90/100
第90話 あの足 【軍団長ガライアス視点】 閑話
夕刻。王都駐屯地。
「お前ら」
ガライアスの声に、全員が顔を上げる。
「学生と旗戦だ」
「は?」
誰かが吹き出す。
「剣も魔法も無しの、あれか?」
「学生のお遊びだろ。泥ん中転げ回るだけの、ままごとじゃねえか」
ガライアスは肩をすくめた。
「そうだ。だから勝ったら——
好きなもん食わせてやる」
静寂。
次の瞬間、声が弾けた。
「マジか!ご馳走様です!」
「肉だ、肉!えっと、酒もありですよね?」
「欲張りが多いな」
笑いが広がる。
「……給料前ですよ、団長」
ガライアスの顔が止まる。
「……し、しまった」
一瞬、考えて—— 顔を上げた。
「俺も出る」
「は?」
数人の兵が固まる。
「王様から、報奨金をもらう」
「そんなもん出ませんよ」
副団長は即答した。
「学生に負けなくて偉いですね、なんて理由にもなりません」
笑いが、少し引いた。
ガライアスは黙る。
……あの足。
「本物か——確かめる」




