Prologue−薔薇色の人生−
夕陽に照らされて長い髪が淡く煌めく。その後ろ姿を見つめている。あの小さな背中にどれ程の重みを背負ってきたか、この先誰も知ることはない。
彼女は背後の視線に気が付いて振り返る。そしてとても柔らかな微笑みを浮かべる。酷く優しくて、困っている人を放っておけない。
そんな優しい彼女は人が持っていない力を持っていたがために、望んでもいないなりたくもないものになって、お国のために小さな手を赤く染めていくのだった。
何故こんな優しい人が…心配の表情を浮かべると、彼女はまた笑った。そして空を見上げて言った。
「ねえ、今日も空が綺麗だね」
彼女の姿が滲む。
彼女の命一つで終戦した戦争は、得るものは多かったが、それと同じくらい大事な何かを失ってしまったと思う。
国民は国のために死んだ彼女を英雄として祭り上げた。
彼女が最もなりたくなかったもの、彼女が最も嫌ったもの。犠牲の上に立つ英雄として。
オリオン暦550年2月13日。その日は月ノ国の祝日。
終戦記念日、そして英雄メル・アレフが死んだ日である。
初めての作品投稿です。
拙い文章ですが良ければ読んでいって頂けると嬉しいです。
よろしくお願い致します。