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はじめてのりあるだんじょん⑧


そこから先もエネミーやギミックには幾度か遭遇したが、殺戮人形ほど面倒なものが出現することはなかった。やはりあいつらは中ボス的な存在だったのだろう。


先程の言葉通り戦闘に関しては岩鉄が中心になって頑張ってくれたので、俺はアレ以降それほど消耗していない。これならボス戦も問題なくいけそうだ。


そう、ボス戦が近いのだ。


「次の次にまた大きな空間がある。<<サーチエネミー>>の反応がその部屋にあるから、多分これボス部屋だよね」


部屋と部屋を結ぶ通路を歩きながら、メイがそう全員に対して説明する。

情報がすでにある場合が多いゲームでの攻略時だと罠停止のためだけとなりがちな<<フルスキャン>>だが、初見攻略を目指すとなるとマジ必須だなこのスキル。先の部屋の構成がわかるせいでルート判別もある程度まで出来るから、ここまで殆どルートを間違えていない。恐らく最短に近いルートでここまで来れているはずだ。罠の停止や途中ギミックの攻略とかも考えると、これ多分メイいなかったら初見でここまでこれてないよな。


「いよいよボス戦かぁ。全部バフ掛けなおす?」

「もう一部屋あるんでしょ? そこクリアしてからでいいと思うよ」


やる気まんまんという感じで逸るリアルを、シードが止める。


「次の部屋もエネミーいるのか?」

「いるねぇ、4体。後床が動く床(コンベア)だね、これ」

「ロックで停止できないか?」

「ロックって、その効果範囲内にギミックの部分が全部入らないと発動しないんだよね。コンベアは部屋の大部分に広がってるから無理」

「コンベアの向きはわかるか?」

「多分、奥から手前に向けてかなぁ。横に長い部屋で、こっちから見ると右側手前が入り口で左側奥が出口っぽいんだけど、左側の奥に3体エネミー並んでるだよね」

「あー、成程。砲台系か」

「ん」


俺の言葉に、メイが小さく頷く。

まぁこの系統のダンジョンではちょくちょく見かけるタイプの部屋だ。動く床でプレイヤーの足止めをして、その間砲撃でこちらを削ってくる。<<フライト>>を使えば動く床は無視できるが、それはそれで接近するまで砲撃のいい的になるというギミックだ。これらのギミックに対する有効手段だが


「ここはさすがに俺かシードの出番かな、あるいはリアルに[疾風迅雷]で突っ込んでもらうか」

「私、リセ、リアルで一人一殺でいいんじゃない」

「あたしはそれでおっけーだよー」

「んじゃそれで行くか、残りの1体のエネミーはとりあえずメイと岩鉄で抑えてくれるか?」

「了解だ」

「了解~」


その並んでいる三体以外の一体がなんのエネミーだかは見てみないとわからないが、ほぼ間違いなく足止めもしくは遠距離攻撃妨害担当だろう。フリーにしておくと面倒そうなので、そこは近接担当の二人に任せる。もう一体砲台があればメイもこっちに回ってもらったんだが。


「それじゃ方針も決まったし、行きましょうか」


いろいろ話しているうちに、すでに次の部屋は視界に現れていた、成程、床が左から右に流れているように見える。


「俺がまず飛び込む。後は手筈通りに」


メイと並んで先頭を歩いていた岩鉄が振り返って告げた言葉に俺達は頷くと、隊列を維持したまま部屋の中に飛び込み体を部屋の奥──左側へと向ける。


そこには予想通り、三体の砲台型エネミーが並んでいた。まだ砲撃体勢には入っていない、これなら先手を取れる──


そう思ったとき、視界の端、左を向いた俺達の右側の方に白い人影が映る。


その瞬間、意識がそちらへ()()()()()()


それは全身が白い女の姿だった。亡霊のように立つその女にエネミーなのかと疑念を思いつつも自分の役目をこなすため、意識を砲台型エネミーに向けようとする。


向けられなかった。


女の事が酷く気になってしまい、どうしても目を離すことができない。意識が自分で制御できない、これじゃ狙いがつけられない!


