30 2人の会話
ギリン兄様はメルロワード国に居る間は何かあってはいけないと伯爵家から護衛を付けてくれたので私たちが泊っているホテルも安心して滞在できる。
「疲れましたね」
「そうだね。カークス伯爵には感謝しかない。でもあの短い会話で護衛を付けてくれることになったのは相当危ないってことかな」
私はさっそくジャロの実を頬張りながらロイ様の問いに答える。
「それはきっとエフィン公爵と手を組んでいたウェルタ侯爵の手の者がまだいるということだと思うわ」
「ウェルタ侯爵というのは?」
「エフィン公爵と手を組み、ロイ様のおじい様を殺害に関与した人物よ」
「……そうなのか。なぜ祖父は殺されなければならなかったのか。僕は理由を聞かされていないんだ」
「ええ、イェシュティア国では事故死という扱いになっているわね。ブラジェク伯爵は前国王によって殺された」
「前国王に殺された? エフィン公爵とウェルタ侯爵との関係がいまいちわからないな」
「そうよね。先代様はメルロワード国に莫大な費用をかけて港や街、特産品の開発や整備をしてくれていたの。
そして港が完成すれば港の使用料五パーセントを伯爵が受け取るはずだったの」
「確かに父もそのような話をしていたね」
彼が頷いているのを見て私は話を続ける。
「そこに目を付けたのがメルロワード国のウェルタ侯爵だったの。彼の持つ商会の商品をイシュティアに売り込みたい。
だけど港を使用する権利を持っていなかった。エフィン公爵はイェシュティア国の外交官としてたまにメルロワード国へ赴いていたの。
そこでウェルタ侯爵はエフィン公爵と手を組んだ。ブラジェク伯爵を殺して港の使用料をエフィン公爵が引き継いだ。
そしてウェルタ侯爵の所有する商品をエフィン公爵家の貿易品として取り扱うようにすることだったの。裏では危険な薬の流通もさせようとしていた。
そんな危険な物を国が流通させるわけにはいかないでしょう?」
「そうだね」
「もちろん前国王は頷くことはなかったんだけど、ウェルタ侯爵は側妃予定だったボーダー男爵令嬢を仲間に引き入れ、陛下を薬漬けにした。薬によって判断が落ちた陛下はブラジェク伯爵を殺してしまったの」
「……そんなことがあったのか」
「まあね。当時、側妃だったシャリアは利権を貪ろうとしている者たちを排除するために動いたわ。ウェルタ侯爵を捕まえて処刑するまでは追い込んだ。多分だけど、利権を潰された側の人に私は殺されたのよ」
「……だとしたら今の僕たちも危ないんだろうな」
「そうね。今はまだ私がエリオット陛下と面識があるということを彼らは知らないから書類が揃ったら相手が気づく前に帰国しないとね」
「うん。書類が出来るまであと六日。船が出るのが九日後だ。その間に我が家で扱う品物を探しながら王都観光を楽しもうか」
「そうね。せっかく来たんだもの、楽しまないとね」
私たちは少し休んだあと、ホテルから一番近い商会へと向かった。
「いらっしゃいませ」
店主の男はにこやかに挨拶をしている。
私たちは商品を一つ一つ品定めをしていく。
ここの商会は各領地の特産品を多く扱っていて、私たちは店主から詳しい説明を聞いてみる。
「この工芸品は素晴らしいわ」
「お嬢様、お目が高い。この象牙のペンダントはカスリーサの職人が一つ一つ丁寧に彫り上げているんです」
「これは?」
「これはザエルポの絨毯ですね。この模様はカシュラ民族伝統の織物なんですよ」
「どれも素晴らしいね」
「ええ、そうね」
私たちは一通り説明を聞いた後、店主にメルロワード国の商会に品を出してほしいと交渉する。
ここ数年で往来が増えたため、お互いの国の品物が入ってくるようにはなってきているが、まだまだ知られていない名品も沢山ある。
店主と相談した上でいくつかの商品を買い、後日連絡をすることになった。
こうして毎日王都を散策しながら商会で取り扱えそうな品物を選んで購入していった。




