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Episode:06

「私は今回は参加しませんよ。クライアントの意向で、女性がいいそうですから」

 見た目は普段と変わらないが、そう言うタシュアの口調には、蔑みが混ざっていた。なにかそれなりの理由があるならともか く、こんな風に男女を区別するのを彼は嫌う。


「まぁ、それほど複雑な任務ではありませんから、大丈夫だと思いますがね」

 いつもの憎まれ口。

 一瞬ルーフェイアがなにか言いたそうにしたが、それを私はとどまらせた。またいらぬことを言って、タシュアに泣かされるのも可哀想だ。


「――上級隊からあと一人くらい、学園長にお願いしようとは思っているんだ。

 それにできればルーフェイアのクラスから誰か、連れて行けるといいんだが」

「そうですね。シーモアなんか、きっといいと思います」


 そう言うルーフェイアの横顔を見て、私は「おや」と思った。

 いつものにこやかな表情は変わらない。ただ雰囲気が、どこか違うのだ。


「それで任務地はどこですか? 場所によっては、あたし心当たりがあります。

 それに警護って言っても、服装なんかもそれなりに用意しないといけないんじゃないでしょうか?

 あと武器の携行も、けっこう制限されますよね?」


 矢継ぎ早の質問。これには私もあっけにとられた。

――これほど察しがいいとは。

 見ればタシュアは、面白がっているような表情だった。


「場所は……アヴァンだ。クライアントは、アヴァン公国継承権第1位の王太子。だが実際に警護するのは、第2位になるその息子だな」

 さっき聞いてきたことを伝える。


 海を越えた隣国、アヴァン帝国が瓦解後できたこの公国は、シエラ学院のお得意様だ。土地と人は多くないが、金融立国でお金だけはある。そういう条件を上手く使って、軍事関係のかなりをシエラに外注している、珍しい国だった。


「服装の指定はないな。ただ昼間は、クライアントの学校の制服で、支給されるそうだ。

 ただ武器は確かに――制限されるだろうな」

「そうですか。でも校外だと私服になりますから、用意した方がいいような気もしますし……。

 武器の方は、いろいろ対策を練らないと、きっとダメですね」


 先ほど「ケーキが生」などと、妙な質問をしていたのとは大違いだ。


「あと、情勢はどうなってますか? 追加で依頼がきている以上、そんなに平穏じゃないと、思うんですけど……」

「情勢は、未確認情報だが、過激派の動きが活発化しているらしい。アヴァンの諜報部は、建国祭を何らかの形で狙っていると、にらんでるようだ」


 本当にこの少女は、外見だけで判断できないと思い知らされる。

 そんなルーフェイアに多少戸惑いながら、私はこの子相手に、詳細を詰めていった。





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