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遠い空の下

ようやくキーワードに入れてるスキルやモンスターが出せるように……


「もう少し行ったらそろそろエネミーの生息地域に入るから、そろそろみんな準備しといてね、いろいろと」


先頭を歩いているメイが振り返って告げた言葉に、俺たちは頷く。リアルなどは明らかに緊張する様子が見えた。


あの日、メイが情報と共にギルド「ブリッツシュトラール」に加入してから6日、俺たちは住み慣れたギルドハウスから遠く離れた空の下にいた。


あの夜、リアルと別れた後にシードとも話した俺は、全員の意思の通り、運営の人間を探しにアークバレイを目指すことを決定した。虎穴に入らずんば虎子を得ず、という奴だ。

で、その後が忙しかった。

なにせ元がゲームでもこの世界、大分現実よりになっている。ゲームのようにポーションだけ買い込んではいスタートというわけは行かないのだ。例えばギルドハウスの食材をそのままにしておけば帰った時に酷いことになっているだろうし、また出かけるにしてもいろいろ物入りだ。「なんで俺達は何の支度もしてなかったんだ?」と全員が後悔する程度にせわしない日をすごし──なんとか出発できたのは3日目だった。

そこからファストトラベルの手段がないクソ世界設定のせいで、馬車を御者付きでレンタルし飛ばして更に3日間。俺たちはようやく、目的地の近くまでやってきていた。


今俺達の前には、木の生い茂った森と、その中へ伸びていく道がある。今回の最終目的地へと続くエリア、ストレイア大森林である。この森を抜けた先に地竜の揺り籠と呼ばれる盆地型の平原が広がっていおり、その先にあるのが最終目的地であるアークバレイだ。


「しかしまぁ……見るからに()()()()()よね、これ」


<<スコープ>>というスキルを使用して遠くを眺めていた、メイの言葉に俺は頷く。


「話には聞いていたが……ほんと厄介だな、この世界の()()()


この先の目的地、地竜の揺り籠は盆地状(実はこれクレーターなのでは?という考察もある)の場所なので周囲に山が存在しているわけだが、その山の距離が裸眼で見ても明らかにゲームのそれより遠い。

当初から情報収集の中で聞いてはいたものの、最初を除けばほぼギルドハウスとその近辺の街でしか動いてなかったので(そして最初はそもそも状況がわかっていなかったので印象が薄い)実感は薄かったのだが、この世界、間延びというか全体的に広がっているのだ。


そもそもゲームの時は、うちのギルドハウスからここまでくるのに馬車でリアル3日なんて当然かからない(そんなにかかっていたら確実に移動ゲー呼ばわりされてクソゲー扱いされていただろう)わけで、世界地図がまんま十数倍に引き延ばされた感じがある。

ただ単純に引き延ばされただけなら世界はスッカスカになっていそうだが、実際の所は明らかに存在しなかった街やエリアが増えていて謎だ。少なくともこれらは確実に未実装地域でもなければ設定上もなかったはずだ。まぁ例によって考えても意味ないんだが……


「これ、多分踏破に数時間。下手すると一晩は森の中で過ごすの覚悟しないといけないよねぇ……」


シードがやはり遠くを眺めながらつぶやく。やはり俺と同じ、知ってはいたが理解できていなかったんだろう。

本来のストレイア大森林は多少時間がかかっても30分もあれば踏破できるエリアだ。その感覚できてしまったので、広さにどっと足が重くなるのを感じる。


「まぁエンカウント率もその分減ってるらしいのがまだ救いですね。で、バフ入れますか?」

「いやこれこっから使っても効果持たないだろ……エンカウントしたらすぐ使えるように準備だけしておいてくれ」

「了解しました」


そういうフラットは今日はリアルの頭の上に帽子の様に乗っている。こいつは移動の際さすがに同じペースで人の足についていくのはしんどいということで、基本的に長距離移動の時は誰かにライドオンしている。


「痛覚軽減は発動に時間かかかるから先に使っておくね」

「<<ペインリリーフサウンド>>って効果どれくらいなの?」

「結構長いから大丈夫だよ、メイちゃん。ノーマルで30分だから<<アンコール>>を組み合わせれば1時間持つ」


<<アンコール>>はバード系の歌や演奏をベースに発動するスキルの効果を延長する"コンボスキル"専用のスキルだ。


で、コンボスキルとは……単純に複数のスキルを同時発動させる機能だ。例えば高レベル帯での戦闘では当然バフなどを載せまくるわけなんだが、スキルを単発で使用すると初めの十数秒延々とコネクトを唱え続ける間抜けな状態になる。コンボスキルは要はそれをひとまとめに登録して一括発動する機能だ。この機能はウィンドウ上で設定できて、名前も自由に設定できるんだが──


