家出、そして里帰りへ
更新止まっててすみません。
どうにもスランプ気味で……別にシリーズを書いて思い付いたら書くようにしてたらこんなに遅くなってしまいました。多分これからもこんな感じです。
人間の愚かさとはおぞましいモノで、瑤華に脅された革命軍の高官達は醜く責任の擦り付け合いを始めた。
「お前が言い出した──」
「いやお前が──」
「嘘を言えお前が──」
瑤華は自ら焚き付けた怨嗟を横目に、月夜魅で丁寧にユイナの拘束を取り払った。
「ごめん、遅くなった」
「無茶ばっかして…もう……」
駆け寄って来たユイナを優しく抱きかかえ、瑤華は改めて人間達を見る。
「で?責任の押し付け合いは終わった?」
「あ、えっと……」
「まぁもう良いよ………«紅蓮地獄»」
ユイナを巻き込まないように展開された小規模な氷の地獄に、壇上の人間達は情けない悲鳴を上げた。
「た、助けろっ!!俺を助けろよ誰かッ!!!」
「……」
瑤華はもう何も言わず、黙って切っ先を向ける。
そのまま首謀者の首を落とす──かに思えたが、ユイナに近付く気配を感じ取った事で中断。
一瞬で距離を詰め、背後からユイナを人質にしようとしていた男を蹴り飛ばす。
「あっ…」
「どうしたの?」
「……」
「…………その傷、あの男にやられたの?」
「……うん」
瑤華の次の行動は速かった。
左手で蹲る男の頭を掴み上げ、そのまま勢い良く地面に叩き付ける──
「待ちなさいッ!」
──直前でアリアの魔法が発動。
太い木の幹が全身に纏わり付き、瑤華の行動を阻害する。
「これ以上はやめてください、死んでしまいますよ?」
「アリア様……邪魔しないで下さい」
「落ち着きなさい。彼等を殺したところで何も変わりませんよ」
「………変わらない、それが何だって言うんですか?」
瑤華はゆっくりと頭蓋骨を握り潰す。
耳を劈く悲鳴はすぐに聞こえなくなり、頭の上半分が絞られるようにひしゃげて…爆ぜた。
「一瞬で頭蓋骨を吹き飛ばされた方がまだ痛くなかったのに……まぁそれはさておき…アリア様、何も変わらないなら、何かしちゃいけないんですか?」
「何を言って…」
「生産性が無いからって、虐げられた側が泣き寝入りしなきゃいけないなんておかしくないですか?それを是としたら、私の10年間は何になるんですか?」
「……革命軍を裏切る事になりますよ」
「構いません。師匠の信じた革命軍はもう存在しない」
そう言って瑤華は、強引に右腕の拘束だけ破壊して、懐から沢山の紙の束をばら撒いた。
「革命軍上層部の汚職の証拠です。ここに来る前に街の方にも撒いて来たので火消しは難しいですよ」
「………………革命軍の腐敗には、私も好い加減見て見ぬフリは出来ないと思っていました。ですが、何もここまでしなくても!」
この会話は平行線だ……そう判断した瑤華は、ふぅーと溜息を吐いて──
「降りよ«月華荊棘鬼姫»」
鬼神さながらの姿に変貌した瑤華は、先程まで自分を縛り上げていた拘束をいとも容易く引き千切った。
「そんなっ!?」
「アリア様……ここでさよならです。これ以上邪魔するなら────斬り捨てる事も厭わないですよ?」
「ッ……!」
ステータス的には瑤華が少し劣っている。
しかし、容赦や恩義を鑑みない瑤華を、迷いに塗れたアリアでは止められない。
「じゃあ行こっか、ユイナ」
「うん」
瑤華はユイナの腰を抱き、その場から飛び立とうとする。
「あ、そうだ……«紅荊棘»」
「フゴッ!!?」
瑤華が指を鳴らすと、先程まで壇上で騒いでいた人間達の内側から紅い荊棘が生えて……そのまま頭蓋をぐちゃぐちゃに引き裂いて絶命させた。
一瞬の静寂、そのすぐ後にはもう瑤華達の姿は無く、ただ恐怖だけがこの場に居座っていた。
◇◇◇◇
「……本当に良かったの?」
「もしかして、私がユイナの為に無理してると思ってる?」
逃げてきた先は、随分と前に王国軍が蹂躙して廃村になっていた所だ。降り出した雨を凌ぐ為に比較的朽ちていない建物を見付け、そこで身を寄せ合っていた。
「違うよ……さっきの技、躰への負担が大きいって言ってたでしょ?」
「……正直言うと、全身痛くて仕方が無い」
「ごめん…」
「でも後悔はしてない」
ユイナに凭れ掛かるようにしていた瑤華が顔を上げると、ユイナは当然のようにその唇を奪う。
瑤華に抵抗する選択肢は無く、頬を赤らめてユイナを受け入れた。
最初は軽く啄むように、次第に口付けの時間が長くなり、角度を変えて愉しむ。そのうちに瑤華の中には、強い願望が芽生えてしまう。
「ユイナぁ……血、吸わせて?」
「今まで吸ったりしなかったのに?」
「我慢してたの。じゃないとユイナを守れないから…」
「そっか……じゃあ好きなだけ良いよ」