「ヤバッ!」


シードの悲鳴。視界の端ではエネミー達が砲撃体勢に入っており、今にも攻撃を放とうとしているところだった。だめだ、今からじゃ攻撃は間に合わない!


「コネクト:<<アラウンドシールド>>!」

「コネクト:[聖者の結界]」


放たれたエネルギー弾はすんでの所で発動した岩鉄とフラットの二重の壁に弾かれる。


「このっ! コネクト:<<エナジーアロー>>」


俺達の視線を吸い寄せる女を、エネミーであると判断したんだろう。シードがエネルギーの矢を容赦なく撃ち放つ。が、


「嘘!?」


その矢は、女に当たることもなくその背後の壁にあたって消滅した。

物理系の攻撃を透過した……ということはゴーストか! だったら、と俺は一つのスキルを発動する。


「コネクト;<<ホーリーショット>>」


俺の眼前に白い弾丸が生み出され、それが女に向かって射出される。ゴースト系には効果覿面の”聖"

属性の魔法攻撃だ、これなら通るだろう。


「……は?」


だが、俺のその予測は即座に否定された、俺が放った聖属性の弾丸すらも、女をすり抜けたのだ。確実に命中すると思い込んでいたので、思わず間抜けな声を上げ呆けて女を見つめてしまう。


「リセ、止まると危ない!」


その俺の体が、後ろから強い力で抱き寄せられた。耳元にはシードの声。そして目の前を先ほどの攻撃より小さいエネルギー弾が通り過ぎていく。しまった。エネルギーを収束している気配がなかったから油断していたが、速度重視の攻撃もできるのか。


「すまん、助かった」

「それより、これどうすれば? 意識が引きずられて狙いがつけられない」


あの女が原因なのはわかるが、倒し方がわからない。近接が突っ込んで無差別に攻撃すれば砲台は倒せそうな気がするが、意識が女に引きずられて回避もなかなか難しいし、動く床(コンベア)のせいで近寄ろうとすれば何度も射撃にさらされる事になる。


広域魔法をぶち込もうとしても、女から意識を外そうとすると集中できなくなる。距離もあるし上手くぶち込めるか……?


メンバー皆が次にどうすればいいかを判断できず動きを止めてしまう中、ただ一人大きく動いた少女がいた。


岩鉄と共に先頭に立っていたメイが突然身を翻すと、俺達の後方へと下がった……いや、駆け抜けたのである。そして、何事かとあっけにとられる俺達の視線も意に介せず、彼女はスキルを宣言した。


「コネクト:<<スプレッドマイン>>」


彼女の言葉と共に、俺達の背後の壁でいくつもの爆発が巻き起こる。それは壁を壊すことはなかったが、壁についていた装飾を破壊する。


「どうだっ!!」


爆発の結果を見届けた彼女が、こちらを振り返る。それにつられるように視線を戻せば女が跡形もなく消えていた。は? どういうことだ?


いや、そんなことは後回しだ。女が消えたことで意識が引きずられる感覚が消えている、これなら問題なく狙える。


次の瞬間俺と、シードとリアルは視線だけを一瞬交わし、叫ぶように告げた。


「コネクト:[雷鳴る砲身]!」

「コネクト:[弩砲の一撃]!」

「コネクト:[疾風迅雷]!」



・各コンボスキルについて

[雷鳴る砲身]

<<サンダーバレル>>+<<サンダーエキスパート>>


[弩砲の一撃]

<<エナジーアロー>>+<<ヒュージウェポン>>+<<ハイスピード>>



・各スキルの効果について

<<ホーリーショット>>

聖属性の白い弾丸を射出するスキル。物理無効の亡霊系や物理軽減のゾンビ系のエネミーに対する特攻がある。

ただしそれ以外のエネミーに対しては何の効果も発揮しない。


<<スプレッドマイン>>

接触すると爆発するエネルギーの機雷を周囲にばらまくスキル。


<<サンダーエキスパート>>

組み合わせた雷属性の魔術スキルの威力を強化する。コンボ専用。

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