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Episode:28

◇Sylpha

「ルーフェイア、これのどこが『大した量じゃない』のよ!」

 届けられたものを見てのエレニアの一言は、あまりにももっともだった。


 部屋が埋まっている。

 おそらくクライアント側に頼んだとしても、これほどは用意できないだろう。

 ナティエスがやけに嬉しそうだった。所狭しと下げられたドレスの間を縫うようにして、うろうろ物色していた。


「すっごぉい、お金持ちって違うわね〜♪」

――そう、言うのだろうか?

 詳しく知っているわけではないが、ルーフェイアの場合は、普通に言う上流階級とは何か違う気がする。


「ごめんね、みんな袖、通しちゃってて……。えっと、そっちのサイズ、ナティエスとミル……着られるかも。

 シーモアと先輩たちは……従姉と母のが、合うと思うんですけど」

 いちおう母親などと共用しているようだが、それにしても半端な量ではない。


「ほんとうにいいの? どれも高い生地じゃない。汚したら申し訳ないわ」

 エレニアが恐縮する。

「構いません。どうせ部屋で、場所ふさいでるだけで。もしよかったら、持って帰ってください」

「持って帰るって、あなたねぇ……」


 どうもルーフェイアは、あまりこの類は好きではないようだ。さっさと数着選び出して、終わりにしてしまっている。


「ねぇねぇシーモア、これ着てごらんよ〜♪」

「あ、いい色。似合うよ、きっと」

 見れば下級生たちは、向こうで大騒ぎしていた。

 エレニアも大人びたものを数着、選び始める。


「靴と装飾品も、使っちゃってるけど、これ……」

「ひゃ〜、これホンモノじゃない★」

 あのミルが驚いた。

 だが、それも当然だろう。ルーフェイアがさりげなく差し出した装身具は、どれもかなりの大きさの宝石類を、あしらったものばかりだ。しかも手が込んでいる。


「ほんとうに……使っていいのね?」

 エレニアが念を押す。

「はい。あと、持って帰ってください」

 どうもルーフェイアの感覚は、ずれているようだ。


「じゃぁ悪いけどレセプションなんかがけっこうあるから……3つ4つ借りるわ。これ、いいかしら?」

「あ、それ、似合いそうですね」

 けっこう楽しそうではあるが。


 しばらく私が眺めているあいだに、どうやらみんな決まったようだった。

「あとはアクセかぁ。なくさないようにしなくちゃ」

「これ……あげるけど?」

「え〜、それはまずいよ。だってこれ、半端な額じゃないもん」

「え、そうなの?」


 普通では考えられないような会話が続いている。

 価値を知らないのか、それとも慣れすぎてしまっているのだろうか?

 と、ルーフェイアがこちらへ来た。


「シルファ先輩……試着、しないんですか?」

 不思議、といった調子尋ねてくる。

「いや、その、私は……」

「……お気に、召さなかったですか?」

「そうじゃないんだが……」


 思わず口篭もった。

 実を言えば、スカートの類は苦手だ。制服でさえ着たくない。

 いったいどう、言い逃れたものか……。





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