もう一度だけキスを落とし、そこから舌でなぞるようにしてユイナの首まで進む。
「………いただきます」
「づっ……あぁ…………」
仰け反って逃げそうになるユイナを、瑤華は決して逃がさない。
ユイナの呼吸は少し荒い。
今回に限っては瑤華に余裕が無いのもあるが、それにしたって今のユイナには激痛だ。それでも耐えるのは、瑤華が愛おしいからだ。
服越しでも理解る動悸、耳元で聴こえる息継ぎ、腰をくねらせるその摩擦……挙げればキリが無い程に愛おしさが溢れ出す。
「ん……はぁ…はぁ、ぁ……」
一応満足した瑤華は、止血のつもりか首元の赤い2つの斑点を舐め始めた。
先程までとは違う意味でユイナから余裕が無くなる。
完全に捕食者の眼となったユイナは────
「…………あの〜、そろそろ気付いて貰えませんか?」
「「ッ!!?!?」」
2人が咄嗟に向いた先には………この場所で合流する前提で別行動していたアヤネとハルが立っていた。
ハルは心底申し訳無さそうな顔をしているし、アヤネは微笑ましそうにしている。
それに気付いた瑤華が切腹を試みるまでそう時間は掛からなかったし、それを止めるのにかなりの時間を要したのは言うまでもない。
◇◇◇◇
「無理……もう生きていけない…」
「大袈裟だなぁ…。改めて、ありがとね2人共」
「そんな、私達は何も出来ませんでしたし…」
「(コクコク)」
「それでも、だよ」
この数日、瑤華の心は酷く不安定で壊れそうだったに違いない。それを支え切る事がユイナ1人では出来なかった。その思いがある以上、ユイナにとって2人は正真正銘の恩人なのだ。
「それで、これからどうするんですか?私達、王国も革命軍も敵に回しちゃったんですよね?」
「(コクッ)」
「……実は、行きたい所があるの」
そう口を開いたのは瑤華だ。
3人共、瑤華が無策だとは考えていなかったし、瑤華の提案を拒否するつもりは毛頭無いのだが……何故か声が、躰が、異様に震えていた。
「……でも、そこに行くと皆が絶対嫌な思いするし、正直自分でも何でそこに行かなきゃ行けないのか理解ってないの」
「別に大丈夫だよ?どうせ今後の方針も決まってないんだし」
「(コクッ)」
「私も構わないですよ。あ、戦うのには役に立たないのでそこは悪しからず…です」
誰も拒否しない、その事実に少しだけ瑤華の震えが軽減された。
宥めるようにユイナが抱き締めて、行き先を問う。
「……私の故郷。吸血鬼族の村の奥……私達が『禁足地』として呼んでいた所…だよ」
「「「……」」」
全員、瑤華の素性を聞いている。
人間に滅ぼされた吸血鬼族が自分達を憎んでいるであろうこと、そしてその首謀者の娘として瑤華を逆恨みしていること。否が応でも瑤華が口を噤んだ理由を理解したからこそ、何も言えない。
そしてその沈黙が、瑤華の心を締め付ける。
心拍数は不自然に上がり、脂汗が吹き出た。ユイナが咄嗟に何か言おうとするが、こんな時に限って適切な言葉が見当たらない。
大丈夫?──大丈夫な訳が無い。
ボクが守る?──魔力量以外に取り柄の無い小娘が?
……とてもじゃないが言えない。
「(……)」
「え?あ、えっと……これで合ってる?」
「(コクッ)」
空気を変えたのはアヤネだった。
一体いつの間に鍛えたのか、ハルとアイコンタクトでコミュニケーションを取り、持参したバッグから世界地図を取り出した。
そこに現在地や目的地、革命軍の拠点や近海の街などに印を付けてルートを模索し始めたのだ。
「(…?)」
「うーん、革命軍の拠点を迂回してると時間が掛かっちゃうね」
「しかもここら辺ってアンデッドが多い地帯ですよね?野宿するってなると、戦える瑤華さんとアヤネの負担が大きくなっちゃいます」
「(……?)」
「拠点を突っ切るつもり?瑤華とアヤネだけなら出来ただろうけど、全員で…ってなると厳しいんじゃない?」
アヤネはなんだかんだで強かで優しい。
敗北も苦痛も痛いほど味わって来たからこそ、どう手を差し伸べるべきか感覚的にでも理解ってるのだ。
「瑤華はどう思う?」
「え、えっと……」
いつもと違って余裕の無い瑤華では、ユイナの問いに即座に答える事が出来ない。しかしそれを責める者は居ない。夜はまだ始まったばかりで、旅はこれからも続くのだ。それなら沢山悩んで、模索して、幸せな未来を掴み取れば良い。
いつしかユイナが眠りに落ち、ハルが続き、簡易的な結界を張ってアヤネと瑤華も眠りについた。
責務から解き放たれて迎える夜は、先行きが見えない闇の中にあったが……身近な温もりを感じる事が出来るモノだった。
pixivで連載中のこちらの作品 https://www.pixiv.net/novel/series/9700135 も是非読んで下さい。感想やご意見待ってます。




