今度はウェスティアさんと
「はぁ。また女性連れてきたんですか……」
ウェスティアさんも大きなため息を付いた。
反応がカオスちゃんと一緒だ。
「女たらしねぇ」
シェルティも冷ややかな視線を送ってくる。
「あのねぇ、俺は真面目に人材探しを……」
あれから、マギロス城下町の魔法研究所は丸ごと町に移転した。
魔法を使える魔人たちは、今までにない魔法を覚えることができるとあって、大はしゃぎで研究所に通っている。
聖竜の試練で大幅に魔力上昇したため、回数も威力も格段に上がっている。
さらにはグレイスの占いで、個々に合った効率的な修行もできている。
装備品に関しても、虹彩と魔線鋼のおかげで、魔法を使えないものでも魔法を使えたり、科学力と魔法の融合という、マギロスもヒュムロスもできなかった偉業を、ヒミカはやってのけた。
「ヨーイチさんが連れてきたドラゴンですが、この魔穴を管理していただけあって、かなりの力を有しています。もしかしたら、聖竜クラスになれるかもしれませんね」
おぉ、ジードとかいうドラゴンか。
今は収納石のせいで、俺の言う事を聞かざるを得ない状況に立たされている。が、ウェスティアさんとイースティアの2人の教育の甲斐あって、だいぶ言う事を聞くようになっていた。
「最近は色々施設も増えてきて、とてもいいことなのですが、試練を与える聖竜が足りません。ジートを聖竜になるまで育てるまでには時間がかかります。そのため、セントラル大陸にいる聖竜を連れて来たいと思います」
「セントラル大陸にも聖竜がいるのか」
「はい。センティアと言います」
セントラルだからセンティアか。相変わらず安直だ。
「それと、聖竜界に行って、何匹かふん縛って来ましょう」
「え、そんな世界があるの?」
「私たちも最強ではありません時々の異世界人に最後の力を与え、命を失った者もいます。ちなみに私は10代目、イースティアは16代目ですね」
「そのたびに、聖竜界から新しい聖竜が来る、って訳か」
「そういうことです。もしかしたら、既に私より強く、指導力に長けた聖竜が育っている可能性もあります」
「じゃあ、まずはセントラル大陸でセンティアを仲間にして、その後聖竜界に行くってことでいいかな?」
「はい、それで行きましょう」
戦争真っ只中のセントラル大陸は想像を絶する有様だった。
煙が立ち込め、巨大なクレーターがいくつもできている。
いくら命まで取らないとはいえ、けが人がそこかしこにいる。
「これが、戦場……」
今までの殺し合いとも違う、火薬や聖素砲の焦げる匂い。
魔素も混ざり合い吐き気を催す。
もしかしたら、ウェスティアさんはこういう光景を俺に見せたかったのかもしれない。
お前にこれほどまでの覚悟があるか? と。
「取り敢えず行こう……」
現地で観戦したがるもの好きも少なくはない。
俺達には特殊なバリアが張られているため、直接的な被害は出ない。
「でも、なんで試練を与える聖竜がセントラル大陸にもいるんだ?」
「センティアの主な役割は、試練を与えると言うよりも、秩序を守らせるためにいるのです。」
「あぁ、怪我人は殺すな、とかそういう?」
「えぇ。でも常に戦場にいて、マギロスやヒュムロスたちとの交戦もするため、私たちより戦闘に特化しているとも言えます」
なるほど、試練を与えるだけではなく、戦闘になった時にも力を発揮してくれる訳か。
聖山セント・セントラルは大陸の中央にある。なるべく紛争の激しい地帯は避けつつ、中央を目指す。
夜営。
「ここは戦場です。一応あの防空壕で一晩過ごしましょう」
最近は料理を作るのもうまくなっていた。
こんな戦時下でも野生の生き物はいるようで、ウサギとヘビが取れた。
「ヨーイチさんの手さばきも様になって来ましたね。最初は生き物殺すの躊躇ってましたものね」
クスクスと上品に笑うウェスティアさん。
「そりゃあ、元いた世界じゃ生き物殺すことなんてなかったからな」
殺してもゴキブリとか蚊くらいなもんだ。
血抜きも済ませ、肉と骨にわけていく。
ウサギの骨は砕いてスープの出汁にする。
毛皮は後で少しでも売れるように鞣しておく。セントラル大陸でしか生息しないウサギの毛皮だ。それなりに高く売れるだろう。
ウサギの肉もそのままでは固い。
包丁で細かく叩き、肉団子にしてからウサギの骨髄で煮込んだスープに入れる。
スープにはヘビの血が入っており、それだけで塩味が付く。そこに臭み消しのハーブをいれて仕上げる。
蛇は香草を使った白焼きにする。
「なかなか美味しそうですね。流石です」
「一応元の世界じゃ一人暮らしで自炊してたからな」
色々レシピを溜め込んで、一人で作るのにはまっていた時期もあったしな。
「ふぅ。お腹いっぱい」
「ごちそうさまでした」
こちらの世界じゃ「ごちそうさまでした」なんて言葉はなくて、俺が布教したんだ。
「さて、明日の打ち合わせをしてから、早めに休みましょうか」
ウェスティアさんは袋から地図を取り出すと、ある地点を指さす。
「ここが今私たちのいる大まかな地点です」
そこから、つつっと指を動かして中央を指す。そこには聖山とだけ書かれていた。
「ここまで約半月の行程です」
「結構かかるな」
「でも、また虹彩も大量に手に入りますし、一石二鳥でしょう」
ふわ、とカンテラの明かりが風に揺れる。
魔力探知に引っ掛からないよう、普通の油の火を使っていた。
揺らめく火に照らされたウェスティアさんの白い肌は紅くそまり、竜族独特の鱗の反射も相まって不思議な魅力があった。
「どうしました?……。あぁ」
ウェスティアさんが少し赤くなる。
「私は竜族ですが、私は異世界人からみた私は綺麗ですか?」
「う、うん……」
手と手が触れ合う。
もう何年も共に戦ってきたのだ。
前衛としても奮闘していた彼女の身体にもそれなりの傷がある。
「醜い、ですよね」
「そ、そんな事は……」
俺はウェスティアさんの腕にある傷を撫でる。
「この傷も、他の傷も、俺を庇ってできた傷だ。醜いなんてこと、絶対にない」
俺は言い切る。
「今は、我慢、します……。でも、もしこの戦いが終わったら、私の事も真剣に考えてくれますか?」
「ウェスティアさん……」
「貴方に言い寄る女性が多いのもわかっています。でも、負けたくはありません」
そう言って背を向けると、布団に丸まってしまった。
その首筋は火の灯りとは違った高揚が見えた。
俺もウェスティアさんの方を見ることができず、お互いに背を向ける形でその夜は寝る事となった。




