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霧形の獣⑭


戦場に響き渡るその声が耳に届くと同時、俺の全身に痺れが走った。


これは……


BS込みの攻撃をしてくることはわかっていたので、事前に全員フラットによってBS耐性上昇を掛けている。が、あくまで耐性を上げるだけで無効化できるわけではない。貰ってしまう可能性は3割前後とのことだったが、俺は外れを引いてしまったらしい。


だが効果は()()()だ。


「麻痺だ!」


痺れが走ったその体は口や目は動くものの、首から下は言う事を聞かない。麻痺のバッドステータスの効果だ。


霧形が咆哮によってこちらの動きを止める「すくみ」を与えてくるのはわかっていたが、そのすくみが「麻痺」なのか「放心」なのかが定かではなかった。「放心」で、かつそれをフラットと岩鉄がダブルで喰らってしまうケースが最悪だったのだが──麻痺なら口が動く。口が動けばスキルは使える。ならば問題ない。


問題ないんだが──


俺に効果が通ったことを認識したんだろう。霧形が俺に向けて地面を蹴った。蠢く触手と巨躯がこちらへ向けて勢いを付けて突っ込んでくるのが目に入るが、体はまだ動かない。


首も回せないので他のメンバーの状況がわからないが、なんのためらいもなくこっちに突っ込んでくる。俺がメインのダメージソースとみて先に潰しておく魂胆か!?


動け、動け……動いた!


フラットが回復してくれたのだろう。体の痺れが消えて、その瞬間足が動いた。そのまま俺は体を横に飛ばすが──ダメだ、でかい図体と触手のせいでどう見ても躱しきれない。


カウンターでスキルを発動すべきだったかと後悔するが、もうスキルも間に合わない。せめて致命傷は避けようと両腕を前に回しガード体勢に入った──その瞬間だった。


「コネクト:<<バースト>>!」


メイの声と、同時に爆音が響いた。奴と俺の眼前で巻き起こった爆発は、次の瞬間奴の頭部を包み込む。そして、


「コネクト:<<シフト>>!」


突然の爆発で動きが固まってしまった俺の視界が、一瞬で切り替わる。目の前にあったハズの爆発が十数m先の光景となり、その爆発の側にはメイがいて


「からのコネクト:<<スライドムーブ>>!」


そう認識した直後には目の前にメイの姿が現れていた。そして彼女が直前までいた場所(というかさっき俺がいた場所)には頭部の半分近くが消失した霧形が、突撃の勢いをある程度残したままに地面に崩れ落ちる。そこに更にエネルギーの矢がぶち当たって、霧形の体が跳ね飛ばされた。


こういう時に確実に叩き込んでくるシードさんさすがっす。


しかしまぁ


「耳がキーンとしてるし、心臓止まるかと思ったわ」

「あれの突撃くらうよりはマシだったでしょう?」

「ああ……助かった!」


素直に礼を言っておく。

基本的に攻撃系スキルの効果は”同パーティのメンバーには無効”設定になっているので(設定変更可能)爆発によるダメージはないんだが、音や光は届くので一瞬固まってしまった。とはいえあれがなければ突撃くらってそれなりに大きいダメージを受けていたので、至近距離でも爆雷を起爆したメイの判断には感謝しかない。


<<バースト>>は設置した爆雷の起爆スキルなので、至近になったのはその位置にしか軌道上に爆雷が設置されていなかったのだろう。彼女は<<コンシールマイン>>で透明化した爆雷を突破された時の足止め用に設置していたはずで(事前に設置すること自体は聞いていた)、そのうちの一個が丁度いい位置にあってくれて助かった。


「あたしも動き止まったんで焦ったわ。リアルちゃんは大丈夫そうだったけど」

「お前もか」


確率3割だからまぁ二人かかってもおかしくないが、


「これ連発されたらクソゲーよね」

「ヤスツナ情報だとそこまでの連発はないって話だし、今のでフラットが回復のタイミングはつかんだろうから大丈夫だろ」


言葉と共に、お互いが別の動きを取る。メイが前へ、俺が後方へ。

再び放たれたシードの矢を今度は大きく跳躍して回避した霧形の姿を視界にとらえつつ、適正な距離を取るように動く。近すぎれば触手の攻撃を喰らうが離れすぎれば命中精度が下がる。出足も弾速も早い<<サンダーバレル>>なら命中が確保できるが、攻撃スキルはクールタイムの都合上そこまで連射できないからな。


