Episode:07
◇Rufeir
シルファ先輩の個室で詳細を詰めてみると、けっこう厄介な任務だった。
まず警護する相手というのが、アヴァン公国の王子。しかも、過激派が動いているらしい。
これだけだって十分厄介なのに、この王子を通っている学校まで含めて、フォローしなくてはいけないという。
せめてもの救いは、アヴァンの建国祭までで、期間が短いことだろうか?
――屋敷にこもってれば、問題が少ないのに。
おおっぴらな警護ならともかく、こういう隠密の任務じゃ目立つ武器の携行もできない。あたしの太刀だって微妙だし、シルファ先輩のサイズ(大鎌)は間違いなく無理だろう。
これがいちばん厳しかった。あたしも先輩もサブの武器を持っているし格闘技も使えるけれど、戦闘能力の低下は避けようがない。
「魔法と精霊が頼り、ですね」
「そういうことになるな」
けど魔法って、意外と小回りが利かない。威力が大きくなればなるほど、容赦なく周囲を巻き込んでしまう。
精霊にいたっては、言うまでもなかった。
「ともかくここで言っても仕方がない。手持ちでやりくりするしかないだろう」
「ですね。――あ!」
「ん?」
あたしが小さく声を上げたから、先輩は不審に思ったみたいだ。
「どうしたんだ?」
「えぇとその……同行する人数、増やせませんか? あと1人か、2人くらい……」
ちょっと説得できるか自信がないけれど、とりあえず言ってみる。
「そのくらいなら大丈夫だろうが……なにかいい考えでも?」
「ナティエス、呼びたいんです。あとできれば、ミルも」
「ミル……あの、ミルか?」
案の定、シルファ先輩の顔色が変わった。タシュア先輩も呆れた顔になる。
「ナティエスはともかく、ミルドレッドなど連れていってどうするのですか?
かき回された挙げ句、任務に失敗しそうですがね」
いつもながら厳しい。でも今回は、この2人を連れていった方がいいような気がした。
ナティエスはああ見えて、いろいろ特技がある。とくにシーモアがいれば、スラム出身同士で目立つことなく、様々なことをやってのけるはずだ。
そしてミルは……。
「ミルは、アヴァンをよく知ってます。地理的にも、情勢的にも。ですから、一緒に行ってもらった方がいいと思うんです」
現地を知っている人間がいるのといないのとでは、そうとう状況が違ってくるはずだ。