「そういえばシード。<<アンコール>>込みのコンボスキル名って何か決めてあるのか?」

「まだー。誰か何かいいアイデアある?」


問いかけに、一人が元気よく手を挙げた。


「はい、リアルちゃん」

「痛いの痛いの飛んでけでいいんじゃないかなっ!」

「そ、それはちょっと恥ずかしい、かなっ」

「いいんじゃないか? 毎回毎回シードお姉さんの痛いの痛いの飛んでけから始まる楽しいバトル」

「リーセー!」

「いだだ冗談だからつねるな! つねるならスキル使ってからにしろ!」

「そしたら効かないでしょ!」


ごもっとも。いやマジで痛ぇ!

あわてて腕を振り払って離れた俺をふくれっ面で見てくるシードをなにやらさっきから考え込んでいたメイがちょんちょんとつつく。


「ん、何、メイちゃん?」

「スキルの名前だけど。ペインペインゴーアウェイとかどう? まぁ痛いの痛いの飛んでけの英語版なだけだけど」

「あ、いいかも。でもちょっと長いからええと……ゴーアウェイだけにする?」

「それだと何のスキルかわからなくならんか」

「そうだね。それじゃええと、ちょっと待ってね」


シードがなにやら虚空の上で指を動かす。メニューを操作して設定しているんだろう。メニュー人にみえないからこの時ってはたから見るとてわりと間抜けだよな。


「おけ。準備できたよ? いい」


ほどなくして顔を上げたシードの言葉に、全員が頷く。


「スキル発動後、音を出してから5秒くらいかかるから。そのつもりで。じゃあ行くよ」


彼女は息を大きく吸い込み


「コネクト:[ペインゴーアウェイ]」


スキルを宣言。そして続けて


「Ah-------♪」


シードの声が周囲に響く。バード系のスキルは発動後楽器をかき鳴らすことで効果を発揮するのが、こちらの世界に来たらその発動が声でも行えるようになったらしい。

普段から耳心地の良い透き通った声をしている彼女だが、歌う時はそれが更に際立つ気がする。


「おし、おっけ。発動してると思うよ」

「特にエフェクトとかないから発動しているかわかりづらいですね、これ」

「だなぁ……なんだメイ」


メイが俺の腕を取ると、さっきのシードと同じところをつねって来た。


「痛い?」

「……ちくりとするかな、程度だな」

「効果でてるみたいだね」


おい自分の腕で試せや。

まぁいいか。とにかくこれで準備完了だな。


「それじゃこれからこの森に突撃するわけだが、ここで出てくるエネミ―は、ええと……」

「要注意なのはマッドボア、ゴブリンチーフ、チャージビートルくらいだよ」


補足を入れてくれたメイに礼を言い、俺は言葉を続ける。


「正直ゲームとして遊んでいた時は俺等ならなんの心配もいらない相手だったが、こっちに来てからの俺達にとっては初めての本格戦闘の相手となる。全員油断しないようにな。それとフラット」

「はい」

「エンカウントしたら即バフを頼む、とりあえず<<リジェネ―ション>>と<<ディフェンスフィールド>>は入れてくれ。攻撃側のバフはなくてもいい」

「了解しました」

「それ以外は大体いつもパーティー組んでる時と同じ動きで。メイは手薄になった場所のフォローに回ってくれ」

「おっけー」

「他に何かあるやつはいるか?」


全員の顔を見回すが、返事はない。


「……ないな? よし。──さて、この世界での俺たちの冒険はここから始まるぞ。気を抜かないでいくぞ!」

「「「「「おう!」」」」」






・スキルの表記について

今後、スキルを表記する場合通常スキルは<<>>で、コンボスキルは[]で記述します。


・スキルの説明について

本文内で書くとただでさえ冗長な話がさらにひどくなってしまうので、後書きで説明していく予定です。とりあえず今回の二つは


<<スコープ>>:遠くの光景が双眼鏡を除いたように見えるようになるスキル。

<<アンコール>>」バード系のスキルの効果時間を倍増させる。コンボ専用


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