再び連射される黒い弾丸をギリギリのところで躱しながら、俺は次のスキルを行使する。


「コネクト:[エナジーキャノン]!」


丁度リアルが切り込んで足を裂いたところを狙って放つ。

足元のリアルに気を取られていた霧形は、俺が放ったエネルギーの砲弾をその顔の横っ面にまともに喰らう。先程のメイが吹き飛ばした部分が元に戻りつつあった奴の顔は、今の攻撃で再び大きく抉れることになった。


そこへ駆けこんでいったメイが[轟爆撃]を叩き込み、その体が更に削れていく。


弾丸の的にならなように移動を続けながら俺も更に追撃を入れていく。聞いていた向こうの攻撃パターンはこれで出きった。後はそれらに気を付けながら削っていくだけだ──


「だといいんだけどな」


実際のところ、まだ攻撃のパターンはあると俺は踏んでいた。こういった戦闘で、事前に聞いていた以外の攻撃が飛んでくるのはお約束のようなものだ。これまでと違うような動きを見せたときに咄嗟に対応できるようにするのは、ある程度距離を取っている俺やシードの役目だろう。


「コネクト:[神鳴る砲身]!」


しかし本当にタフだな! <<アイスバレット>>や{風神の拳]で削りや体勢崩しを入れつつ再び雷撃を叩き込んでやったのにも関わらず、まだ動きを止める気配がない。シード、メイ、リアル達も何度も大技小技の攻撃を何度も叩き込んでるにも関わらずだ。さすがはボスキャラの面目躍如ってことか?


すでに相当ダメージが蓄積しているはずだが、外見で判断ができないので残りどれくらいなのか判断しづらい。残り少ないなら本格的に逃走を警戒した動きもしなければいけないが……


「咆哮っ!」


背後からシードの声が上がる。俺は今奴の側面方向に回ってしまったためよく見えないが口を開いたってことか。回り込む動きを止めて後ろに下がろうとした瞬間、再び戦場に甲高い咆哮が響いた。で、


またかよ!


再び体に痺れが走る。3割を連続して喰らうとか引きが悪すぎんだろ! などと脳内で自分の運の悪さに毒づいている間に体の痺れが消える。さすがうちの回復担当、仕事が速いぜ! そう思って再び駆けだそうとした瞬間、


「ぶべっ!?」


足を捕られて派手に正面からぶっ倒れた。


「んだぁっ?」


ギリギリ顔をかばうのは間に合ったので倒れたまま足元に視線を送ると触手の一本が両足に絡みついていた。更には、


「うきゃんっ!」


腕に別の触手が絡みついてくる。その肌に触れた感触がなんか妙な感触だったんで思わず変な声が出た。後でからかいのネタにされそうだ──というか打撃じゃなくて絡みつき? と頭に疑問が浮かんだところで


「リセねぇが触手に!?」

「リセさんの触手プレイ!?」

「人がピンチな時にアホな事いってんじゃねぇーっででででででで!」


聞こえてきたアホ二人の声に(というかメイはともかくフラットはわざわざ聞こえるようにでかい声でいっただろう)思わず突っ込んでしまったが、俺もアホだ。そんな突っ込みより先にスキル使うべきだった。俺の叫びの途中絡みつきは締め付けに変わり腕と足に痛みが走る。


締め落とすつもりか!?


更にもう一本の触手が首元に飛びてくる。不味いと思い俺はそれを腕で払いのけようとして


「コネクト:<<ディメンションブレイド>>」


振り回した腕は見事に空を切った。伸びてきた触手は俺の首に触れる前に力を失って落ちたからだ。

足や腕に絡みついていたものも同様に力を失い、俺の手足から離れて地面に落ちる。


「リセ、大丈夫!?」

「ああ、助かった!」


あの二人、すぐフォローできる位置にリアルがいたのが見えてたからアホな事いってきやがったな。だが許さん。メイはまぁまだおかしなこといってない気がするがあの若草饅頭は後で折檻だ。


ただそれもすべて片付けてからだ!


ようやく自由になった体を動かし勢いを付けて跳び起きるた直度、メイの声が響いた。


「使役体!?」






・コンボスキルについて

[エナジーキャノン]

<<エネルギーシェル>>+<<エナジーエキスパート>>


[インビジブルマイン]

<<ブラストマイン>>+<<インクリーズエクスプローシブ>>+<<コンシールマイン>>


・スキルについて

<<エネルギーシェル>>

人の顔を更に一回り大きくしたくらいのエネルギーの砲弾を射出するスキル。


<<コンシールマイン>>

<<ブラストマイン>>と組み合わせて使うコンボ専用スキル。設置した爆雷を透明化し見えないようにする。

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