寿命も少しは長くなりますよ」
「頑張ります!!」
「えー…もう、死ぬの前提じゃん…寿命がどうとか言っちゃってるよー…」
それから約3時間ほど経ち
いろいろと覚えた呪文の中に"仲間の身体能力を大幅に向上させる"というものがありあんにゃをスゴく安心させたが、違う意味で自分に危険が及びそうなのでララは使わない方向でいくことをそっと心に決めた
「では、これで最後ですよララさん!」
「はい!」
最後の呪文も難なく会得し、いざ向かわんとしたところであんにゃが一言
「ん…?今の呪文てなんだったん?」
「そういえば…何も起きなかったね」
「あー、そういえば説明してなかったですね。
今のは"呪文の効果を打ち消す呪文"ですよ」
「あー、なるほど。だから何も起きなかったんだ」
「それなら何も起きなかったのは不思議じゃないね!それどころかごくごく自然なことだよね
だって"呪文の効果を打ち消す呪文"だもん」
「そりゃそうですよ"呪文の効果を打ち消す呪文"で何か起こったらおかしいですからね」
二人と一匹は何か引っ掛かるような気がして同じことを何度も繰り返し言い合った後沈黙し、その後あんにゃが
「なあ、それで呪い消せねえの?」
とようやく当たり前の疑問に辿り着く
「いや…さすがにそれは…」
「だってその毒は念みたいなもので出来てるって…」
「・・・
物は試しですね。ではララさん…」
「ふにゃぱらぱー」
ネコの指示を待たずしてのフライングマジックだった
ネコはちょっとイラっとしたがそんなことより沙那美の状態である
「何も変化なしだな…」
「呪文間違っちゃったかなあ…」
「いいえ、呪文は完璧です。
やはりこの呪文ではだめなのでしょう」
「あっ!じゃあさっきのやつ
次に使う魔法の効果を倍増させる呪文と組合わせたら良いんじゃねえか?」
「いや、それはムダでしょう。
"呪文の効果を打ち消す呪文"は効果を発揮している呪文を打ち消す呪文ですから、効果を倍増させる呪文を打ち消すだけ…」
「カッケールーニーのふにゃぱらぱー!」
「って…聞けよオイ!!」
「おい…何か…」
先ほどとは違い何か淀んだ空気が浄化されたような、清々しい朝の風が吹いてきたようなとにかく"良い状況になった感"があった
「う…うん…?」
長い眠りから覚めた感をベタに出し沙那美は無事呪いから解放されたっぽかった
「沙那美ちゃん大丈夫…?」
「ララちゃん…?私…一体…」
「普通に喋ってるな…おいおいネコさんこれって成功したんじゃねーのー?」
「あれー…?」
「沙那美ちゃんどこも異常はない?」
「え…?そういえば…
なんだか…人に言えない部分がとても熱い…」
「たぶんすぐに冷めるよ…」
「それでは私はもう帰りますよ
いつまでもここにいるわけにはいきませんから」
「何だよ!もう行くのかよ!!」
「何かあった時はテレパシーで伝えて下さい。その時はすぐ駆けつけますから」
「あっ…ネコさんありがとう。」
「いえいえ、こちらこそ頂いた物に見合うほどのこともできませんで、すみません
またいつか会いに来ます。きっと…
それでは!」
「あーあ…行っちゃったよ」
「さようならネコさん」
「あ…あのー」
「どうしたの沙那美ちゃん
やっぱりどこか気になる?」
「気になることだらけです!
喋るネコさんが黒いトンネルみたいなのに吸い込まれるように消えていくし、植木鉢にはカラッカラに乾いた生き物のような植物のようなものが植えられてるし…」
「あっ…」
ララもあんにゃもすっかり忘れていた
沙那美には一切何も話していなかったことを…それと…
「あーーーっ!!
リザーラを元気にしてもらうの忘れてた!」
「そういえば…いや、でもテレパシーだかなんだかでそれは聞けるんじゃないか?」
「そっか♪じゃあ大丈夫…じゃないよーあんにゃちゃん…
テレパシーの呪文わすれちゃった!!」
「じゃあもうだめだろ…」